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ウィズコロナ時代の明治大学 第3回:就職キャリア支援事務室 倉吉 俊一郎さん

明治大学の手厚い支援体制は、長らく「就職の明治」と社会から高い評価を受けてきました。今回はコロナ禍における就職キャリア支援の取り組みにフォーカスを当てています。
 
<こちらの記事は、明治大学広報第751号(2021年7月1日発行)に掲載されたインタビューの全文になります>

第3回「コロナ禍の就職キャリア支援」就職キャリア支援事務室 倉吉 俊一郎さん

——倉吉さんはどのような業務を担当されていますか?



主に文系低学年(1・2年生)を対象としたキャリア支援に携わっています。具体的には就職・キャリア支援に関わるイベントの企画・運営・立案・実行について、同僚と協力しながら当たっています。
——「就職支援」と聞くと、3・4年生向けに行われている印象があります。
3・4年生への支援は、エントリーシートなどの書類の書き方や、面接での自己表現の仕方など、就職活動そのものへの支援になります。これらは本人の努力次第でいくらでも伸ばしていける部分です。しかし、実際の就職活動の面接などで問われる「学生自身がこれまでの約20年間の人生で、何を考えどのように行動してきたか」という部分については、3・4年生になって就職活動が本格してからでは伸ばすことができません。長年の就職支援の中で歴代担当者が感じてきた「磨けば光る個性がある学生なのに、それをうまく引き出してあげられない」というもどかしい思いがきっかけとなり、近年では低学年向けのキャリア教育にも力を入れるようになりました。
——明治大学ならではの取り組みはありますか?

(株)小学館とタイアップしたPBLイベント・学生によるオンライン発表の様子

特徴的な取り組みがふたつあります。ひとつめは2年生全員に配布している「キャリア手帳」で、ふたつめは企業とタイアップしたPBL(問題解決型学習)イベントです。

学部3年生全員配付している「就職手帳」は、コンパクトにまとめた就職活動のハウツーなどを掲載し、就活に特化した内容の手帳で、もともと明治大学から始まり、今では全国の大学が同じような手帳を作って学生に持たせています。さらに一歩進んだ取り組みとして、「就職活動に向けて取り組むべきことや、より充実した学生生活を送るために今できること」を考えるヒントをまとめた「キャリア手帳」を毎年制作し、2年生全員に配布しています。

企業とのタイアップイベントでは、(株)小学館、Twitter Japan(株)などにご協力いただき、「企業の抱える課題解決に向けて、学生が話し合い、その方法を直接担当者に提案する」という内容の行事を行っています
——企業とタイアップしたPBL学習の機会については、学部の正課授業として企画されているものありますね。
キャリアセンターで企画するイベントでは、学部や学年が異なるメンバー同士が混ざり合ってチームを結成する仕組みにしています。異なった価値観や発想を持つ人が集まり、意見をまとめていくことの難しさを感じてもらえるのではないかと思います。
——実際の就職活動や、社会人として仕事をするようになると、むしろそういった状況が当たり前になりますね。
このイベントでは簡単なことを解決して満足感を得ることが目的ではなく、企業の担当者が悩むほどの正解のない課題に対して、大学1・2年生という立場で関わることができるというところが重要だと考えています。参加した学生はおそらく、そこでできたことよりもできなかったことの方が多いはずです。困難に直面した経験やできなかったくやしさを、正課の授業やゼミ、サークルやアルバイトなどの課外活動に生かしてほしいというねらいがあります。
——コロナ禍で採用面接がオンラインに変わりました。支援体制にも変化はありましたか?
2020年度1年間で、約1万6000件の個別相談を実施しました。また、各種説明会や就職セミナーなどは年間で約300件実施しています。さらに、実際に就職活動を行った学生による「就職活動報告書」を約6400件、学生向けの就職支援システム「M-Career」上で公開しました。これらはオンラインで行ったものですが、例年並みの実績です。

また、スマートフォンから気軽に参加できる「オンライングループ相談会」は年間で35回実施し、約4000人の学生が参加していて、これはオンライン化したことで従来よりも充実した支援実績の一つです。現実的に学生生活や採用活動そのものがオンライン中心に変わっていきましたが、「途切れない就職支援」を提供すべく、スピート感を持って対応しています。
——それでは、支援において変わらない部分はありますか?

