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真の国際化とは「スーパーグローバル大学創成支援」採択を受けて



2014年9月、文部科学省「スーパーグローバル大学創成支援」事業(タイプB、グローバル化牽引型)に、明治大学からの申請「世界へ!MEIJI8000—学生の主体的学びを育み、未来開拓力に優れた人材を育成—」が採択された。

これにより、世界へのさらなる一歩を踏み出した本学が目指す、真の「国際化」とは—。

その中核を担う5人の副学長・学部長が、今後の展望などを語った。

(写真左から)
【司会】広報担当副学長(国際日本学部教授)
 長尾 進
国際交流担当副学長(政治経済学部教授)
  悦子
総合政策担当副学長(理工学部教授)
 伊藤 
教務担当副学長兼教務部長(農学部教授)
 竹本 田持
政治経済学部長(政治経済学部教授)
 大六野 耕作



SGU採択の経緯と今後への期待



長尾 明治大学はこのたび、文部科学省の「スーパーグローバル大学創成支援」事業(以下、SGU)のタイプB(グローバル化牽引型)に採択されました。ちなみにタイプA(トップ型)は、世界大学ランキングのトップ100を目指す大学を支援するもので、本学が採択されたタイプBは、これまでの実績をもとに先導的試行に挑戦し、我が国のグローバル化を牽引する大学を支援するものです。同事業に申請するという意思決定、そのための組織づくり、それから採択に至るまでの経緯を、まずは伊藤先生からご説明いただければと思います。

伊藤 情報化、国際化が急速に進む中で、それにきちんと対応できる未来開拓力のある学生さんを育てていかねばと考えていたところ、2013年に、この事業に関する内示があり、大学としてしっかり対応していかなければならないということになりました。これまで「グローバル30」(文部科学省「国際化拠点整備事業(大学の国際化のためのネットワーク形成推進事業)」のこと。以下、G30)などで積み上げてきた国際化の取り組みの実績を生かしながら、大学全体で一致団結して取り組んでいこうと。それで全学的な協力のもと申請にこぎつけ、採択に至ったわけです。

長尾 G30採択や国際日本学部の開設など、本学の一連の国際化の実績は、書類選考の段階から割と評価されていたのではと思いますが、特にG30を運営してきた国際連携機構の代表として、勝先生にこれまでの振り返りと、今後の展望をいただければと思います。

 グローバル30の成果としては3点ほど挙げられると思います。まず、G30の核にもなっている英語学位コースが6コース増大し、同時に外国人教員比率がこの5年間で7%ほど高まりました。第2に、留学生受け入れは短期も合わせ昨年度は1600人と、私大としてはかなり大きな数字となっています。第3に、学内資料や看板など英語化のインフラ整備も進みました。教育・研究の高度化のために国際化を進めることで、コンセンサスが学内で得られたことが大きいと思います。このような状況下で、グローバル人材の育成に向けて、SGUは非常にインパクトのある事業になると期待しています。

英語を話せるのがグローバル化ではない





長尾 特にこれからはグローバル人材や未来開拓力のある人材の育成が重要となりますが、ACE(英語実践力養成プログラム)の導入など、そうしたことに早くから取り組んできたのが政治経済学部でした。学部長としてリーダーシップを発揮してきた大六野先生に、どういう方向性が今後求められるのかというところをお伺いします。

大六野 政経学部では2008年に国際交流委員会を立ち上げ、今お話にも出たACEや、短期留学・交換留学、さらにはダブルディグリー、デュアルディグリーといった個別の取り組みをくっつけて、1つのプログラムにしていくことを進めてきました。そのプロセスの中で、つくづく感じたことは2つ。1つは、日本の教育のもとでは周囲が非常にホモジニアス(同質的)な社会であるために、学生がみんな周りを見てしまう。周りを見て、国内での大体の自分の位置づけを考えて、それでうまくいけばよしという形で日本の大学におさまってしまう。これが一度外に出てしまうと、いかに他の国の人たちが違う発想と違う価値観の中で勉強し、動いているかというのが見えてくるわけです。

もう1つは、学生の能力の問題です。なにも英語が話せればグローバル化ということでは全然ない。これは初めに断言しておきたいと思います。どこの国に行っても、その国の人の考え方や行動をその背景に至るまで認識した上で、相手の言うことを理解し、そしてまったく異なる文化的・歴史的背景を持っている日本人の考え方や行動を、相手に説明することができる。まずはそこが原点だと思います。その上で、論理的に相手と交渉できるような力が、本当の意味での未来開拓力ということかもしれません。

長尾 我々がSGUの調書の中で掲げた目標の1つは、これからは「英語を学ぶ」のではなく「英語で専門科目を学んでいく」ということ。また、10年後に学生の2人に1人が単位修得を伴う海外留学に出るとともに、全員が国内外で異文化体験をするということも掲げました。さらにもう1つ、「主体的学び」ということを特色として強く打ち出しました。これらを実現するための今後のプログラムの拡充について、勝先生にお伺いします。

 現在、国際連携部のみならず各部局のプログラムが充実してきています。「単位化」というのが1つの条件になってきますので、各学部、あるいは各研究科のプログラムにどう位置づけていくかが今後課題になってくると思います。もう1つ、人材育成という点ではインターンシップなどの課外授業をプログラムに盛り込んで行くこと、そしてそれらプログラムを各部局が単位認定していくことも重要になるでしょう。

