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特定課題研究ユニット詳細 2006年度

新素材開発研究所

研究所名 新素材開発研究所
研究課題名 生体分子によるナノ粒子の生成と配列化
研究所概要 (研究目的・成果達成のイメージ)
 十億分の一メートル(ナノメートル)の構造を持つナノ材料は,バルク材料にはない優れた物理的・化学的特性を有しており,様々な産業分野での応用が期待されている。大きな材料の切削によって細かい構造を作り出していく従来の微細加工技術では,百ナノメートル以下の微細構造を実現することは困難である。本研究所は,生体分子の自己組織化現象を利用してナノメートルレベルの精度を持つ周期構造材料を作り出す,新たな材料制御法を確立することを目指している。生物は均一で制御された高分子の生成と自己組織化をもとに,数ナノメートルの分子の世界から数メートルの多細胞生物の個体まで実に巧みに組み立てられている。この幅広い制御システムを,現在使われている物理的,化学的手法と併用すれば,今まで不可能であった素材の生成や加工,組み立てができると考えられる。本研究所では,金属,誘電体,磁性体などのナノ粒子をタンパク質を利用して生成させることをめざす。タンパク質の自己組織化を利用することにより,粒子サイズや配列周期の均一性は分子レベルで保証されるため,従来にない空間精度を実現することができるだろう。こうして生成したナノ構造材料は,高密度磁気記憶素子,フォトニック結晶,原子光学素子,化学触媒,薬剤運搬など,様々な応用が期待される。それぞれの材料について光学特性,力学特性,生化学特性,電気的特性を明らかにし,実用可能な新材料として提案することが,本研究所の最終目的である。

(研究実施概要)
 生体物質は生物の長い地球上の歴史を通じて取捨選択され効率化をはかってきた。特にタンパク質はナノメートルサイズの機能性分子であり,人工的に作りうる装置や素子に比べて圧倒的な性能を誇っている。本研究はこのような生体物質を利用して,高密度磁気記憶素子,フォトニック結晶,原子光学素子,化学触媒,薬剤運搬など,様々な応用に利用し,それぞれの材料について光学特性,力学特性,生化学特性,電気的特性を明らかにして,実用可能な新材料として提案することが最終目的である。
 昨年度まではタンパク質フェリチンを用いて,強磁性体鉄,インジウム,アルミニウム,亜鉛のナノ粒子などのさまざまな無機物質ナノ粒子を生成することを試みた。また,そのナノ粒子をシリコン基板上に規則正しく配列させることに成功した。
 今年度はさらに広い分野への応用をめざして,1.フェリチンを用いた生体親和性の高いカルシウムナノ粒子の作製とその原理の解明,2.繊維状ハイドロキシアパタイトを用いた骨誘導性のある枠組み(スキャフォルド)の構築,3.ESRによるNADPHoxidaseやチロシナーゼ酵素の立体構造の解明,4.ナノパターンをめざした微粒子のレーザトラップ技術の開発,5.生体物質のテラヘルツ分光をめざした分光器の開発,6.超音波キャビテーションによる発生する気泡のダイナミクス,およびソノルミネセンスの研究,7.多結晶粒界への低融点金属の拡散と脆化,8.クラスレートハイドレートや氷結晶の成長過程のダイナミクスに関する研究,などについて研究を行った。
研究者 所属 氏名
  理工学部 教授 吉村英恭
  理工学部 教授 小泉大一
  理工学部 教授 立川真樹
  理工学部 教授 崔博坤
  理工学部 助教授 平岡和佳子
  理工学部 助教授 小田島仁司
  理工学部 助教授 長島和茂
  農学部 講師 鈴木博実
研究期間 2004.4~2009.3
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