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明治大学体育会柔道部(スポーツ編)

アメリカ遠征(1936年) 新入部員(2020年)

 

明大柔道部の歴史と伝統
 
 重松裕之(1982年度卒、明柔会副会長、元監督)
 
 1905(明治38)年、本学に柔道部が創設された。1905年といえば日露戦争に勝利し、我国が近代国家として漸く国際舞台に登場した時代であり、こうした時代背景の下で創部された柔道部の理想は脈々と今日に伝わっている。いま駿河台道場(10号館)には創部から現在までの部員の名札が掲げられており、その数1300余名。創部時の部員は12名と伝えられているが、今日に残る歴代部員の名札は伝統の象徴であり、我々の誇りである。
 我国初の大学対抗柔道大会は1924(大正13)年に開催され、本学は決勝で早稲田を破り優勝。時代が昭和に移ってからも同大会での度重なる優勝をはじめ、天覧試合、東西対抗戦など当時社会的な人気を誇った各大会で本学部員が多くの好成績を収めた。また、1931(昭和6)年と1936(昭和11)年には明柔会(柔道部OB会)の支援を得てアメリカ遠征を敢行するなど、明大柔道部の名は全国津々浦々に轟き、柔道を通じて内外に母校の名を大いに高めた。 
 1942(昭和17)年には太平洋戦争によって大会は全て中止となり、柔道部も活動停止を余儀なくされたが、1945(昭和20)年8月に終戦。戦地に在った部員たちも復学したが、占領下の当時、学校柔道の活動は禁止されGHQ(占領軍総司令部)の厳しい監視下にあった。当時の先輩たちはレスリング部と連携して「柔道着なし」の練習を重ねる一方、上級生たちはGHQ(スポーツ局課長:米軍大佐)に直接陳情を繰り返すなど学生柔道復活の中心的な役割を担った。当時の先輩諸氏の気概と行動力こそ、明大柔道部スピリットの証しと言えよう。
 1951(昭和26)年、学校柔道禁止令が解かれた第一回の学生選手権大会では本学主将が優勝し、以降、明大勢が4連覇。1952(昭和27)年に開始された第一回全日本学生優勝大会でも本学が団体優勝を飾り、3連覇。その後、1961(昭和36)年からの4連覇、1971(昭和46)年からの連覇をはじめ本学柔道部の活躍は他校の追随を許さず戦後昭和の黄金期を迎えた。昭和50年代後半には優勝から遠ざかる低迷期もあったが、1991(平成3)年には19年ぶりの復活優勝から連覇を果たすなど、平成時代にも6度の団体優勝を重ねた。令和時代の団体優勝が待ち望まれる。
 さて、柔道部における学生とOBの緊密な連帯という伝統についても触れたい。近年においては本学の体育会強化への取組みは大きく前進しているが、部の年間予算のほぼ全額をOBの年会費と寄付によって賄った時代が長らく続いた。創部90周年事業として合宿所を建て替えた際には明柔会が一億円余りの寄付を集め負担した。明柔会は今後も後輩達への支援を怠らないが、大学には強化策の更なる改善をお願いしたい。そして現役部員達の一層の奮起によって、「強い明大柔道部」という伝統が堅持されることを強く望む。
 創部以来連綿と輩出してきた数多の名選手や多くの良き指導者、また変遷するそれぞれの時代において功績のあったOB諸氏の氏名を列挙する余裕はここには無い。あえて象徴的な存在を挙げるとすれば、師範として、また明柔会会長として学生、OBを長らく指導してこられた姿節雄九段であろう。師範は1999(平成11)年に病を得て亡くなられたが、病床に在る時、当時の吉田監督以下選手達が獲得した優勝旗を手にお見舞いできたことが、我々にとってせめてもの慰みとなった。
 下表にはオリンピック、世界選手権、全日本選手権の優勝者のみ記載した。その他の全国、国際レベル各大会での優勝記録などは、「創部百年史」「創部百十年記念号」を参照されたい。

明柔歴代のチャンピオン
 曽根 康治 全日本選手権(1958年)、世界選手権(無差別級:1958年)
 神永 昭夫 全日本選手権(1960年、1961年、1964年)
 中谷 雄英 オリンピック(軽量級:1964年)
 坂口 征二 全日本選手権(1965年)
 篠巻 政利 全日本選手権(1970年)、世界選手権(無差別級:1969年、1971年)
 須磨 周司 世界選手権(重量級:1969年)
 川口 孝夫 世界選手権(軽量級:1971年)、オリンピック(軽量級:1972年)
 上村 春樹 全日本選手権(1973年、1975年)、世界選手権(無差別級:1975年)、オリンピック(無差別級:1976年)
 小川 直也 全日本選手権(1989年~1993年、1995年、1996年)、
       世界選手権(無差別級:1987年、1989年、1991年)(重量級:1989年)
 吉田 秀彦 世界選手権(90 kg級:1999年)、オリンピック(78kg級:1992年)
 秀島 大介 世界選手権(71kg級:1995年)
 園田 隆二 世界選手権(60kg級:1993年)
 阿武 教子 全日本女子選手権(1993年~96年、1999年)、
       世界選手権(72kg級:1997年、78 kg級:1999年、2001年、2003年)、
       オリンピック(無差別級:1976年)
 棟田 康幸 世界選手権(100kg超級:2003年、無差別級:2007年)
 泉   浩 世界選手権(90kg級:2005年)
 上川 大樹 世界選手権(無差別級:2010年)
 海老沼 匡 世界選手権(66kg級:2011年、2013年、2014年)