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美術家・奈良美智氏講演会「旅と制作の日々」

語りかけるように講演する奈良氏

明治大学文学部は12月3日、駿河台キャンパス・リバティホールで美術家の奈良美智氏による講演会を開催した。これは、文学部が毎年開催している講演会の一環で、今回は募集開始の翌日で申し込みが締め切りになるなど、日本を代表する美術家である同氏への注目度の高さが開催前からうかがえた。

講演会は「旅と制作の日々」と題し、普段は美術の話をしない、美術をやっている自分は自分の中の20~30%だと語る奈良氏が、これまで旅した各地を写真で紹介し、「美術家・奈良美智」を形作ったバックグラウンドを紐解く形で進行した。紹介した写真の中には、絵を始めた20代の頃の作品や、ドイツ留学中、サハリンやシリア難民キャンプ訪問時の写真などもあり、同氏のこれまで辿ってきた一つひとつの系譜が丁寧に解説された。続く後半では、作品の制作工程をスクリーンに投影し、下描き・スケッチ無しで描くことや、ほぼ完成状態まで描いた作品を(見た人と)対話できる作品に変更するため上描きして別の作品にすることなど、同氏ならではの豊かな感性から生み出される作品の制作裏を披露した。「絵を描くとき、その作品が命を持つ一瞬があって、その瞬間に立ち会うのが最高に幸せ」と語った奈良氏の講演は、おだやかで語りかけるような語り口で、同氏の作品のような居心地の良い空気に満ちていた。