過去の展覧会 2019年

新しいお殿様—所替・その後—

特別展
新しいお殿様—所替・その後—
(1)実施形態
主 催 明治大学博物館
企 画
明治大学史資料センター 明治大学博物館
後 援 明治大学校友会
会 期
10月14日(金)〜12月14日(水):51日間 (日曜・祝日は閉室)
会 場 アカデミーコモンB1博物館特別展示室 入場無料
入場者数 6,641名
担 当 者 日比佳代子(刑事部門担当学芸員)

(2)概要
 博物館では所蔵する「内藤家文書」の調査研究を進め、これまでに転封大名の新領における「藩」の構築過程などを解明してきた。2022年度特別展では、この成果を展示というビジュアルな媒体でわかりやすく解説する。
 1747年に岩城平(現福島県)から延岡(現宮崎県)へ転封(国替え)した内藤藩。東北大名だった内藤家にとって、新領は江戸から遠く、大坂・長崎という幕府の重要拠点とのかかわりも生じる未知の世界であった。特別展では、内藤藩が新領地でいかにして統治を実現し、領地・領民との一体性を有する「藩」を形成していくのかに迫る。
 これまでの内藤家文書の調査成果を反映した図録の刊行、デジタル展示コンテンツ作成による展示の記録化により、内藤家文書活用の基礎整備を進めると共に、展示内容に関わる複製品の製作、内藤家文書の絵図や外部機関が有する絵画資料のタペストリー化など、今後の利用が可能な形で、内藤家文書の理解を深める関連資料作りを行う。

(3)展示構成
ア I 所替とは
江戸時代に行われた大名の領地移動の全体像を説明し、城主が9回交代した亀山藩で2回城主となった板倉家の引継ぎ資料を展示。地域によっては所替で領主が変わることは珍しくなかったことを紹介した。
展示品:「覚書」(明治大学博物館所蔵 伊勢国亀山藩板倉家文書)など
イ II 内藤家
展示の舞台となる譜代大名内藤家の歴史を紹介。戦国時代には徳川家の家臣であった内藤家が、関ケ原の合戦を経て大名化するまでを、初期の当主内藤家長、政長の姿と共に展示し、三河国(現・愛知県)、上総国(現・千葉県)、陸奥国(現・福島県)、日向国(宮崎県)へと領地が移動したため、各時
代を経て段階的に内藤家臣団が形成されたことを紹介した。
展示品:「内藤家長・馨崇院画像」(レプリカ展示・原本は延岡城・内藤記念博物館)
    「内藤政長画像」(同上)
    「関原合戦画巻」(明治大学博物館所蔵 内藤家文書)など
ウ III 延岡への所替
延享4年(1747)年に内藤家は陸奥国磐城平から日向国延岡へ所替を命じられた。内藤家の新しい領地を含む九州の大型絵図を展示し、領地の状況を説明した。また、荷物管理のために陸奥国に残された藩士達や、磐城平の郷士身分の者が身分を解かれた後も荷物輸送を手伝ったことなどが記された資料を紹介した。
展示品:「筑後筑前豊後豊前四ヶ国之図」(明治大学博物館所蔵 新収資料)
    「肥後日向両国之図」(同上)など
エ IV 東から西へ
内藤家の領地は日向国延岡となり、内藤家は九州大名となった。江戸から長崎までの道中を描く「日本東西道中画」と共に、東北から九州に領地が変わったことで内藤家にもたらされた様々な変化(江戸屋敷の家臣の配置、年貢米の売りさばき方法、商人との関係、大坂屋敷の新設、西国の幕府役人とのかかわりなど)を紹介した。
展示品:「江戸一目図屏風」(タペストリー展示 原本は津山郷土博物館)
    「御書方年中行事」(明治大学博物館所蔵 内藤家文書)
    「豊後三郡図」(同上)
オ V 統治のはじまり
日向国延岡に所替した後、内藤家の家臣たちの禄高がへらされたことや、城周りの修復をしなければならなかったことなど、厳しい状況の中で統治が始まったことを紹介した。
展示品:「延岡城下図屏風」(タペストリー展示 原本一般社団法人きよたか美術館、画像提供延岡城・内藤記念博物館)
    「被仰出控」(明治大学博物館所蔵 内藤家文書)
    「日向国延岡城石垣築直堀浚之絵図」(同上)
カ VI 延岡領の町と村
延岡藩の町や村の役人達や郷士などについて紹介しつつ、城下で行われるお祭りと藩とのかかわりや、災害時やインフラの修繕などの局面で、村や町と藩がお互いに負担をしあっていたことなどを示す資料を展示した。
展示品:「延岡領村絵図 今山附近之図」(明治大学博物館所蔵 内藤家文書)
    「今山八幡宮御神幸行列絵巻」(パネル展示 原本は延岡城・内藤記念博物館)
キ VII お殿様と領地
その後の内藤家と領民との関係を、藩主の御初入(領地に初めて入ること)や、幕末期に藩主祖母へ海産物を献上する領民の姿などと共に紹介。内藤家はこれ以降、所替もなく、延岡で明治を迎えるが、当主の居所は東京に移る。昭和13年に建てられた旧内藤政道邸の古写真を展示室内でスライド上映し、紙模型を展示した。
展示品:「岩城平城図」((明治大学博物館所蔵 内藤家文書))
    「延岡御城附絵図(臼杵郡全図)」(同上)
ク 動画コーナー
特別展示室内で、展示の理解を深める動画4本を公開
動画タイトル:「明治大学と内藤家文書」、「特別展見どころ紹介」、「日本東西道中画」、
       「旧内藤邸写真」
ケ ハンズオンコーナー
特別展示室内に展示品の複製品2点を設置し、触ってじっくり観察するコーナーを設置。
ハンズオン用複製品:「日本東西道中画」、「旧内藤邸紙模型(小)」
 
