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特定課題研究ユニット詳細 2006年度

先端医療材料創製研究所

研究所名 先端医療材料創製研究所
研究課題名 高度医療・福祉を実現するためのハイパフォーマンスバイオマテリアルの開発とその医療用デバイスへの応用
研究所概要 (研究目的・成果達成のイメージ)
 高度先端医療を実現し,将来的に我々のQuality of life(QOL)を高いレベルで維持するためには医学だけでなく生体材料や細胞を積極的に利用した理工学的あるいは生物学的なアプローチも不可欠な要素となる。
 本研究所では,学内外で先端的な研究を推進しているメンバーに参画してもらい,医理農工の有機的連携による総括的な組織体制を構築し,高度先端医療を支える技術を確立する。また,本研究所で創製されたバイオマテリアルが真の意味で社会に貢献するには「産学連携」を視野に入れる必要があるため,企業の方々にも参画を依頼している。
 具体的には,高度医療・福祉を実現するための「ハイパフォーマンスバイオマテリアル」を開発し,それらを医療用デバイスとして応用する。この研究には,新しいバイオセラミックスやバイオメディカルポリマー,それらのハイブリッド材料のようないわゆる合成系の人工材料に加えて,細胞を積極的に活用して免疫系の問題や臓器移植におけるドナー不足のブレークスルーに挑戦する「再生医療」「ハイブリッド型人工臓器」の研究も含む。
 本研究所は,以下の4つの部門に大別され,各研究者は一部門あるいは複数の部門を担当する。
 a)硬組織代替材料開発部門
 b)実質系臓器再生部門
 c)結合組織材料創製部門
 d)高度癌治療開発部門

(2006年度の研究実施概要)
 2006年度は前年度の研究成果を発展させるため,本研究所の主要テーマで,文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業「学術フロンティア推進事業」に応募し,採択された。このプロジェクトの採択が本研究所にとって2006年度の最大のイベントであり,今後さらなる研究推進に尽力したい。以下,概要を述べる。
 我が国は他の先進国に比べて急速に超高齢化社会に突入するため,その対策の一環として早急に「高度先端医療」を実現する必要がある。我々の生活の質(Quality of life;QOL)を高いレベルで維持するためには医学だけでなく生体材料や細胞を積極的に利用した理工学的あるいは生物学的なアプローチも不可欠な要素となる。
 本研究所の目的は,学内外で先端的な研究を推進しているメンバーに参画してもらい,医理農工の有機的連携による総括的な組織体制を構築し,高度先端医療を支える技術を確立することにある。また,本研究所で創製されたバイオマテリアルが真の意味で社会に貢献するには「産学連携」を視野に入れる必要があるため,企業の研究者も参画している。
 具体的には,高度医療・福祉を実現するための「ハイパフォーマンスバイオマテリアル」を開発し,それらを医療用デバイスとして応用する。この研究には,新しいバイオセラミックスやバイオメディカルポリマー,それらのハイブリッド材料のようないわゆる合成系の人工材料に加えて,細胞を積極的に活用して免疫系の問題や臓器移植におけるドナー不足のブレークスルーに挑戦する「再生医療」「ハイブリッド型人工臓器」の研究も含む。
 本研究所は,以下の4つの部門に大別され,各研究者は一部門あるいは複数の部門を担当する。テーマの数字は下記のテーマ番号に対応している。

