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研究所設立趣旨

 明治大学の前身である明治法律学校設立の趣旨は、西園寺公望、岸本辰雄、宮城浩蔵、矢代操、斉藤孝治の連名で書かれている。そのなかで、法学の領域の広大を言って、社会の構成、政府の組織から個人の権利・自由にまでにいたると言う。さらに明治維新以後、人民の法学の知識を啓蒙するために、海外から教師を招き、学生を海外に送って、人間の文明の発露としての法学の導入につとめたと言う。しかし、いまだ時代は成熟せず、法学をしていたずらに「健訟ノ具」となし、その真理探求の道を塞いでいる。明治法律学校は、この事態を打開して、「公衆共同シ大ニ法理ヲ講究」するために設立された。世界の法の多様性に開かれ、社会の構成から個人の権利自由にまでいたる議論をする場所が、明治法律学校であった。
 この学校設立の趣旨は、現在の明治大学法学部のなかにも当然に存続している。現在の法の実務に資するだけではなく、世界の周縁文化にいたるまでの多様な文化研究と教育を行い、歴史学、哲学、社会学を背景にして、国内法から国際法にいたるまでの多様な法学研究を、それぞれに専任教員を置いて進めている。
 明治大学比較法研究所は、この明治法律学校から現在の法学部にいたる、法学研究の理念をさらに前進させ、世界の多様性にひらかれた法学研究を組織するために設立された。その多様性とは、世界における法システム、法の歴史、文化の多様性であり、法学部の教員だけではなく、法学部の領域・専攻をこえた研究者のすべての関心領域を包括する多様性である。