ジェンダー法センター長 菊地 一樹
ジェンダー法学は、ジェンダー(文化的・社会的性差)の視点から法学や司法に内在するジェンダー・バイアス(性に由来する偏見・固定観念)を批判的に分析し、再構築を試みる新たな学際的学問です。
明治大学には、日本の女性法曹を多数輩出してきた長い歴史と伝統があります。2004年、司法制度改革の一環として創立された明治大学法科大学院においても、「ジェンダーと法」は展開・先端科系科目として8コマが開講され、多くの受講生を迎え、ジェンダー・センシティヴな法曹の育成に大きく貢献してきました。
その後、2018年には法科大学院が専門職大学院の法務研究科へと改組され、学生数も縮小しました。2020年には専任教員にジェンダー法の専門家がいない状況となりましたが、法務研究科の執行部、教授会構成員、そしてジェンダー法を専門とする外部の実務家の皆様のご理解とご支援を受け、「ジェンダーと法」はオムニバス科目の形式で継続され、現在も専門法曹養成におけるジェンダー法学の重要な担い手となっています。
本ジェンダー法センターは、法科大学院開設2年目にあたる2006年、ジェンダー法学の先駆者である角田由紀子先生(元本学教授・弁護士・センター顧問)により設立されました。その後、角田先生の定年退職にともない、憲法・ジェンダー法の専門家である辻村みよ子先生(元本学教授・弁護士・センター顧問)がセンター長を継承され、さらに辻村先生の定年後は、清野幾久子先生(本学名誉教授・憲法学)、野川忍先生(本学名誉教授・労働法学)へとセンター長職が引き継がれ、それぞれが力強いリーダーシップを発揮されました。
本センターは、専門性を堅持しつつ、「ジェンダーと法」の講義との連携を強化することで、研究の広がりを確保してまいりました。あわせて、センター員による研究成果や活動をさらに充実させ、修了生への継続教育を含め、多様なコンテンツを外部へ発信する体制を確立し、研究・教育の両面において活動を活性化させてきました。
また、2020年初頭からの新型コロナウィルス感染症の流行という未曾有の状況にあっても、オンラインを駆使して活動の継続を最優先とし、この危機を乗り越えるとともに、現在もなお力強く活動を展開しております。
本センターは、日本初の「ジェンダー法センター」として発足し、これまで数多くの研究者や実務家が集い、交流と協働の場としての役割を果たしてまいりました。2025年に野川先生が定年退職されたのち、私、菊地がセンター長を引き継ぐこととなりました。今後とも本センターがさらに発展し、明治大学の学生・修了生のみならず、広く社会に開かれた学術的・実践的な拠点となるよう、尽力してまいります。
引き続き、皆さまの温かいご支援とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
(2025年5月21日)