 a)硬組織代替材料開発部門:テーマ1,2,3
 b)実質系臓器再生部門:テーマ5,6
 c)結合組織材料創製部門:テーマ4
 d)高度癌治療開発部門:テーマ7

 以下,具体的なテーマおよび2006年度の成果概要を記す。
1)硬組織再生を誘導するアパタイトファイバースキャフォルドの開発と医療用デバイスとしての応用
 アパタイト単結晶ファイバーとカーボンビーズから作製されるアパタイトファイバースキャフォルド(AFS)は骨芽細胞の三次元培養が可能であり,骨芽細胞の分化を促進する作用もあるが,その力学的強度に問題がある。ここでは,その強度向上を指向して,アパタイトゲルあるいはコラーゲンゲルとの複合化を試み,従来の2,3倍レベルの強度向上を達成し,そのin vivoにおける生物学的評価も実施した。
2)生体骨と力学的に調和した有機/無機ハイブリッド材の開発
 リン酸三カルシウム(TCP)からなる多孔質セラミックスの作製とその開放気孔内にL-ポリ乳酸(PLLA)を導入するプロセスを確立し,TCP/PLLAハイブリッドの創製を推進した。TCP多孔質セラミックスへのPLLAの導入により,その力学特性を人の皮質骨に近づけることが可能となり,得られた材料のin vitro評価を骨芽細胞を用いて行った。
3)キレート硬化型骨修復セメントの開発
 従来型の骨修復セメントの硬化メカニズムは,酸性のCaHPO4と塩基性のCa4(PO4)2Oとの酸-塩基反応によりアパタイトが生成して硬化するというものであったが,これには硬化時間がかかることなどいくつかの深刻な問題があった。本研究では,アパタイト粒子の表面を生体関連物質で安全性の高いイノシトールリン酸で修飾し,そのキレート作用で硬化する全く新しい硬化メカニズムをもつ骨修復セメントを開発した。今年度は,臨床応用可能なレベルまで力学特性を向上させる研究に注力し,ある一定の成果を上げた。それらの成果をもとに2件の特許出願を行った。
4)組織適合性に優れたスキャフォルド人工靭帯の創製
 現在,靭帯の再建にはホストの靭帯を一部採取し,それを使用することが多いが,その場合,健常部位からの採取になるため二次的な侵襲という問題がある。そこで,人工材料のみから構成され,さらに従来の人工靭帯よりも高い性能を持つ新しいスキャフォルド型人工靭帯の開発を指向し,その素材の探索を行い,新素材の候補を選出した。
5)アパタイトファイバースキャフォルドによる肝細胞の高密度三次元培養法の確立と人工肝臓の試製
 1)のAFSの実質系臓器への適用を目指し,アッセイ系を含む肝細胞の三次元培養法の確立とラジアルフロー型バイオリアクターによる体外循環型人工肝臓システムの試作を行った。他の市販で入手可能な細胞担体との比較実験を実施し,我々のAFSが優れた肝細胞の担体となりうることを検証した。
6)唾液腺細胞とアパタイトファイバースキャフォルドを用いたすい臓の再生-クローンミニ豚によるアプローチ-
 本研究も1)のAFSの実質系臓器への適用を目指している。より具体的には,唾液腺細胞とAFSを用いたすい臓および肝臓の再生組織を構築するための実験手技の確立を行った。今年度は特に唾液腺細胞の細胞方法の確立を行った。
7)高度癌治療を指向した生体吸収性セラミックス微小球の合成とDDSの構築
 生体吸収性をもつリン酸三カルシウム(TCP)からなる中空のセラミックス微小球を合成し,そのキャラクタリゼーションを推進した。また,その微小球を利用した薬剤送達システム(DDS)の確立を目指し,血管新生抑制剤を担持および徐放挙動について調査した。特に,腫瘍化させたヌードマウスを用いた抗腫瘍効果を検証する実験では,TCP微小球と薬剤とを組み合わせたものが特に優れた抗腫瘍効果を示すことが明らかとなった。この成果は日経産業新聞の一面に掲載された(2006/10/30付け)。
研究者 所属 氏名
  理工学部 助教授 相澤守
  理工学部 教授 吉村英恭
  理工学部 教授 崔博坤
  理工学部 助教授 納冨充雄
  理工学部 助教授 深澤倫子
  理工学部 助教授 永井一清
  理工学部 助教授 平岡和佳子
  農学部 教授 長嶋比呂志
  農学部 助手 黒目麻由子
研究期間 2005.4~2010.3
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