Go Forward

震災等復興活動

法学部自由講座(震災復興支援)の学生らが岩手県大船渡市でLEDライト配布(明治大学つむぎプロジェクト)

2015年03月31日
明治大学 震災復興支援センター

LEDライト付きキーホルダーを配る学生LEDライト付きキーホルダーを配る学生

配付したLEDライト付きキーホルダー配付したLEDライト付きキーホルダー

今回の活動に関する広告今回の活動に関する広告

 法学部の学生から、岩手県大船渡市で行った活動について、寄稿がありましたのでご紹介します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 自由講座とは明治大学法学部の和泉開講の授業である。すでに四年前から駿河台開講の法学部専門ゼミに阪井和男教授が担当する阪井ゼミがあり、東日本大震災の被災地である岩手県大船渡市で支援活動として明治大学つむぎプロジェクトを行っていた。これまで、同教授が担当する自由講座では、ゼミの下部組織のようにゼミ活動に協力して明治大学つむぎプロジェクトを支援してきた。
 今回、今年になって初めて自由講座は阪井ゼミとは独立した独自の活動を始めることになった。自由講座を履修した学生はほとんどが関東圏の出身で被災地については何も知らない状態であった。私もその一人である。そんな真っ白な状況から、自由講座では阪井ゼミの活動や教授の話を聞いて被災地について学び、自分たちができることを考えていった。そして、それぞれ被災地に対して自分たちに出来ることを一生懸命考え、行動していった結果である。

 今回の活動を通して私たちは被災地について多くのことを知ることになった。土地の水位の問題、被災地の夜の交通事故の問題、街灯を立てられない理由、被災地の人々が何を望んでいるのか。それらの複数の複雑な問題を学んでいき、何がどのようにできるのかを絞って、実際に被災地に足を運んで活動し、現地の方々に話を聞き、時に激しい議論を展開しながらこの活動は進んでいった。被災地の問題はどれが正解というものはなく、どれも実在する問題で、その中で自分たちができる方法で、できることをするしかなかった。
 そんな中で私たちはその様々な手がかりを手繰って二つの方針に固めることになった。それは現在の「被災地にある夜に起こる交通事故の問題」と「災害の記憶の伝承」という問題である。これは被災地では土地が津波に流されてしまい、土地の水位を上げるために今でも土地の嵩上げが続いている。その土地の嵩上げが終わるまでは容易に街灯を立てられない状況が続いているからだ。そして、もう一つは震災に対する被災者の想いに「震災を忘れないでほしい」というものがある。岩手県大船渡市には「津波伝承館」という施設が設置されている。これは震災の記憶を5000年先まで語り伝えたいという思いが結実したものである。今回の活動の中で上がった活動内容の候補の中にはこの津波伝承館と協力して震災の記憶を伝えていくというものもあった。
 この二つの中で私は前者「被災地にある夜に起こる交通事故の問題」を推し進めた。これは私個人の価値観だが、今現在、実地で苦しんでいる人がいながらそれでも未来や先のことに対して目を向けることをしたくないと思ったからだ。そして、記憶の伝承に関してもできる限り両立をしていこうと考えていた。そのため、私は活動をより大きなものにしていこうとした。
 被災地に関しての今回の活動、それが大きな活動になればそれが少しでも人々の目に留まり、被災地のことを想起させ、記憶の風化を防げるのではないか。そのため、私は授業で得られた手がかりを元に企画の実現に必要な関係各所に話をしに行き、何の縁もゆかりも無い状態で今回協賛いただいたJR東日本にも独自にコンタクトをとった。
 
 今まで明治大学のこの活動とJR東日本とは関係がなかったのだが、今回ご協力をいただけることができた。今回の活動に関して私が最も幸運だったのは、JR東日本に関して正しい窓口も知らないながら、直接BRT盛駅に電話を掛けるという行動の結果として、東日本旅客鉄道株式会社の総合企画本部復興企画部の方々とお会いできたことだろう。
 このような学生たちの想いと、呼びかけた方々との協力の結果として今回の「Eat and Light Project」は実を結んだ。街灯を立てられずに、不安を覚える夜に移動したり下校したりする人たちが少しでも安全に夜道を移動できるようにLEDライト付きのキーホルダーを送る。これで誰かが安全を感じて笑顔になってくれればいい。これは夜の交通事故の問題の全体に対してはささやかな抵抗かもしれない、私はそれでも実施できてよかったと思う。それは、今回の活動で配布の際には多くの人に受け取ってもらうことができた。そして、これが人々を護る光源となり、そして、街の人々が持つ命の明るさ「光り」になってくれればと思ったからである。

 今回の活動を行ってみて学んだのは、大きなプロジェクトを遂行するというのは重機を動かすようなものということだ。一つの企画でも多くの部署が関係し、それぞれに動いてもらうにはまた多くの労力が必要とされる。けれど、それでも、そんな大変な活動でも無事に今回の活動を達成できたのは、私たち自身が震災に対して真剣に向き合い、今でも被災地の復興に取り組んでいる人たちがいて、私たちに協力してくれた方々が被災地に関して考え、協力を惜しまなかったからだろうと思う。
 今回行ったことは被災地の全体的な問題に対しては微々たるものかもしれない。だが、これからもそんな小さな活動でも続けていくことが肝要なのだと思う。復興はまだまだ進んでいない。だが、そこに生きる人々はそれでもひたむきに生きている。そして、被災地を元に戻そうと、街の人々に活気をもたらそうと活動する人々がいる。そんな人々の姿はとても懸命で、人間的で素敵に思えた。
 
 これからの復興とは一人ひとりが意識して震災に目を向けていかなければならないものだろう。人々が震災の記憶を胸に刻み、時には語り継ぎ、時に目を向け、できれば実際に足を向けてほしい。そこにはあの日起こった出来事がどれほど圧倒的な力によるものだったのかを知らしめる痕跡と、現在の、ようやく明日を見据えて、未来のその先に目を向けて今を一生懸命生きている現地の人々の息遣いを見ることができるだろう。
 誰かが被災地に関心を持ち、被災地のために活動する、または震災の記憶を忘れないで心に刻む。そうすればいずれは少しずつだが着実に被災地が震災の爪痕に負けずに、かつての賑わいを取り戻せる日が来るだろうと私は考えている。
法学部2年 佐々柊一
◎Eat and Light Project「反射板付LEDライト配布」

 大船渡線BRT駅周辺の街灯のない夜道で通学する中高生たちに「街灯も立てられず暗いままの夜道を歩く学生に光の安心を」お届けする活動です。企画は、明治大学の学生たち(法学部2014年度自由講座「東北再生支援」(担当:阪井和男教授)です。
 「いつもの昼食が被災地への20円の寄付に!」を合言葉に、学食(エームサービス(株)・(株)明大サポート)に学生が提案した復興支援特別メニュー「喜多方ラーメン」の売り上げからの寄付金を原資の一部としています。
 復興支援特別メニューの販売は、明治大学和泉キャンパス(明大前)の学食「和泉の杜」において、2014年1月19日(月)~23日(金)の5日間で計249食が販売されました。
 寄付金の受け入れとLEDライトの購入は、大船渡市の特定非営利活動法人防災・市民メディア推進協議会にご協力いただき、配布の実施は、ポスター作成から掲示・配布にいたるまで、JR東日本の全面的なご支援をいただきました。多くの関係者たちによるご協力に感謝申し上げます。
2015年2月24日 法学部教授 阪井和男