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大学はいかにこれからの社会に応えられるか?

副学長(総合政策担当) 小林 正美

大学が創立された近代黎明期には、社会を先導するエリート集団を育成することが主たる目的であったが、約半数以上の高校生が進学し、大衆化が進んだ現代の大学に社会が求めていることは以前と大きく異なる。私たち大学がいま社会へ還元できるものは何か? それは変化し続ける現代社会に対し、長い間に蓄積した膨大な知的財産を提供し、それを具体的に社会で活かすことのできる人材を供給することである。

そのためにすでに取り組んでいる仕組みとして、ボランティア制度、様々な社会連携プログラム、リバティアカデミーなどの生涯教育などが挙げられるが、これからは、特に人材不足で困っている地方自治体や関係諸団体に対する知的人的支援なども、大学が果たすべき重要な仕事となるであろう。

しかし、私学の雄として本学が果たす役割はそれだけではない。日本という国が国際社会の中で今後どのような方向にかじを切るのかを見極め、そのための先導的な役割を果たす覚悟が必要である。もともと天然資源に乏しい我が国が今まで育んできた「洗練された文化」、「礼節を重んじる安全な社会」、「正確で品質の高い産業プロダクト」などは海外から羨望の目で見られており、「多くの災害を克服してきた復元力」、「少子高齢化時代の福祉社会のあり方」なども含めて、我が国が持つ競争力のある価値となっている。

実際、国際競争力のある建築系実務者を育成するという目的で、2013年に中野キャンパスに設立した理工学研究科建築学専攻「国際プロフェッショナルコース」では、英語で日本の建築デザインや建設技術、芸術文化などを学んで修士号が取れるということが大きな魅力となり、思いのほか多くの正規留学生を受け入れることとなった。これは一つの驚きであったが、先達が長い間かけて蓄積した日本の価値が、海外に対して強いアピールになるという事が分かり、大きな自信にもなり励みとなったのである。

一方において、国際社会における我が国のリーダーシップやプレゼンスはまだまだ弱いと言わざるを得ない。本学としては、建学精神である「権利自由」、「独立自治」の精神を持ち、「個」をみがき、国際社会の中でチームワークを組んで「前へ」出ることのできる先駆的リーダーたちを育成することが重要であり、そのための体制を構築することが大きな課題である。特にアジアで活躍できる人材については、多くの企業が喫緊に求めている。

さらに国内外で本学が強いリーダーシップを維持するためには、過去の蓄積に頼っているだけではなく、競争力のあるコンテンツを常に開発することが求められる。そのためには、様々なイノベーションを誘発するような先端的研究を推進することが急務であり、意欲のある若い教職員に対して重点的な支援をすることも考えなくてはならない。そのための財源を確保することも重要な課題である。

今後は、キャンパスマスタープランの再構築、無駄な施設維持費の削減、休日に利用しない大学施設の有効利用などから検証を始め、社会からの要請に応えられるような学内体制を構築し、良質の教育研究環境を持続的に保つための方法を皆で探っていかなければならない。これについて、大学役員および教職員全員が当事者意識を持って、この目的のために「自分にできることは何か?」を自覚することが重要である。

(理工学部教授)