本棚「城山三郎『官僚たちの夏』の政治学—官僚制と政治のしくみ」 西川 伸一 著(ロゴス、2,000円+税)



政治の世界は、人間が動かしている。自然科学のように美しいモデル通りには動かない。

城山三郎『官僚たちの夏』は、官僚の生態をリアルに描き、読み手の多くにとって縁遠い彼らの汗の臭いや息づかいを感じさせる。官僚制研究にとって必読の書であると同時に、小説としての完成度も高く、これまでに2度テレビドラマ化されている。

それほどの名著であるが、惜しむらくは舞台が高度経済成長期の日本であること。ならばもはやこの小説は、昭和時代の官僚制研究にしか役立たないものなのか。

本書は、この希代の雄編に絶妙な補助線を引く。

TPP・消費者行政などの今日的な課題や、福田康夫・安倍晋三など21世紀の首相を登場させ、『官僚たちの夏』が描けていない今を補う。同時に「労働なきコーポラティズム」「M+1ルール」など政治学の理論を巧みに盛り込むことで、学問との接面を広げている。

時とともに生じた『官僚たちの夏』の余白を補い、見事に現代においてその価値を蘇らせた本書。ぜひご一読あるべし。

木寺 元・政治経済学部准教授(著者は政治経済学部教授)

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