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漆器 JAPANWARE 文理融合研究から見えてきた漆の過去・現在・未来
2011年度明治大学博物館特別展 漆器 JAPANWARE 文理融合研究から見えてきた漆の過去・現在・未来 |
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(1)実施形態
(2)趣旨 日本を代表する伝統工芸品としての“漆器”。しかし、その高い品質と驚くべき素顔は、世界はもとより、日本人の間においてもよく共有されているとは言いがたい。この展覧会の開催により、世界に誇るべき日本の漆文化について理解を深める機会を提供する。 漆器の歴史は、古く縄文時代にさかのぼり、現在ではおよそ9千年前からの可能性が指摘されている。そして、今なお伝統の製作技法は近代機械工業との軋轢を経て実用品の中にも脈々と受け継がれているが、将来に向け、特殊なジャンルの商品として止めるのではなく、その存在意義を現実社会の中にどう位置付けてゆくのか、工業製品としていかに普及されるべきかが課題となっている。 本展覧会では、明治大学が関わっている漆に関する研究の現在を社会にアピールするとともに、在学生教育・生涯教育の機会とすることを目的とし、博物館が取り組む「商品としての漆器」の分析・評価、文学部阿部芳郎教授が取り組む「縄文時代の漆器」、理工学部宮腰哲雄教授が取り組む「次世代高機能材料としての漆」に関する研究成果を基礎に展示を構成する。そして、大学創立130周年企画の共通コンセプト「世界へ」に協賛し、世界的な視点から漆文化を再認識する企画を加える。 (3)展示構成 1.神秘の物質を科学する —漆の科学分析— 漆の植林の中に紛れ込むような写真イメージに続いて、まず、最初に“漆”とはどのような物質なのかを紹介する。湿った空気にさらすとよく固化し、いったん固まると器物の耐水性、耐久性を高め、顔料を添加して色を表現したり、装飾用の素材を器面に接着することもできる“漆”という物質。科学分析によって明らかになった漆の成分、固化のメカニズムを明らかにする。 2.人はなぜ漆を使うのか? —縄文時代の漆文化— 人々が漆を利用し始めた初期の形態を探ってみる。漆利用が年代的にも古く遡ることをアピールし、漆利用の原初的なあり方を示すため縄文時代の漆器を展示。着眼点としては、漆を塗るもの、塗らないものの対比、赤い色を付けること、赤と黒で絵柄を表現すること、光沢のある器面を表現すること、祭祀に関わるあるいは呪術的な意味をもつ道具に塗られたこと。また、当時の漆芸技法を示す遺物などを取り上げる。 3.歴史の中の漆器 漆芸技法の進化を示すため、古代~近世における漆器利用とヨーロッパ社会における高い評価を象徴的に表現する。高級調度として公家、武家、寺院における需要、庶民も含めて広汎に使用された汁碗等の実用品を紹介。限られたスペースであるため、写真パネル及び漆器装飾の2大技法である金蒔絵・螺鈿、そして輸出漆器を展示する。 4.アジアに広がる漆文化 漆器がアジアに共通の文化であることを提示するため、各国・地域ごと(中国、朝鮮半島、琉球、ベトナム、タイ、ミャンマー等)の特色を反映した製品を一堂に展示し、各国ごとに将来の展望を解説する。東京国立博物館、浦添市美術館からの借用品で展示を構成し、外観上、作品の大きさ色彩的にも展示室内の最も目を惹く箇所となる。 5.今われわれは? —漆器の現在— 現在、我々が生活の中でどのように漆器と関係をもっているかを再確認する。少し昔の食膳の様子から、高度成長期には一般家庭でも購入されるようになった正月用品に象徴されるハレの器、戦後における合成漆器の開発と生産、伝統漆器が身近ではなくなった中においてもそのデザインが影響を及ぼしている点、「ホンモノの漆器を普段使いに」をアピールし、漆の質感にこだわった近年の商品開発までを取り上げる。 6.漆利用の可能性を拓く —次世代高機能材料としての漆開発— 合成漆器普及の背景には伝統的な漆芸技法が量産・普及に対応できないという理由があった。固化に時間を要する、美しい艶を出すためには手間ひまかけた研磨や高度な塗り技法が求められること、作業工程の機械化ができない、という問題があった。そこで、これらの課題をクリアすべく開発された、有機ケイ素化合物の添加によるハイブリッド漆、漆の粒子を小さくして使用性を高めたナノ漆を紹介する。 (4)展示資料概要 1.資 料 数 127点(内借用資料75点、館蔵資料52点) 2.資料借用先 浦添市美術館(沖縄県) 桶川市(埼玉県) 川口市遺跡調査会(埼玉県) 東京都北区教育委員会(東京都) 高崎市教育委員会(群馬県) 東京国立博物館 明治大学バイオ資源化学研究所 個人 (5)開催記念講演会
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