Go Forward

明治大学漆先端科学研究クラスターとは

 ウルシの木から得られる樹液は塗料・接着剤として、また塑型材に使われ、漆塗りの日用品や美術工芸品が作られてきました。漆の接着力を利用して漆の塗りものに金粉を蒔き金箔を貼った蒔絵は日本独自の漆芸技法で作られた豪華で美しい芸術品です。この漆液の乾燥硬化はラッカーゼ酵素の関わる酸化反応で進行することから高分子化学のバイオポリマー研究の最先端な研究課題です。日本で使われている漆の99%は中国から輸入されていますが、漆には長い歴史があり、アジアの漆文化です。ウルシの木がないヨーロッパやアメリカには漆塗り文化はありませんが、歴史的な漆工芸品が博物館や美術館に多数所蔵され展示されています。それはかつて桃山期から江戸時代にかけて蒔絵の漆工芸品が多数ヨーロッパに輸出され、王侯貴族を魅了していました。それらの漆器の保存修復と漆文化を明らかにするために漆の科学分析を用いた研究に関心が集まっています。

 本「漆先端科学研究クラスター」はウルシ資源の保護と育成の研究課題、歴史的な漆工芸品を科学分析で保存・修復に重要な情報を提供するとともに伝統的な漆芸技術を解明する研究課題、更には漆の次世代の利用に材料化学の新しい考え方や新規技術を導入する研究開発の課題に学際的に取り組むことで、本研究クラスターが国内外の「漆の研究拠点」になることを目指しています。