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マンガ・アニメ・ゲーム・フィギュアの博物館学

→終了いたしました。多数のご来場ありがとうございました。



日時:2009年11/7(土) 15:00~19:00 
場所:明治大学駿河台キャンパス リバティタワー 1F リバティホール
主催:明治大学人文科学研究所
受講料無料,事前申し込み不要



 明治大学では,2009年10月31日に,マンガとサブカルチャーの専門図書館となる「米沢嘉博記念図書館」が開館します。そして同館を全体計画の第一歩とし,数年をかけて,マンガ・アニメ・ゲーム・フィギュアなどの複合的なアーカイブ施設となる「東京国際マンガ図書館」(仮称)を設立すべく,計画を進めています。
  計画の背景の一端には,政府が近年,「コンテンツ産業」や「ポップカルチャー」に注目し始めたことがあります。もっとも,その視線は,海外から評価される作品や,全体の上澄み偏る傾向があります。しかし,日本におけるそうした文化の独特の力は,むしろ,他国にはない広大な支持層が,同人誌やガレージキットなどの形で自ら作り手としてコミットできる「場」の存在によって大きく支えられているのです。
  今回の公開講座では,「米沢嘉博記念図書館」の開館を記念すると同時に,「東京国際マンガ図書館」(仮称)の計画の深化へ向けて,同人誌界とガレージキット界,それぞれの場の成り立ちや文化圏の特質,現状を俯瞰し,理解を深めると同時に,あるべき複合施設のヴィジョンを浮かび上がらせたいと思います。

公開文化講座開催委員会委員長
明治大学国際日本学部准教授 森川 嘉一郎

「ガレージキットとワンダーフェスティバルの成り立ち」

宮脇 修一 株式会社海洋堂代表取締役

模型趣味には、「ガレージキット」と呼ばれる分野があります。これは、既製のプラスチックモデルに飽きたらず、モチーフやクオリティにこだわるマニアたちが、自分自身で造りあげた原型を型取りして複製し、その価値を理解・共有することができる仲間に頒布する営みです。これは日本において、とりわけアニメやゲーム、特撮の領域と結びつき、「ワンダーフェスティバル」を始めとする大規模な発表・頒布の場を形成しました。そして、そこで培われたさまざまな技法や様式は、マニアのガレージを越え、全国のコンビニの棚を賑わせるブームとなった食玩の造型表現につながることとなります。さらに、村上隆氏を始めとする現代美術家をインスパイアしたり、国内外で展覧会が催されたり、展示施設が設立されるようになるなど、その文化的遺伝子はさまざまな展開を見せています。
そのような発展の現場にいた立場から、その歴史と現況をお話しします。
略歴:1957 年大阪府生まれ。造型企画制作会社海洋堂の専務、後に代表として、『チョコエッグ』や『タイムスリップグリコ』を始めとする食玩の企画制作を展開するとともに、世界最大のガレージキットの展示即売会「ワンダーフェスティバル」を主催。

主要著書:『造型集団海洋堂の発想』光文社、2002年。

「同人誌とコミックマーケットの成り立ち」

安田 かほる コミックマーケット準備会共同代表
筆谷 芳行  コミックマーケット準備会共同代表
市川 孝一  コミックマーケット準備会共同代表
 
今、日本では年間で約1,800もの同人誌即売会が全国各地で開催されています。マンガやアニメ、ゲームなどのファンが、同好の仲間とサークルを結成し、見よう見まねで好きな作品を題材にしたマンガを描いたり、オリジナル作品を作ったりして、それを同人誌にして頒布しています。その中でも最大の同人誌即売会であり、幅広く多様なジャンルのサークルが集う「コミックマーケット」では、毎回3日間で約35,000サークルが自ら発行する同人誌を展示頒布し、のべ55万人が参加します。1970年代後半からこのような即売会が急拡大したことが、日本で、自らマンガを描いて交流する歓びを知る人々の層をぶ厚くすると同時に、プロの作家となっていく人々や商業ベースとは別のオルタナティブな表現を育む土壌にもなってきました。ここでは、日本のマンガ・アニメ・ゲーム文化の一つの縮図としての側面、そしてインフラとしての機能を中心にお話ししたいと思います。
略歴:世界最大の同人誌展示即売会「コミックマーケット」を運営する準備会のボランティア・スタッフを務める。2006年9月より三名共同の形で同準備会共同代表となる。

主要著書:『コミックマーケット30'sファイル 1975-2005』(編著、コミケット、2005年)。

「マンガの国際・学際的状況」

藤本 由香里 明治大学国際日本学部准教授

 現在、日本のマンガが世界中に広がりつつある、というのはよく耳にします。しかし実は日本はマンガに関しては世界でも珍しいくらいの鎖国状態の国で、他の国にはマンガ文化は存在しないかのように思っている人が多いのですが、実際には、世界にはさまざまなマンガ文化が存在し、出版形態も、また流通形態もそれぞれに違います。その中での日本マンガの受容のされ方も、国によってそれぞれ。それこそ隣の国でもまったく違ったりするのです。では、本当のところ、世界的に見ると、日本のマンガ、そしてアニメはどう位置づけられているのでしょうか。また、日本では顕著な発達を遂げている「同人文化」は、世界の他の国にもあるのでしょうか。それはどう位置づけられているのでしょう。
  世界的にさまざまな変異と広がりを持つ、マンガ・アニメ文化の実際と、その中で日本のアーカイブが果たすべき役割を探ります。
略歴:
1959年熊本生まれ。07年まで筑摩書房で編集者として働く傍ら、コミック・女性・セクシュアリティ・社会風俗などの評論を続ける。08年4月より現職。手塚治虫文化賞・講談社漫画賞選考委員。日本マンガ学会理事。

主要著書:『私の居場所はどこにあるの?』(1998年学陽書房、08年朝日文庫)、『快楽電流』(1999年、河出書房新社)、『少女まんが魂』(2000年、白泉社)、『愛情評論』(2004年、文藝春秋)等。

「マンガ・アニメ・ゲーム・フィギュアの博物館計画」

森川 嘉一郎 明治大学国際日本学部准教授

117億円を投じて「国立メディア芸術総合センター」を建てるという計画が、「国営マンガ喫茶」「アニメの殿堂」などと揶揄され、政争の材料として取り沙汰されたことは記憶に新しい。そうした批判の当否はさておき、マンガ・アニメ・ゲームなどのサブカルチャーを、まとまった形で収集・保存する機関の必要性については、これまで、さまざまな提起がなされてきました。明治大学では現在、大学全体の取り組みとして、世界最大級となる漫画・アニメ・ゲームのアーカイブ施設を準備しており、今年10月にはその先行施設となるマンガとサブカルチャーの専門図書館、「米沢嘉博記念図書館」を開設して計画を推進しています。その計画の経緯や現状を報告するとともに、既存のさまざまな施設の取り組みや、サブカルチャーの展示運用に関する議論を取り上げ、文化的な意義や問題点などを含め、多角的に展望を描きたいと思います。
略歴:1971年生まれ。専門は意匠論。早稲田大学大学院修了(建築学)。2004年ヴェネチア・ビエンナーレ第9回国際建築展日本館コミッショナーとして『おたく:人格=空間=都市』展を制作(星雲賞受賞)。
主要著書:『趣都の誕生 萌える都市アキハバラ』(幻冬舎、2003年)、『建築・都市の現在』(共著/東京大学出版会、2006年)など。