商品部門 Commodity

商品展示の歴史は商学部教員による資料室の設置(1951年)をルーツとします。当初は商品の原材料標本や貿易商品を収集しましたが、高度経済成長期に収集した地方物産品のコレクションを土台に、1973年からは今日で言う「伝統的工芸品」を収集・展示の対象とする方針が採用されました。この展示では、その間の資料収集及び調査・研究活動を時系列でたどりながら、陶磁器、漆器、染織品などわが国の伝統文化の所産として生活の中に生き続ける伝統的工芸品について、昭和戦後から現代に至る各々の時代相に裏付けられた商品のあり方を検証しています。展示ケース内に配置されたQRコードをスマートフォンで読み取ると、展示品を製造したメーカーが公開している工芸品の最新イメージ画像にアクセスできます。また、備え付けの映像モニターにて関連の映像番組をご覧いただくことができます。

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日本の伝統工芸 ノスタルジーからクールジャパンへ



象徴的な展示として、これまでの歴史の中で生み出されてきた工芸の美をそのまま映した製品と、社会情勢の変化に適応しつつ現代的な商品としてアレンジされた製品を対比して紹介しています。伝統工芸は産業と言うにはあまりに小規模となってしまいましたが、高品質なモノづくり、文化的成熟を表象するアイコンとして地域のブランドイメージ構築に活用する動向も出てきています。高齢者をターゲットとする懐古的なイメージではなく、スタイリッシュで高品質なイメージを前面に若年層に訴求するという、伝統的工芸品産業における戦略転換の状況を提示しています。

1戦後の経済復興



商品部門のルーツをたどると、商学部教員による研究グループの資料室設置(1951年)にさかのぼります。当初は戦後復興期における化学繊維や合成樹脂、建材など原材料標本類、穀物・香辛料・コーヒー豆など再開された対外貿易に係わる資料収集から始まりました。1957年に常設の展示施設として商品陳列館を開館、高度経済成長期の始まったこの頃、地方の手工業製品を活発に収集するようになりました。

2高度経済成長期の光と影



地方物産品収集がおこなわれていた1960年代、天然素材を用いた手工業製品は、工程の機械化や化学合成技術の導入による代替素材・代替品の登場により日常用品からは姿を消してゆきます。一方、製法上の制約から工程の転換が進まなかった工芸品についても、国民経済の向上を背景に美術的付加価値をともなう高級商品として受容されてゆく動向がありました。

3時代の転換期



大学紛争の混乱による閉鎖の後、商品陳列館の運営は1973年に再開。その際、伝統的手工業製品(伝統的工芸品)を収集・展示する方針が採用されます。ポスト高度経済成長の混迷期において、商学部教員はなぜ伝統工芸に着目したのでしょうか? 1974年には当時の通商産業省が「伝統的工芸品産業の振興に関する法律」を制定するなど、国全体として伝統工芸が再評価される機運にあった一方、198090年代は伝統工芸の衰退に拍車がかかった時期でした。

4"現代"を映す伝統工芸



アカデミーコモン新博物館が2004年に開館し、教育研究体制も一新されました。近年では高い品質によって世界的な評価を受けたり、SDGsの「⑫つくる責任 つかう責任」「⑮陸の豊かさも守ろう」に象徴されるように、地球環境への負荷を低減し持続可能な消費形態を実現する上で、多品種少量・高付加価値という商品開発を宿命付けられていた伝統工芸に対する再評価の機運があらためて高まりを見せています。

 明治大学博物館ONLINEミュージアム「展示室をあるく」では、商品部門の展示室をご覧いただけます。(2024年1月までの展示内容です)