(4)展示資料の概要
明治大学博物館所蔵内藤家文書より古文書29点、絵図7点、巻子1点
明治大学博物館所蔵伊勢国亀山藩板倉家文書より古文書3点
明治大学博物館所蔵豊後臼杵藩(稲葉家)関係文書より古文書2点
目録1号切支丹関係より1点
新収資料より巻子1点、絵図2点
レプリカ2点、タペストリー2点、パネル展示1、旧内藤邸紙模型1点
動画4編
ハンズオン用複製品2点

(5)関連イベント
ア 講演会
・リバティアカデミー特別企画 明治大学博物館2022年度特別展開幕記念講演会
 「幕末期、民衆の所替え反対運動」
 講師:文学部准教授野尻泰弘
 10月15日(土)から同28日(金)配信
 申込者数 155名
・「城下町延岡における祭礼〜今山八幡宮御神幸行列を題材に〜」
 講師:延岡城・内藤記念博物館 博物館係長(学芸員)増田豪
 11月16日(水)14:00から15:30 会場:博物館教室
 参加者 45人(博物館教室21名(うちスタッフ6名)、zoom24名)
イ ギャラリートーク
・ホームカミングデー校友向け展示解説
 10月23日(日) 13:00から13:30、15:00から15:30の2回実施
 会場:博物館教室
 参加者 31人(1回目16人、2回目15人)
・在学生向け解説(特別展解説+バックヤードで古文書観覧)
 11月5日(土)、12月3日(土)10:30から11:30
 会場:特別展示室、作業室1
 参加者 14人(1回目9人、2回目5人)
・友の会向けzoomギャラリートーク
 12月13日(火)10:00から11:30
 参加者 86人
 
(6)刊行
ア 図録「新しいお殿様—所替・その後-」
 編 集:明治大学博物館学芸員日比佳代子
 価 格:1200円
 発 行: 2022年10月14日 ページ数:120ページ 部数:1,000部

(7)グッズ制作
クリアファイル 150円 400部
ますきんぐてえぷ 400円 400部