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祝辞「未来の担い手となる皆さんへ」

理事長 柳谷 孝

卒業ならびに修了を迎えられる皆さん、このたびは誠におめでとうございます。明治大学で研鑽に励まれてそれぞれの課程を修め、学位を取得されたことに対し、心からお祝いを申し上げます。また、卒業生を支えてこられたご家族の皆様をはじめ、ご列席の方々に心よりお慶びを申し上げますとともに、本学へ賜りました多大なるご理解とご支援に対し、厚く御礼を申し上げます。

さて、私たちは今、後の歴史に問われるであろう大きな転換期に差し掛かっています。

現下の世界情勢に目を向けますと、グローバル化の潮流が変化の様相を見せ、北朝鮮情勢や台頭する中国の動向も含めて世界の先行きに不透明感が増しています。

一方、日本では、男女ともに平均寿命が最高記録を更新し続ける傍らで、出生数が2年連続で100万人を下回り、総人口も減少し続けています。少子高齢化及び人口減少がもたらすものは、経済の停滞や社会保障の制度維持の困難に留まらず地域の過疎化という、まさに「静かなる有事」に直面しているといえます。

他方、私たちの日常に目を向けますと、近年目覚ましい発達を遂げているAI(人工知能)にも注目が集まっています。AIが人間の能力を超え、人間の能力を超えたAI自身が更に加速度的に高度なAIをつくり、社会がそれまでとは全く異なる不連続で想像できない変化を遂げる日、すなわち「シンギュラリティ」が到来するという一つの未来展望も示されています。

このように変化が激しく、先行き不透明な社会情勢は「未来予測が困難な時代」と表現されます。そのような時代に向かっていく皆さんは、まさしく「未来の担い手そのもの」であり、「未来を創造していく気概」を持ち続けてほしいと期待を致しております。予測困難な未来であるからこそ、主体性をもって「考える材料」を発見し、「自分で考え抜く力」を磨き続けることが、何より大切なのであります。「個」を強くする、という本学が掲げる理念の神髄も、まさにそこにあるといえましょう。

これからは、皆さんそれぞれが新たなフィールドで活躍されることと思いますが、その過程において、大きな困難に何度も打ちのめされる場面があるかもしれません。そうした時には、ノーベル平和賞を受賞し、南アフリカ共和国の第8代大統領となったネルソン・マンデラ氏の言葉を、是非思い出してほしいのです。

“The greatest glory in living lies not in never falling, but in rising every time we fall.”
(生きる上で最も偉大な栄光は、決して転ばないことにあるのではない。転ぶたびに起き上がり続けることにある)

マンデラ氏は、人種隔離政策への反対運動により命を狙われ、国家反逆罪として27年間も収監されました。しかし、彼は数々の苦難に決して屈することなく立ち上がり続け、アパルトヘイト撤廃の偉業を成し遂げ、大統領就任後には全国民の融和政策を先導するとともに、南アフリカの復興も推し進めました。どのような困難であっても、諦めず挑戦を続ける限り、その道は成功に繋がってゆくということを、彼は身をもって示したのであります。

卒業される皆さんは、本学で多くの学びや出会いを通して多様な価値観に触れ、併せて自らの在り様も深く考えたことでしょう。「権利自由・独立自治」 の建学の精神に加え、長い歴史と伝統の薫陶をも受けながら 「個」 を磨いた日々は、これからの成長の原動力となって、皆さんを輝かしい未来へと誘ってくれるものと確信しています。

明治大学を卒業して世界の荒波を前に船出をされる皆さんの前途は、大きく開かれています。不屈の明治魂を胸に、失敗を恐れず挑戦し続け、強い信念と勇気をもって、進むべき未来へと時代を切り拓いていってください。そして、地球市民の一員として、国や人種の違いを超えて協調できる世界を希求するとともに、人類と地球環境の調和した未来を創造することに、皆さん一人一人が貢献してほしいと願っています。

本日の新しい門出に際し、皆さんの前途に幸多きことを心から祈念いたし、祝辞といたします。
【卒業式次第より転載】