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畑でトマトのソバージュ栽培(露地放任栽培)講習会

「主枝1本仕立て」(左)と「ソバージュ栽培」の比較説明をする元木准教授と北條さん お気に入りの品種を手に「栽培の研究に夢中です」と北條さん(飯塚明範・写真技術研究部)

農学部の元木悟准教授(野菜園芸学研究室)は8月9日、生田キャンパス南圃場でトマトのソバージュ栽培(露地放任栽培)講習会を初めて実施した。営利生産に取り組むプロの農家や、イタリアンレストランのシェフ、家庭菜園愛好家など約80人が、トマトを野性的(ソバージュ)に育てる露地放任栽培の可能性について熱心に耳を傾けた。

これは、東日本大震災からの復興のため、既に確立された技術シーズを組み合わせ、最適化するための大規模な実証研究の一環。その成果は復旧・復興に活用し、成長力のある新たな農業を育成するために、岩手県農業研究センターを代表機関として、本学ほか9機関が共同で、農林水産省「食料生産地域再生のための先端技術展開事業(岩手県内)」として、本年から5年間取り組む。

本学では、軽作業で収益性が高いものの労働時間が多いミニトマトについて、従来困難とされていた露地における省力的な栽培法を開発し、成長解析や品種特性を解明することによって最大収量となる栽培技術の確立を研究する。また、低コストで生産性の高いトマト栽培法を確立し、品質や機能性成分、加工適性を評価して、生食・加熱調理・加工いずれの用途についても付加価値向上を図ることも目的としている。
研究初年度となる本年は、温暖地としての生田キャンパス(神奈川県川崎市)の圃場ほか、寒冷地である岩手県北上市などでも試験を行い、様々なトマト(シシリアンルージュ、ロッソナポリタン、サンマルツァーノリゼルバほか国内品種多数)を「ソバージュ栽培」と、慣行の「主枝1本仕立て」で栽培し、収量と品質(糖度、酸度、リコピンやアミノ酸含量など)の比較を行っている。

この日は“フィールドデー”として、特別に研究圃場を一般公開。元木准教授とともに、同研究室で栽培管理を担当する北條怜子さん(農3)が、関東地域でもミニトマトや中玉トマトの「ソバージュ栽培」で高品質トマトの栽培が可能であり、“主枝1本仕立て”よりも数倍の収量が見込まれることなどを説明した。参加者からは、収穫期間や定植の仕方など、活発な質問と、栽培マニュアル公開などの期待が寄せられた。

元木准教授は「農業従事者の高齢化や離農対策としても、省力であるソバージュ栽培法を普及させたい」と語り、震災復興支援と高付加価値創出の側面から研究を進めていく意気込みを示した。