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プログラムの教育研究目的・養成する人材像

教育研究目的

現代社会は膨大な量のデータが飛び交い、社会システムは極度に複雑化していますが、従来の分析手法では様々な課題の解決に限界が見えてきており、より高度な数理的手法を用いたアプローチが求められています。その鍵は現象解明の根幹となるモデル構築の新たな展開にあります。現象を忠実に捉える定量モデルや、現象の本質を見抜き理解するという抽出モデルを用いる手法は、研究領域によらず強力であります。なかでも日々の暮らしに直結するライフサイエンスに数理的視点を持ち込むことは、医療、創薬、育種、環境等多方面での課題の解決に役立つと考えられます。本プログラムでは、現象数理学とライフサイエンスが融合する領域において、高いレベルで協働して問題解決を図ることのできる人材の育成を目指しています。具体的には、膨大なデータを適切に処理する技能に加えて、数理モデリングを用いて生命現象を多面的に理解できる人材を育成していきます。また、生命はそれ自体が高度に複雑なシステムであり巨大なネットワークと化した現代社会に通じるところがあるから、本プログラムの融合教育を受けた人材は、培われた学際的視野と知見を社会の多方面に生かせると考えています。

養成する人材像

本プログラムでは、数理シミュレーションとモデリングを理解した上で、ライフサイエンス分野で活躍できる人材輩出を目指しています。例えば、膨大な遺伝子実測データを数理モデル化することにより必要な遺伝子を的確に改変させて実験用動物(臨床検体)を生み出せる人材、医用材料開発や創薬の分野でシミュレーションを駆使した動物・細胞実験(治験)を行うことができる人材等であり、これら人材は新製品開発の速度を加速するために必要であり、創薬・製薬,化学素材,医用機器,情報,食品製造等の分野で人材の需要が高まっています。このような人材は、生命分野以外の一般メーカーからの需要も高まっています。例えば、車体の安全性確認において、現在は、実際に破壊するだけではなく、実験データから強度シミュレーションをしています。材料工学を専門とする人材が数理シミュレーションを理解することにより、製品開発の速度を加速し、開発コストの低減に貢献しています。
生命科学の分野では、さらに大規模なデータ解析が求められ、ゲノム編集(遺伝子配列の再編)や人工臓器製造ではシミュレーションや数理モデル化は欠かせません。この分野の研究教育テーマには、生体材料の工学(バイオメカニクス)による治験材料の創出,生体反応に関する数理モデルを適用する人工臓器の開発,がん発生モデルの数理的アプローチによる個別化医療への応用,遺伝子やタンパク質解析による創薬ターゲットの同定,動脈疾患のモデル化や心臓のマルチスケールモデルの医用(診断)応用,生体睡眠モデルと投薬効果測定,バイオインフォマティクスによる育種(品種改良)による農業生産性の向上などが挙げられています。