オンラインでの個別相談に応じる就職キャリア支援事務室の職員

これまで就職キャリアセンターが最も大事だと考えてきたのは、一人ひとりの学生の適正に向き合う「Face to Face」の姿勢です。対面からオンラインに変わりましたが、就職はあくまでマッチングなので、個別相談を通じて学生の適性に見合った進路を一緒に見極め応援していくことに尽きると考えています。変化にスピーディに対応しつつ、こうした姿勢は変わらず持ち続けています。
——オンライン化でのメリットなどはありましたか?
文系の場合、1・2年生と3・4年生でキャンパスが変わるので、1・2年生と企業との接点を設ける機会をつくることにやや難しさがありました。企業側としては、同じ説明会を行う場合、直接採用活動につながる3・4年生を対象とする方が、メリットがあると感じられるので当然のことではあります。現在、説明会などのイベント・行事はオンライン中心となり、キャンパス移動や参加者の人数制限などの制約がなくなり、3・4年生を対象としたものも1・2年生が参加できるようになりました。生田・中野キャンパスの学生にとっても、自宅から気軽に参加できるようになったことはメリットだと思います。
——オンラインでの選考活動に変わり、内定を取る学生の傾向に変化はありましたか?
自分自身のことを言葉で表現できる学生は、志望した企業の内定を獲得できていた傾向があります。実際に会ってみてわかる人柄などノンバーバルの部分を強みにしていたタイプの学生は苦戦する部分もあったのではないかと思います。
——選考がオンラインだけで完結してしまうことによる企業と学生のミスマッチなどはあったのでしょうか?
昨年の事例では、10月1日の内定式で初めて社屋に足を踏み入れた、社員の方と対面したという学生もいました。思っていた雰囲気と少し違うかもしれないという感想を持つ学生は例年よりは多かったかもしれませんね。
——そのギャップを埋めるためにできることはありますか?
できるだけ多くの人に会い、話を聞くことが必要だと思います。大学の就職支援イベントがオンライン中心になり、学外の就活サイトや、今ではYouTubeなどから手軽に情報を入手できるようになりました。ですが、その企業や業界のことを知るために、オンラインであっても良いのでOB・OG訪問など、直接話を聞くというところにしっかり手間をかけることが大切です。センターでは従来、学内での会社説明会を多数開催していましたが、オンラインになってから、「オンライン交流会」という形式に改めています。これには、学生と企業の方が、双方向で意見交換できる場として活用していただきたいというねらいがあります。
——コロナ禍で学生生活は一変したことについて、どのようにお考えですか?

「前へ!チャレンジガイドセミナー」の様子(画面右側で説明しているのが倉吉さん)

本来であれば、キャンパスで友達同士、先生方と懇親を深めて、学生生活を送ることを思い描いていた学生が多いと思いますが、その部分を提供できていないと感じていました。「そのような課題感があるよね」という他部署との意見交換から発展し、4月に1・2年生を対象として、複数の部署による合同企画「『前へ!』チャレンジガイドセミナー」をオンラインで開催しました。
——就職キャリア支援事務室のほか、学生支援事務室、国際教育事務室をはじめ、学生支援に関わる複数部署が参加して実現しました。部署横断型での企画は本学では珍しい試みになりましたね。
各部署が「少しでも充実した学生生活を過ごしてほしい」という共通の思いを抱えていて、声を掛けてみたらどんどん意見が集まり、これまでになかったイベントとして形になりました。部署や担当分野が異なっていても、学生に対して同じ思いで業務に当たっていることがわかってうれしい気持ちになりましたし、改めて身が引き締まる思いがしました。秋口に第2回開催を予定しています。現在、各部署で開催に向けて準備を進めています。
——最後に、どのような思いで日々の業務に当たられているかお聞かせください。
「明治を卒業して良かった」と思ってくれる人を1人でも増やしたいですね。私個人だけでなく、就職キャリア支援センターの職員全員が同じことを考えていますし、明治大学で働く教職員の皆さんが根底に同じ思いを持って業務に当たられていると思います。