大名と領地 —お殿様のお引っ越し—

2009年度秋季特別展
大名と領地 —お殿様のお引っ越し— 
(1)実施形態
主 催 明治大学博物館
後 援 千代田区 延岡市 延岡市教育委員会
会 期 2009年10月17日(土)~12月20日(日) 65日間
会 場 明治大学博物館特別展示室
入場料 ¥300
入場者数 5,292名
企画・構成 日比佳代子(刑事部門学芸員) 外山徹(商品・刑事部門学芸員)

(2)趣旨
 江戸時代、大名は将軍の命令により領地を離れなければならない事があった。領地を召し上げられる改易、新たな領地への移動を命じられる転封など、その契機は一つではなかった。さらに、転封も外様大名の牽制を目的としたものから、軍事的な目的で譜代大名の配置替を行うもの、幕閣としての出世に伴い譜代大名の領地が転ぜられるものなど、様々だった。譜代大名の内藤家も転封を経験した大名家の一つである。他の大名家文書に転封関係史料があまり残っていないなかで、内藤家文書には転封の実態が明らかになる良質な史料が数多く残されている。この展覧会では、未開拓と指摘される転封研究への貢献をめざし、内藤家文書を中核にして江戸時代の転封を描く。
 住み慣れた城を手放し、家臣を引き連れ新しい土地へと引っ越しをする転勤さながらのその様子から、従来の認識とは異なる大名像を浮かび上がらせ、同時に大名と幕府,大名と領民という近世社会の根源的な問題にも迫る。

(3)展示構成
(1) 大名が領地を離れる時
 ここでは、転封や改易による大名の流転の象徴として、蒲生氏郷を輩出した戦国時代の名族蒲生家の背負金銅太鼓と関連史料を展示。最後の当主忠知に嫁いでいた内藤家の息女が家伝の什物を携えて実家へ戻り、結果として九州の地に蒲生家ゆかりの品が伝えられている。
(2) 延享四年三方領地替
 延享4(1747)年3月、内藤家は陸奥国磐城平(福島県)から日向国延岡(宮崎県)への転封を命ぜられた。同時に延岡の牧野家は常陸国笠間(茨城県)へ、笠間の井上家が磐城平に移ることになった。ここでは、主に内藤家と井上家との間でやりとりされた居城と領地の受渡しに関する史料、内藤家の移動準備に関する史料を展示した。
(3) 大名間の先例共有
 内藤家が譲渡された他家の転封記録。
(4) 大名と領民
 郷士による移動への随行願、夫食米の返納など、転封によって発生した領民との交渉に関する史料。
(5) 城邑引渡し、受取の儀式
 軍事施設である城の受取には緊張感がともなった。その立合いを務めた幕府の上使、また、領地の受渡しには幕府の代官が介在するが、それらに関する史料を展示。磐城平城の絵図は、幕府上使が見分をおこなうために作成されたもの。また、城に備え付けられた武具の引渡し、櫓や城門の鍵の引渡しに関する帳簿を展示した。
(6) 城主と祭礼
 城主と在地の人々との間に結ばれた関係を象徴的に表す事例として寺社の神事祭礼について取り上げた。右隻の端に今山八幡宮の神事能の様子を描いた延岡城下図屏風は、地方の城下町を描いた屏風として稀少な存在であるが、藩主が城に居住し、その周囲を家臣の屋敷が固め、経済活動の拠点として商人が集住するという、城下町の風景自体が江戸時代の大名のあり方を示しているといえる。領主が代わっても城下に代々引き継がれた黒式尉・白式尉の面などを展示。
(7) 引き継がれる行政文書
 牧野家から幕府代官を経て内藤家へ引き渡された郷村高帳。主に牧野家から内藤家へ引き継がれた行政関係文書を展示。また、新たに内藤領へ組み入れられた宮崎郡の郷村高帳及び絵図面等も展示した。
(8) 転封と一揆
 定免制をめぐって宮崎郡の旧幕府領村々が行った逃散に関する史料。
(9) 転封の影響
 姫路藩酒井家における転封をめぐる家中の争闘事件の記録や幕府領から藩預地への移行を契機とする一揆の発生などの関連史料を展示した。

  

(4)展示資料数
借用先(機関・個人);3個所  出展資料;44点(内借用11点)
  
(5)関連事業
ア 開幕記念講座
明治大学ホームカミングデー企画「転封の構造─『お殿様(内藤家中)のお引っ越し』展によせて」
日 時 2009年10月18日(日) 13:00~14:30
講 師 谷口 昭(名城大学法学部教授)
受講料 無料
受講者数 105名
趣 旨 転封研究の第一人者が、近世社会における転封の意義を論じる。展示内容を近世社会全体の中で理解することを助ける講演。
イ 連続講座
明治大学リバティアカデミー博物館公開講座
日本史ゼミナール 「お殿様と地域社会」
日 時 2009年10月24日~12月19日の毎週(土)全5回 15:00~16:30
講 師 外山 徹(明治大学博物館学芸員)
森 朋久(明治大学農学部兼任講師)
引野亨輔(福山大学人間文化学部准教授)
内山一幸(日本福祉大学知多半島総合研究所主任研究員)
落合弘樹(明治大学文学部教授)
受講料 ¥9,000
受講者数 登録者43名 受講者のべ164名
趣 旨 内藤家以外の大名家の事例も交えながら、日本近世・近代におけるお殿様と地域社会の関係を論じる。展示で表現された大名と知行地、領民という切り口をより深める講演。