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黒耀石研究センター

10月22日・23日シンポジウム ”検証:サピエンス日本列島への道 ” を開催しました。

2022年11月14日
明治大学 研究・知財戦略機構

シンポジウム ”検証:サピエンス日本列島への道 ”
 私たちは、いったい、いつ、どこから来たのか? その来歴を探る旅が考古学そのものといえるのだが、その解明の道のりは遙かに遠くて険しい。本2022年のノーベル医学・生理学賞を受賞したスバンテ・ペーボもまた、ゲノムを通じて人類の来た道を追う研究者の一人です。
このたび、明治大学黒耀石研究センターでは、”検証:サピエンス日本列島への道 ”と題したシンポジウムを主催しました。日本列島へのサピエンスの到達ルートや、到達の後に形成された遺跡などを検証する研究集会です。会場は国指定重要文化財の神子柴遺跡石器群の展示公開施設伊那市創造館を有する伊那市で、10月22日23日の2日間にわたり、コロナ禍にあっても、研究者・市民あわせて70名の参加がありました。内容は、次のとおりです。

■ 10月22日(土) 中央高地信州におけるサピエンスの足跡をたどる:最新の旧石器調査研究から
基調報告 1 「飯田市竹佐中原遺跡の性格と編年的位置付け」 大竹憲昭 (長野県埋蔵文化財センター)
基調報告 2 「佐久市香坂山遺跡の発掘調査の成果と課題」 国武貞克 (奈良文化財研究所)
基調報告 3 「サピエンス到来初源期の石斧を考える:野尻湖遺跡群の刃部磨製石斧」 岩瀬 彬(東京都立大学)
基調報告 4 「環状ブロック群の構造と性格:信濃町日向林B遺跡および墨古沢遺跡の検討から」 村井大海(長野県埋蔵文化財センター)
基調報告 5 「神子柴石器群の出自にかかる諸問題:ロシア極東地域アムール川下流域の調査成果との比較から」 橋詰 潤(新潟県立歴史博物館)
基調報告 6 「神子柴遺跡における破砕黒曜石の来歴」 堤  隆(明治大学黒耀石研究センター)・中沢祐一(北海道大学)
基調報告 7 「有樋尖頭器製作における技量差:茅野市夕立遺跡出土石器をモデルとして」 両角太一 (長野県埋蔵文化財センター)
■ 10月23日(日) シンポジウム「検証:サピエンス日本列島への道」
講演1 検証:北海道ルート 「北方系細石刃石器群の流入と神子柴系石器群生成の問題」堤 隆 (明治大学黒耀石研究センター)
講演2 検証:対馬ルート「香坂山遺跡と最古の石刃石器群の来歴」 国武貞克 (奈良文化研究所)
特別講演 検証:沖縄ルート「3万年前の航海実験と古人骨の人類学的研究から」 海部陽(東京大学総合研究博物館)
パネル ディスカッション 「サピエンス日本列島へ!」
パネリスト   海部陽介・大竹憲昭・国武貞克・岩瀬彬・橋詰潤 ファシリテータ 堤  隆

 シンポジウムを通じて、サピエンスが日本列島へ来た道を探るためのアプローチが俎上にあがり、会場からも多くの意見が寄せられました。会場には、現日本旧石器学会長の佐藤宏之氏や、初代会長の稲田孝司氏・元会長の白石浩之氏も見え、この問題の関心の深さを感じることができました。
 また、会場に併設された展示室では、重要文化財の神子柴遺跡出土石器の常設展示を始め、大竹氏の発表にも関連する竹佐中原や石子原遺跡の石器群の期間限定の特別展示もあり、こうした実資料の目の前でも熱い議論が展開されました。
明治大学黒耀石研究センター 堤  隆