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情報化ビジョン詳細

背景と位置づけ

 今日,大学において教育,研究,各種業務を実施するうえで,コンピュータ,情報端末,通信ネットワーク抜きに進めることはできなくなっている。本学では,1990年代に各種情報システムの整備に着手し,それ以降,ITを利用する業務領域は着実に拡大してきた。近年では,インターネットの急速な普及とそれを背景としたサービスや端末の発達により,日常生活,社会環境の中でのITの重要度も高まっている。企業ではITの利活用やデジタル革新が業績の浮沈を分ける重要な経営課題となってきた。
 大学においても教育,研究さらには大学経営の中でITの利活用を適切に進めていく必要がある。大学を取り巻く環境も変化しており,対応すべき課題が山積しているが,AI時代に対応した人材育成,教育の質保証,事務効率化とコスト削減,エビデンスベースの大学経営多くの課題でITが実現の鍵を握っている。
 このような背景を踏まえ,本学は『明治大学情報化戦略』を策定した。本情報化戦略は,今後ITが果たすべき将来像を情報化ビジョンとして示し,その実現に向けての施策を掲げ,それらを実行していくためのプログラムとロードマップへの流れを取りまとめたものである。情報化戦略の推進により,長期ビジョン,グランドデザイン,中期計画の実現を支援することを目的としている。情報化戦略を策定するうえでは,現状のITの利用・運用・開発・管理における問題をレビューするとともに,長期ビジョン,グランドデザイン,中期計画で掲げられた将来像,施策でITが果たすべきものを明らかにした。
 本情報化戦略は,次期長期ビジョン・中期計画のIT関連箇所策定の基礎となる。また,プログラム,ロードマップに関しては,長中期計画書,単年度計画書策定の指針となるものであるが,環境変化,進捗に照らしながら詳細化されることを想定している。

情報化戦略のビジョン体系

 情報化の役割は,法人・大学の運営を支えることであり,その最終的なミッションは,「長期ビジョン・グランドデザイン・中期計画の実現支援」である。
 情報化のあるべき機能・役割を情報化ビジョンとして策定するにあたり,本学の情報システムをマネジメント・基盤系・コミュニケーション系・教育系・研究系・法人系の6つの領域に分類した。マネジメントは情報化ビジョンを遂行・実現するための管理制度・組織体制・人材を対象とし,基盤系・コミュニケーション系は,ネットワークやデータベース等の基盤的役割を担う情報システム,教育系・研究系・法人系は,教務事務システムや財務システム等の各部門が利用・活用する情報システムを対象としている。マネジメントをベースとし,情報化のミッションを達成するために各領域で実現すべき情報化ビジョンの体系を下図に示す。
 次章では,マネジメントから法人系までの各領域について,情報化ビジョンの詳細及び実現に必要な施策についてまとめた。

情報化ビジョンと施策

1. マネジメント

(1) CIOによる情報化戦略策定とITガバナンスの推進

 システムを含む情報環境整備への投資は,本学の学修活動・教育研究活動・日常業務の遂行だけでなく,法人経営・教学のビジョン実現に大きく寄与する要素の一つである。 情報化戦略の統括責任者である情報担当理事(CIO)のもと,情報化戦略策定とITガバナンスを推進する。併せて,ITに対する本質的な理解と中長期的な見通しを持ち,法人の長期ビジョン・教学のグランドデザインと連携,整合させた本学の情報化戦略を策定し,その実施を管理する(施策①)。
 また,情報化戦略に基づくプログラムおよびプロジェクトの策定,実施,管理を統括するために,CIO支援の体制を強化する(施策②)。そしてこれらを実現するために,情報化戦略策定・調整・監理のための機関横断的な体制を整備し,各情報関連機関(情報基盤本部,教育の情報化推進本部,ユビキタスカレッジ運営委員会等)との連携を強化する。
 これにより,本学の情報化戦略を推進するとともにIT投資の最適化を実現していく。

(2) 組織全体の観点から業務改革とIT改革を連動させる推進体制

 現状の業務にあわせてシステムを構築,カスタマイズすることで,業務の効率化が進まず,運用保守にかかる負荷やコストが増大してしまう傾向にある。
 ITを導入する際は,経営層の強いコミットメントとともに,組織全体の観点から業務改革とIT改革を連動させる推進体制を構築し,運用することで,業務フローの見直しおよび業務の標準化を推進し,パッケージの活用とカスタマイズの削減を行う。推進体制として,業務・IT両部門を横断したプログラムおよびプロジェクトを導入する(施策③)。並行して情報部門においても,ルーティン業務の外注化やサポートデスクの活用など,部門内の業務効率化を推進する(施策④)。
 これにより,IT導入のコストや運用管理の負荷を軽減させ,業務全体の効率化やIT導入効果の最大化を図っていく。

