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本棚「Political Economy of the Tokyo Olympics」—Unrestrained Capital and Development without Sustainable Principles— 荒又 美陽 編(Routledge,£130.00)



巨大資本と国家権力が多層的に関わるメガイベントは、都市空間のありよう、人々の生活や意識を大きく転換させる。荒又美陽文学部教授が編纂した本書では、気鋭の地理学者たちが、東京という都市とオリンピックにまつわる諸問題に、果敢に向き合い、刺激的な議論を展開する。国内外に豊かな蓄積のある都市地理学の知見、旺盛な批判精神を持って書かれたそれぞれの論文から、学ぶところが多い。

荒又教授は、イントロダクションで本書の道筋を示した上で、東京、パリ、ロンドンでのメガイベント開催の動向、都市再生計画の在り方について、複眼的に分析した論文を寄せている。大城直樹文学部教授による論文は、2つの東京オリンピック大会を空間的にたどりつつ、新自由主義を背景にしたイベントの商業化と、公的空間の再開発に内在する暴力的諸相を明らかにする。いずれも、実に読み応えがある。

ラウトレッジ社から英語で刊行された本書は、メガイベントと都市問題に関心のある読者を、広く国際的な学術の場で獲得するであろう。
石山 徳子・政治経済学部教授(編者は文学部教授)