大六野 部局間の交換留学も相当増えてきています。例えば政経学部では、お恥ずかしい話ながら、2008年度には学部間の協定校が1校しかありませんでしたが、現在は30大学を数えます。さらに、今まで個々の学部でやっていたものを互いにオープンにして、どの学生も他学部のプログラムに加わることができるような仕組みが実現すると、より大きなインパクトが出てくるだろうと思います。

「総合的教育改革」との相乗効果を

長尾 さまざまなプログラムを可能にするためには、学事暦などの環境整備が必要となってきます。その一番基盤になる部分が「総合的教育改革」であり、特に教務部の先生方や職員の方にご苦労をいただいて、新しい時間割の全学的な承認もいただきました。これは非常に発展可能性のある基盤整備だったと思うのですが、そうした総合的教育改革とSGUとの関係はどうであるのか、本学としてどう整備していく必要があるかというところを、竹本先生にお話しいただければと思います。

竹本 そもそも新しい時間割や枠組みづくりは、SGUの話がある前から取り組んでいます。例えば、試験期間でない時期に試験を実施する科目も多数あるといった問題がある中で、どのように教育や授業の時間を確保するかということをずっと考えてきたわけです。その中で出てきたのが、授業の1コマの時間を拡大することでした。ただ、単に拡大すればいいわけではなく、わずか10分ですけれども、長くなった時間をどう使うのか、そこに主体的な学びの機会をどう提供していくのか、そこが大切なわけです。

学長のリーダーシップのもと、時間割や枠組みづくりを中長期的に発展させるのが総合的教育改革であり、SGUの取り組みが、その改革を推進するエンジンの役割を果たしてくれるといいのではないでしょうか。つまり、新たな時間割を定着させていくためにはその推進力が必要で、逆に、SGUを実現するためにはその基盤が必要となる。総合的教育改革とSGUは、相互補完的な関係にあるのだと思います。

大学としての強みを生かす



長尾 プログラム面もさることながら、ハード面という意味では、「明治大学アセアンセンター」(タイ・シーナカリンウィロート大学内にある本学の海外拠点)を持っていることが我々の強みになります。

 先日、テレビ会議システムで駿河台キャンパスとアセアンセンターをつなぎ、政経学部の学生とシーナカリンウィロート大学経済公共政策学部の学生と一緒に、英語クイズ大会を行いました。今後、シーナカリンウィロート大学で本学の日本学の授業を提供するなど、アセアンセンターをベースにした双方向の遠隔授業が増えると思います。アセアンセンターでは、アセアン諸国の大学との合同ワークショップなども既に開催しており、センターを拠点としてアセアンとの相互理解が進んでいくことが、明治大学の大きな特徴の1つになっていくだろうと思います。

長尾 もう1つ、我々が持っている強みということでは、本学の系列法人である国際大学(新潟県南魚沼市にある大学院大学)の存在があります。国際大学も、めでたくSGUに採択されたので、お互いにその良さを引き出しながら、相乗効果を図っていければいいのではないでしょうか。伊藤先生、いかがでしょう。

伊藤 国際大学はアジアや世界中に修了生が多数いますので、この人たちとのネットワークをお互いに活用し合って、いい形で手を取り合っていければと考えています。これからは英語で行う授業も増えていくことになるので、そういう点でも協力を図れればいいなと思います。

竹本 今回のSGUの調書では触れていませんが、明治大学にはスポーツ特別入試で入ってくる子も多数いて、トップ層の選手が外国に行ったり、逆に外国から来た選手と一緒に競技をしたりしています。ある意味でスポーツは、国境や言語を越える力があって、これは明治の強みになると思います。

大六野 スポーツを通じて、グローバルな学生を育成していくことも大事ですね。例えばラグビー部の学生なんか英語が上手ですよ。ラインアウトだとかスローフォワードとか、英語ばかりしゃべっていますから(笑)。

長尾 2020年には東京オリンピック・パラリンピックもありますし、スポーツとの関連の中での情報発信も強めていかないといけないですね。

教学・法人の協力体制で「前へ」



伊藤 重要なのは、学生が受け身ではなく、自分から学ぶという姿勢を身に着けていくことです。そのために多くの学生を海外に送り出し、また多くの留学生を海外から受け入れる、そういうグローバルなキャンパスをつくり上げていこうというのは大きな意義があります。これから世界に羽ばたく学生には、幅広い教養が求められています。また専門分野の基礎も身に着けなければならない。こうした大きな学びのサイクルを構築していくには、教学と法人の協力体制が不可欠です。全学を挙げて取り組まねばならない、大きな事業に挑戦する時期に来たなと感じます。

長尾 伊藤先生がおっしゃったように、大学全体にかかわることで、教学・法人ということでくくれないものがいろいろと出てきています。例えば外国籍教員の任用であるとか、職員の語学力向上であるとか。SGUは決して、教学だけの取り組みではないということは強調しておいていいと思います。

伊藤 これまで「個を強くする大学」と言ってきましたが、今は「世界に発信する大学」という大きな目標のもと、将来は世界の大学と肩を並べられるようになりたいとの思いを強く持っています。

大六野 あとは、本学を構成する教職員の人たちに、「何を、いつまでに、どういうことをやるのか」というのを丁寧に説明しながら誤解を取り除き、皆さんが参加できるような状況をつくっていくことが、最後に重要となってきます。

伊藤 教員・職員一人ひとりの考え方に最後はかかわるので、将来の明治大学をどうしていきたいかを皆さんに問いかけ、それを集約して「前へ」という力にしていきたいと思います。

長尾 まさにその通りですね。本日はどうも、ありがとうございました。