(3) IT人材の育成

 高度化するIT環境を管理・維持・整備していくためには,ネットワーク,セキュリティ,データベース等の基盤技術を持つ人材(基盤技術担当者)とともに,システム全体設計(アーキテクチャ)を描くことができる人材(システム全体設計担当者)の確保が必要となる。一方,業務システムを運用していくには,各部署に教務,財務,人事等の業務知識とともにIT知識を併せ持つ人材(業務システム担当者)が配置されていることが望ましい。
 情報部門内で基盤技術担当者およびシステム全体設計担当者のキャリアパスを明確にして専門性を高めるとともに,業務システム担当者の育成を図る(施策⑤)。
 これにより,大学全体のIT能力の向上を実現していく。


2. 基盤系

(1) システム全体の最適化

 本学のシステムは,数十年かけて順次システム化されたものであり,現在も引き続き進化を続けている。構築形態はスクラッチ開発からパッケージの一部カスタマイズ等に至るまであり,さらに近年では一部クラウドサービスの導入も行われ,その多様な形態により運用管理コストも増大し続けている。
 今後は,既存システムを含めて全体を俯瞰した設計と更新計画を行い,現状の更新のタイミングやシステム間の区分けにとらわれず,機能および提供サービスを精査するとともに,最適な分割・統合を検討して実現していく(施策①)。
 これにより,管理運用コストの最適化とシステムの進化を同時に実現していく。

(2) 大学資産としてのデータ蓄積と活用支援

 データは組織の共有財産である。システムに利用されるデータは,継続性をもって蓄積していくことが重要である。
 大学のあらゆる活動をデジタル化し,データとして蓄積して,必要な時に取り出せる環境を整備する(施策②)。データの蓄積領域については,オンプレミス型とクラウドサービスを適切に使い分け,安全かつ効率的な管理を行っていく。蓄積データについては,プライバシーや個人情報保護等,学内外の各種法令を順守し,安全に提供できる仕組みを整備する。データの利活用にあたっては,システム的な権限制御のみでなく,利用ルールの定義と利用者教育を含めた周知活動を強化していく。
 これにより,データが教育・研究・業務のさまざまな場面で有効に活用されることを支援していく。

(3) システム間連携・データ共有の最適化

 導入時期やパッケージの異なるシステム間でのデータ連携は,一部手動やオフラインによるものがあるため,障害発生リスクや運用コストの増大につながっている。
 マスターデータを一元化し共有データベースを整備して,システム間のデータ連携を可能な限り自動処理とする(施策③)。また,システム間の接点となる共有データベースは,適切な管理と計画的な運用を行う。
 これにより,障害発生リスクと運用コストの低減を目指していく。

(4) 迅速なサービス導入および可用性・拡張性の高いシステム環境の実現

 オンプレミス型中心で構成されるシステムでは,定期的な機器更新やカスタマイズのコスト,管理リスク等の問題を内包する。
 今後は,可用性,導入の迅速性,スケールアウトの容易性等の観点からクラウドサービスを併用する。ただし,クラウドサービスにおけるサービスの継続性の問題,長期的な利用に伴うコスト,ベンダーロック等,デメリットとなり得る点も十分に考慮し,大学サービスとして,オンプレミス型とクラウド型との間で適切な選択をする。併せて,クラウドサービスへの移行を含む移植性および耐障害性の観点から,システムの仮想化を推進していく(施策④,⑦,⑧)。  これにより,可用性・拡張性の高いシステム環境で,適切なサービスを迅速に提供することを実現していく。

(5)  柔軟なネットワーク環境による多様な利用シーンの支援

 ネットワーク環境は,オンプレミス型システムに加え,クラウドサービスの活用や,利用者のさまざまな端末,あらゆる場所からの接続等,多様化する本学構成員のニーズを満たすことが必要である。またニーズ多様化の一方で,ネットワークを介したセキュリティリスクも増大している。  今後は,ゼロトラストの考えに基づき,柔軟かつ高いセキュリティを維持できるネットワーク環境を構築する必要がある(施策⑤)。そのため,本人認証,サービス認可,アカウント管理等,認証に伴う各種機能ごとに高度化を図る(施策⑥)。  これにより,本学構成員が安全安心に,多様なニーズに即したさまざまな情報サービスを利用できるよう支援していく。

(6)  セキュリティおよびリスク対策の継続的強化による安全安心なシステム環境の提供

 標的型攻撃メール等,サイバー攻撃は増加する一方であり,セキュリティ監視の高度化は重要性を増している。
 教育の場におけるBYOD等新たな利用形態や新しい技術に対して,セキュリティ対策,リスク対策を継続的に強化するため,体制とルールの整備,そして利用者の教育を行う(施策⑦)。また,基幹業務においては,事業継続性の観点から,システムの重要度に基づき,システムを適切に冗長化し,災害・サイバーテロ・パンデミック等の発生時,システム障害ならびに破損に対して,必要な通知を行うとともに速やかにシステムの復旧が可能なシステム構成およびBCPを整備する(施策⑧)。併せて,災害時の安否確認ができる環境を整備する。
 これにより,安全安心なシステム環境を提供していく。


