2024.7
校友の力で鉱脈の掘り出しを!
学校法人明治大学学務担当常勤理事
明治大学史資料センター運営委員
明治大学史資料センター運営委員
小西德應(政治経済学部教授)
「高い山の下には良い鉱脈がある」。江戸末期には廃れてしまっていた足尾銅山を買うことを決め際の古河市兵衛の言葉である。言葉通り、買収後数年で良い鉱脈を掘り当て、日本一の産銅量を誇るようになり、のちの古河財閥を築くにいたった。
あらためて言うまでもないことだが、「明大山脈」には素晴らしい業績を挙げた校友が名を連ねており、後に続く者たちに大きな励みと誇りを与えている。今後も引き続き山脈に多くの校友の事績を加えることが望まれるし、そのためにも資料発掘や、存命の方であれば積極的な聞き取り等による資料収集が必要である。
ここで、多くの校友と話したり、校友会を訪れたりしてきたことで感じたことがあるので記しておきたい。それは、今は「山脈」と認識されていないものの、多くの鉱脈が眠っていることに改めて驚かされたということだ。「明大山脈」の中で私が主に担当している政治家について見てみると、首相や大臣、国会議員になった人々以外にも、首長や議長、議員として長年に地方政治に携わり、地域の活性化に努めてきた人たちが多い。その視点に立てば、本学校友で知事になった人はごくわずかだが、副知事として活躍した人は少なくない。また、地域の代表的企業の創業者や後継者としてなど、地域経済をけん引した人も多いし、地域でユニークな取り組みをした校友も多数いる。そうした人々の多くは、日常生活により密接に関わる仕事をされており、身近に感じられる存在であり、同時に、学生にとっては「なりたい自分」を、若い校友にとっては目指す「ゴール」を、より具体的に、そして積極的にイメージできる対象になり得る。
しかし、私自身が経験してきたことを振り返れば、本学はこれまで「山脈」に名を連ねる人でさえもほとんど大学に招いたことがない。「知っている人だけが知っている」状況では、「山脈」と大学、学生たちとの接点は極めて少ない。そのような中では、様々に活躍している校友を「鉱脈」として認識する機会はいっそう少ない。今後は、ぜひとも学生・校友の眼に触れ、積極的に接点を増やすようにしていくことが望まれる。
とはいえ、歴史をさかのぼったり、新たに聞き取りをして、それら校友の事績を発掘することは容易ではない。優れた校友が日本全国だけでなく、アジアを中心に全世界に散在している現状ではなおさらである。現在の大学史資料センター運営委員のマンパワーだけでそうした発掘をする作業は不可能と言ってよい。
そこで、校友会や校友本人からの紹介文を募ることを提唱したい。各地域に住む校友が優れた活動をしている方々を紹介したり、場合によっては、本人、その人の知人や研究者らが寄稿してくれることで、より多くの鉱脈を発見することにつながる。そうすることで、鉱脈どうしの化学反応も期待できる。仮に「鉱脈」や「山脈」に対するヒアリングや紹介文は個別のものであっても、執筆者はもちろん、存命の「鉱脈」が一堂に会する場面を多く設定することで化学反応が起こり、より魅力を発する鉱脈に変わり、さらなる明大山脈を形成することが期待される。さらにはそうした校友の姿を現役学生・校友に見せることで、それらの人々が次代の鉱脈、山脈となることを期待したい。