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宮腰哲雄『漆 学(うるしがく)-植生、文化から有機化学まで』



『漆 学(うるしがく)-植生、文化から有機化学まで』
宮腰哲雄著
四六判・上製・180ページ・本体2,500円+税
ISBN 978-4-906811-16-8
2016年3月刊行

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書評その他
・『明治大学広報』691号に書評が掲載されました。

内容紹介

あなたは漆が縄文時代から使われていたのをご存知でしたか? 漆器は身近な生活用品であり、さまざまな用途に使われてきました。また、化学的な特性からいっても、非常に興味深い材料です。本書は、太古からの漆の歴史から、世界的な植生の広がり、各国における多彩な漆文化、さらには漆器の科学分析、漆の合成、ナノ漆の開発など、研究の最先端までを一望する、まさに「漆学」大全と呼べる一冊です。

目次

はじめに

第1章 漆とは何か
 1 「ジャパン」としての漆
 2 漆の分布・植生
  植林・栽培/沖縄のウルシ,北海道のウルシ/ウルシ科の植物/海外のウルシ/ヨーロッパのウルシ
 3 漆の成分
 4 漆の採取
  ウルシの木に傷をつける道具と漆液の掻き取り法/漆掻きの時期/漆の評価

第2章 漆文化の広がりと歴史
 1 世界の漆
 2 日本の漆
  縄文時代の漆/中国の漆と縄文漆/近世の漆——タイ伝来の漆
 3 琉球の漆
  琉球の漆文化/琉球漆器に使われた漆/琉球の漆芸/現在の琉球漆器
 4 アジアの漆
  中国の漆の歴史と文化/韓国の漆の歴史と文化/東南アジアの漆芸
 5 ヨーロッパとの漆交流
  南蛮漆器、輸出および模造漆/漆器のもたらした影響
 
第3章 漆器の制作と加飾
 1 漆の種類
 2 漆塗り
 3 漆の加飾
 まとめ

第4章 漆かぶれとは何か
 1 漆かぶれ
  漆かぶれの防止法
 2 漆かぶれの化学
  感作と発症/漆かぶれ薬を作る 

第5章 漆の化学的性質
 1 漆液の成分組成
 2 漆液の乾燥・硬化
  漆の酸化重合反応/漆の自動酸化/漆の劣化/漆の熱重合
 3 漆液のハイブリッド化
 
第6章 漆の科学分析
 1 科学分析とは何か
  熱分解-GC/MS分析法/漆のクロスセクション法/蛍光X線分析
 2 縄文漆器の科学分析
  漆かアスファルトか/縄文漆利用技術の多様性/彩色土器の塗膜分析/木胎耳飾りの塗膜分析/サメの歯の膠着物の分析/飾り弓の塗装物の分析/漆とアスファルトの識別/土器内部にあった黒い塊の分析
 3 「朱漆楼閣山水箔絵盆」の分析
  「朱漆楼閣山水箔絵盆」の箔絵/分析試料と分析方法
 まとめ

第7章 合成漆の開発
 1 ウルシオールの合成研究
 2 天然型トリエンウルシオールの合成
 3 酵素重合型合成漆の開発
  不飽和側鎖をもつ3-アルケニルカテコールおよび4-アルケニルカテコールの合成/不飽和側鎖を有する4-アルケニルカテコールの合成/カシューナットシェルオイル(CNSL)を利用した4-アルケニルカテコールの合成
 まとめ

第8章 次世代の漆利用
 1 速乾燥性ハイブリッド漆の開発
 2 ワインレッド色漆塗料の開発
 3 ナノ漆の開発とインクジェットプリンターを利用した蒔絵製作法の開発
  漆液の微粒化分散/漆の耐光性向上研究
 4 漆を用いた防錆塗料の開発
  防錆塗料の開発と試験/塗膜の密着度試験

あとがき
索引

著者紹介

1945年新潟県生まれ。明治大学理工学部専任教授。明治大学工学部工業化学科卒業。工学博士。専門は有機合成化学,有機工業化学,漆の化学,機能性材料の合成。主な著書・論文に,『漆化学の進歩——バイオポリマーの進歩』(アイピーシー出版,共著),「漆の伝統技術のなかにある化学」『化学』61(化学同人),「漆と高分子」『高分子』56(公団社団法人 高分子学会)など。