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2024学部ガイド座談会

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五感すべてで 現地の空気を感じる留学経験

——コロナ禍の時代における、留学や国際性についての考えをお聞かせください。

施 利平 教授


:私の専門はアジアの家族社会学でアンケート調査なども可能ですが、やはり現地でのフィールド調査は必要だと感じています。また、学生にとっても、オンラインで日本にいながら海外の授業が受けられるようになったのは大きなメリットですが、実際に海外に行って過ごしてこそ、得られる気づきがあります。

南後:私も海外で生活し、研究対象である建築家やアーティストたちが、どんな街並み、気候、文化のなかでから創作をしていたのかを肌で感じることができた経験があります。現地で日常生活を送ることを通じて、明文化されていない様々なことに触れる機会は貴重です。

須田 努 学部長


日置:私の専門は江戸時代末期から明治時代の日本演劇ですが、日本文学や文化の領域には、日本国外にも多くの研究者がいます。しかし、最近では彼らの中には日本への留学経験のない人も多くなっています。オンラインで世界中どこからでも様々な資料が閲覧できる昨今では、かつては理論が先行しがちだった欧米の研究者でも、斬新かつ実証的な優れた成果を挙げている人が少なくありません。そうした中で、日本にいる私たちにしか打ち出せない研究とは何だろうかと常々考えています。教育面の話をすると、学生の中には「日本人だから日本について知らなければならない」という人がいますが、ただ知識を身につけて終わってほしくはありません。ではその「日本人」とは何なのか、「日本文化」とそれ以外の文化の境目はどこにあるのか、といったことを自分なりに考えてほしいと思っています。

須田:私の専門は日本史、その中でも民衆暴力をテーマにしていますが、研究ではフランス革命やイギリスの宗教対立など他の国と比較しないと見えないこともあります。そのため、コロナ禍前に数々の民衆暴力が起こった土地を訪れました。北アイルランドのベルファストでは、未だにカトリック教徒とプロテスタント教徒の地区間に大きな壁があり、現代でも緊張状態にあることがうかがえ、日本では理解しにくい宗教対立の問題を考えさせられました。現在、情コミでは「ミッション遂行型現地留学」といって、学生が自ら目的を持ち、それを叶えるための留学制度の整備を進めています。まずは、授業を通し、学生に具体的な留学の目的を持ってもらおうと考えています。その後、海外で専門的な知識を吸収するとともに、その国の文化や環境にも触れてほしいです。ドイツで社会学を学び、現地の人と会話し、その国の料理を食べてみるといった、語学習得にとどまらない重層的な留学を支援したいと考えています。
 

——学生の皆さんはどのように考えていますか。

村上 詩歩さん(4年)


村上:私の研究対象は「日本の傷痍軍人の妻」ですが、他国と比較しながら研究を進めていきたいので、大学院進学後に留学を考えています。第一次世界大戦後のドイツ、ベトナム戦争後のアメリカなどは傷痍軍人の数も多いので、現地の研究規模も大きいです。周囲の人たちが彼らやその家族をどんな視点で見ているのかを、留学を通し、肌感覚で学びたいです。

佐々木:留学は、自分の興味のある分野を見つけるきっかけになると思います。高校時代に留学を経験し、授業で新聞記事を書いたり、演劇について学んだりしたことがあり、新鮮でした。情コミの留学制度を活用し、海外の学校ならではの学びや多様な背景を持った人との交流に刺激を受けて、将来の方向性が定まる人もいるはずです。

ジャヤビクラマ:私の場合、父がスリランカ人で母が中国人なので国際性は身近なテーマです。グローバル化が進むにつれ、社会が抱える問題も多様で複雑化しています。それらの問題解決には多面的な知識やものの見方が必要になるので、留学で見聞を広めるだけでなく、情コミでの学際的な学びもきっと役に立つでしょう。

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