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第19週「悪女の賢者ぶり?」振り返りコメント

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2024.8
第19週「悪女の賢者ぶり?」を振り返って
 
明治大学法学部教授、大学史資料センター所長/図書館長
村上 一博

 第19週は、寅子と航一の距離が次第に狭まっていき、そしてついに・・・という筋書きがメインでした。優三を想いながらも、航一に惹かれていく寅子。「星さん、お母さんのことが好きなのかな」という優未の呟きにうろたえて、「優未が嫌な気持ちになることは絶対にしないから」と自分の気持ちを吹っ切るように言い切る寅子。これに対して、溜息をつきながら「あのさ、お母さん。私のせいにしたりしないでね・・・お母さんが、誰のことを好きでも嫌いでもいいけど私のせいにしないでって言ってるの」という優未の大人びたセリフには驚きました。優三が戦地に持って行ったお守りの中に入っていた遺書、自分が死んだ後の寅子と優未の幸せを願う優しさには、久しぶりに泣かされましたね。寅子は、優三への思慕と罪悪感、航一への気持ちに揺れ動き、戸惑いながら、ついに決断を下すのでした。どのような決断か、これは、次週のお楽しみです。

 裁判所事務官である高瀬雄三郎と小野知子の、恋愛感情のない「友情」結婚という問題も起こりました。世間体を気にして毎日のように両親から見合いを進められている小野と、結婚しないと半人前だと世間から見下されている高瀬とが、愛情なしに、いわば「社会的地位」のために結婚するというのです。寅子は、自分自身の反省から、「慎重になった方が良い・・・この先も、本当にこのままの関係でいられるのか、本当に向いている方向が一緒なのか、本当に相手の人生を背負えるのか」を考えた方が良いと忠告します。寅子にしてみれば、弁護士として一人前に活動するという目的のために、既婚者・夫婦という社会的位置を得たいという身勝手な思いから、優三の気持ちを慮ることなく結婚してしまった、優三の優しさに付け込んで「搾取」してしまったという自責の念から出た言葉でした。しかし、結局は、二人が思うように、納得できる道を探すほかないという結論に至った寅子でした。

 今週も、梛川善郎さんの演出の妙が、そこかしこに見られた一週間でした。
 私が印象に残っているのは、まず、帰宅した寅子が花江と再会するシーン。花江の突然の来訪に驚いた寅子は、いつもの幻想ではないかと花江を突っついていましたね。そして、幻でなく本物だと確認すると、抱き合って喜びました。心底、嬉しそうでした。寅子・優未・稲・花江の四人の団欒も実に楽しそうで、突然歌い出した稲の「砂山」が上手だったのにもビックリです。

 もう一つ、森口美佐江が登場するシーンは、ゾッとする瞬間の連続でした。ライトハウスにランチにやってきた航一と寅子が、勉強する美佐江と友人の男子(赤い腕飾りをしている)を見て、美佐江の不気味さに恐れを抱いたとき、二人の様子をチラ見してニヤリと笑う美佐江、背筋が寒くなりました。また、図書館帰りの優未が裁判所にやってきて、美佐江と遭遇したとき、寅子がとっさに優未を抱き寄せたのも、演出の妙でした。新潟市内で、赤い腕飾りをした少年少女の犯罪が頻発、美佐江がその事件に深く関わっているのではないかという疑惑が濃厚でした。寅子は美佐江に、真相を話すように促しましたが、美佐江は事件との関係を否定、さらに続けて「佐田先生は心から納得した答えが出せます? どうして悪い人から物を盗んじゃいけないのか、どうして自分の体を好きに使ってはいけないのか、どうして人を殺しちゃいけないのか」と問いかけます。さらに、寅子が「答えが欲しくてやってるってこと?」と尋ねると、美佐江は「やっている? 何をですか?」とさらりとかわし、「心から納得できれば、きっとすっきりするんでしょうね」と微笑んで、支部長室を出て行ったのです。そこに、図書館帰りの優未がやって来て、寅子に「お母さん」と声をかけたとき、優未を美佐江に近づけまいとして、寅子が咄嗟に(本能的に)優未を自分のほうに引き寄せたのですが、これを見た美佐江は、悲しげで失望したような複雑な表情を浮かべて、その場から立ち去ったのでした。今週の時点では、美佐江は犯罪の背後に見え隠れしながらも、最後まで尻尾を出すことなく、東京大学への進学が決まったという筋書きでした。この先、どうなっていくのか、注目ですね。

 細かな演出では、杉田太郎・次郎の弁護士兄弟が、部屋を出ていくとき、いつも兄が先に出て行って戸を閉めてしまい、弟は照れくさそうに、兄の後を追うというシーンが二度三度と繰り返し出てきました。桂場が、団子を食べたいのに食べられないシーンと共通する、視聴者の笑いのツボをくすぐる絶妙な演出でした。
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