①竹むら外観
②千代田区マップ
③千代田区マップを制作した博物館学生広報アンバサダー
2024.10
連続テレビ小説主人公・寅子たちの溜り場モチーフ「竹むら」
明治大学史資料センター運営委員
市川園子(学術・社会連携部博物館事務長)
NHKの2024年度前期連続テレビ小説(いわゆる「朝ドラ」)「虎に翼」をご覧になった明治大学関係者は多いと思う。ご存じのように、明治大学史資料センター所長・村上一博教授が法律監修をつとめ、当センターが資料協力にあたった。
放送開始の一年前、2023年初夏にドラマ制作スタッフである石澤かおるプロデューサーから、朝ドラ必須の「関係者がなぜかよく集まる」喫茶店的なものとして、大学近くの甘味処をイメージしているとのご相談を受けた。物語の時代設定から考えても、揚げまんじゅうで有名な「竹むら」一択だった。事前にお店には、主人公が通う大学のモデルが明治大学であり、主人公たちの放課後の溜り場モチーフとしてNHKに紹介する内諾をいただき、その後大学とNHKのスタッフで大挙したのだ。この時は、ドラマの最終回まで舞台になるとは思ってもいなかった。
NHKの皆さんがドラマのための情報収集を行う中、筆者も質問しつつドラマを起爆剤にした地域連携活動の可能性を探った。その一つが博物館広報アンバサダー制作の「千代田区マップ」であり、三淵嘉子さんが大学に通っていたころから大学周辺にある老舗店7軒や名所などを掲載した。マップはドラマ放送開始後に読売新聞、朝日新聞、NHK「おはよう日本」などのマスメディアに取り上げられたことで増刷するほどの大きな反響を呼んでいる。さらに8月にはNHK「あさイチ」の「愛でたいnippon 「虎に翼」ゆかりの街/お茶の水・神田」の中で、ドラマ終了直後には他局であるテレビ朝日「グッド!モーニング」の「グッド!いちおし」コーナーでも紹介された。
さて、「竹むら」堀田正昭社長のお話から、兄である2代目社長の故堀田喜久雄氏は中学から明治で、商学部産業経営学科卒業と伺った。OBである喜久雄氏との対面が叶わないのは残念であるが、ここでも明治の校友山脈の分厚さに驚く。喜久雄氏は父である初代社長から経営を担うことを期待されて商学部に進学され、2000年に東京都選定歴史的建造物に指定された神田須田町のあの入母屋造りの建物から、昭和30年代に和泉校舎と駿河台校舎へ通われていた。車好きで卒業後は自動車会社に勤務された後、30代前半で家業を継承され、現社長とともに老舗甘味処を作り上げた。
ドラマの「竹もと」のモチーフとなった「竹むら」の初代社長は、今は店仕舞いした本郷の名店「藤むら」で修行され、そのあんこレシピが引き継がれている。「藤むら」は加賀藩主2代目前田利常から、羊羹の絶品の味と格調高い藤紫色を称えられ、店名を賜り、名字帯刀を許され、加賀藩の御用菓子司になった。江戸時代中期には藩主の命により金沢から移転し、永く「本郷に藤村あり」と、江戸市中にその名声を謳われる菓子舗だった。「竹むら」の店名は、「竹」のようにすくすく成長するようにとの願いと、藤むらの「むら」に由来するとのことである。
今回は「虎に翼」三淵嘉子企画展事業の編集後記のようであるが、OG三淵嘉子さんがモデルとなったドラマを縁とした明治繋がりから大学の地元で活躍されたOBの軌跡を紹介させていただいた。