Go Forward

学生はもっと勉強しよう

経営学部長 安部 悦生


現在、文部科学省では、学生がもっと勉強するように、正規授業以外に予習、復習の充実に力を入れるように奨励している。国際的にみて、日本の大学生が勉強していないという危機感からである。中央教育審議会では、2012年8月に答申を出し、「我が国の大学生の学修時間が諸外国の学生と比べて著しく短い」と結論付けている。本来、1単位は、45時間の学修から成り立ち、授業で15時間、予習、復習でそれぞれ15時間を想定している。

たしかに、効率的に授業を受けるために予習、復習は重要である。しかし、理科系の授業あるいは語学の授業などを除けば、現実には、授業のための予習、復習にかなりの時間を割くことは困難であろう。自らの学生時代を振り返っても、文系の講義科目で予習していった記憶はほとんどない。また、私が講義している「経営文化論」や「経営史」でも、予習はほとんど期待していない。予習なしで、「ためになる」授業を心がけている。

翻って、予習、復習はともかく、正規の授業は十分行われているのだろうか。日本では、本来は、1単位に15時間、すなわち60分授業を15回行うと1単位になる。2単位習得するためには、120分授業を15回行わなければならない。しかし、実際は1350分(90分×15回)で2単位がもらえる。90分授業を週2回、通年で行うと、4単位がもらえる(実習系は除く)。これは明らかな水増しである。アメリカでは、その時間数だと、3単位である。本来、日本でも120分授業を週2回行って4単位のはずが、90分2回で4単位と、ダイリューションが行われているのである。したがってアメリカ風に計算すると、文科省の卒業要件単位の最低限である124単位は、180単位くらいにしなければ、アメリカの大学生よりはるかに少ない授業時間数しか勉強していないことになる。実際、日本と同じ時間数で単位を計算しているアメリカのUCサンディエゴでは、卒業に必要な単位は180単位である。また教育立国で知られるお隣の韓国でも、時間単位で計算すれば、160単位くらいが卒業に必要となる。

現実には、日本流のやり方で計算すると、124単位、160単位、180単位という差が、授業時間の日韓米の現状なのである。

加えて、私のゼミの留学生から聞いたことだが、韓国では夏休みは学生にとって旅行に行ったり、遊んだりする季節ではなく、英会話やパソコン技術などのレベルアップに費やすのが普通だそうだ。ゼミの留学生は、母親が英語学校に授業料を払い込んでしまったので、韓国に戻って8月1日から28日まで、毎日そこに通うことになっている。

予習、復習、夏休みの活用の仕方はともかく、正規の授業だけでももっとしっかり勉強しなければ、グローバル人材の養成どころではないであろう。経営学部では、かつての138単位に及ばないまでも、さまざまな特色ある授業などを考慮して、せめて134単位に卒業要件単位を増やすことにより、学生の勉強時間数を増やしたいと考えている。

(経営学部教授)