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本棚 世界俳句2019 第15号 夏石番矢・世界俳句協会 編(コールサック社、1,500円+税)



本誌は、今年創立20周年を迎える世界俳句協会の多言語アンソロジーの第15号である。51ヶ国、39言語、174人、503句、4人の俳論、4人の特集が収録され、世界中の人々が寄せた俳句や俳論が日本語と作者の母語などの両方で読むことができる。「叔母死んだ/母は瀕死/つまらない思い出」(米国の俳人の作)。「人を殺す/君も人なら/銃を殺せ」(ネパールの俳人の作)。日常生活から戦場に至るまでの「世界」を表現するこれら多彩な俳句は、遠く離れた場所に住む人々によるものであるにもかかわらず、日本にいる私たちも共感してしまう。なぜだろうか。編者である夏石番矢は、チュニジア・モロッコ滞在中、「時間を越えた」光景に出会った結果、日本で生まれた季語という枠組みにとらわれない俳句を生み出した経験について、本誌で報告している。だが実は私たちも、日本にいながらにしてそのような過程を日々少しずつ経験している。だからHaikuに共感するのだ。世界の人々との深い交流を目指している全ての人に本誌を推薦したい。

田中 ひかる・法学部教授(編著者も法学部教授)