3.  コミュニケーション系

(1)  学生・教員・職員等の協働支援

 教育研究活動および各種業務のIT化が進む中,学生・教員・職員等における情報共有,協働作業ができる環境の整備はますます重要性を増している。
 今後,コラボレーションツールやファイル共有システム等を活用し,安全で利便性の高い情報共有システム環境の整備を推進する(施策①,②)。
 これにより,場所や時間の制約から解放され,学生・教員間の協働授業,教員および共同研究者との研究活動,教員・職員間の協働業務(教授会,委員会等)の活動が効率的かつ円滑に行われるよう支援していく。

(2)  多様な授業運営および業務形態の支援

 本学では,学部・キャンパス・大学・国の垣根を超えた多様な教育研究活動への対応,また業務改革や働き方改革の促進等が計画されている。
 いつでもどこでも誰でも,容易に利用できる遠隔システムにより,キャンパス間に留まらず,国内外の大学,遠隔地と接続が可能な環境の整備を推進する(施策①,②,③,④)。
 これにより,場所の制約から解放され,キャンパス間での遠隔授業や他大学等との協働授業等,柔軟かつ多様な授業運営展開が可能となる。また,遠隔地やキャンパス間を移動することなく会議への参加や業務の推進が可能となる等,教職員の効率的かつ多様な働き方を支援していく。

(3)  ステークホルダーとのコミュニケーション支援

 本学の経営・運営面では,教育研究,社会連携,産学連携等さまざまなシーンにおいて,学生,教職員だけではなく,生徒,校友,保護者,さらには地域,行政,産業界等の多くのステークホルダーとの円滑なコミュニケーションが求められている。
 Webやソーシャルネットワーク等を活用することで,学内外に対し効果的に情報発信できるシステム環境を整備し(施策④),各ステークホルダーとの円滑なコミュニケーションを支援する。また,部署間の連携を強化し,入学前の生徒および卒業後の校友との連絡・連携が可能なシステム環境を整備する。  これにより,各ステークホルダーからの評価を高め,本学のステータスの向上に寄与していく。


4.  教育系

(1)  教学マネジメント,教育の質保証への情報基盤による支援

 今後,教学マネジメントの確立にあたり教育効果の把握・分析・測定によるデータの有効活用は必須となり,社会に対しては情報を公表することが益々求められる。本学が時代の要請に応える人材育成をするためにも,教育に関する情報資源を蓄積し最大有効活用できるための情報基盤を整備する必要がある。
 それには,教学運営や教育の実施に関わる大学のさまざまなデータをシステム横断的に蓄積し,必要なセキュリティ対策を行ったうえで,法令順守のもと安全に利用できるデータマートとして活用可能とする(施策①,②,③)。  これにより,教学に関する全学のデータを統合的に可視化・分析することを促し,教学のグランドデザインの実現に寄与するとともに,各学部等の部門に提供することで,カリキュラム開発や入試戦略等の教学改革に寄与していく。併せて,属人的,一時的な処理から脱却し,業務の継続性をもって活用できる環境を整備していく。

(2)  教育計画,学修指導,教育改善へのシステム支援

 教育計画,学修指導,教育改善等,大学における教育の諸活動は,効率的かつ継続的に実施することが重要である。
 このため,教学システムを中心に,Oh-o!Meiji,入試システム,Web履修,Web採点,eポートフォリオ(学修記録),アンケート(学修成果評価)システム等,教育に関わる各種システムを継続的に充実させるとともに,部活動・ボランティア等正課外活動を支援する新たなシステムを導入する(施策①,②)。
 これにより,広く大学教育の諸活動の活性化を実現する。併せて,データの可視化・分析を通して教員の学生指導計画・授業運営計画に寄与するシステムを開発し,教育支援を実現していく。

(3)  学生の主体的な学びへのシステム支援

 学生の主体的な学びを支援するためには,学生個人の諸活動履歴を集約したデータを適切に処理し,安全にアクセスできるよう整備することが重要である。
 現在個別にシステム化され管理されているシステム間でのデータ連携と一元管理を行う(施策①)。自身の学びの在り方や,キャリアパスの計画に寄与する学習計画支援システムの整備として,学修ポートフォリオ等の学修および正課外活動に関する成果を可視化するシステムを導入する(施策③)。また,ネットワーク環境の充実や,包括的ライセンス契約等によるソフトウェア配布を行い,学生が自身のノートパソコンやタブレット等の端末を使用して本学システムへアクセスできる環境を整備する。
 これらの学習環境整備により,学生自身が「何を学び身に付けたか」を実感し,主体的な学びを促進することを支援していく。

(4)  多様な学びと教育の環境への対応

 多様な学びのスタイルを実現し教授側の自由度をよりいっそう高めるためには,遠隔システムや収録授業の活用,アクティブラーニング等に活用可能な設備等が重要となる。しかし現状では,これらは少数の教室にしか設置されておらず,またその利用方法の周知も十分とは言えない。
 この状況を改善し各種システム環境を充実させていく(施策④,⑥)。さらに,それらのシステムを利便性高く活用できる仕組みづくりを行う。またデジタル教材の制作環境を整備し,メディア授業の活用支援,コンテンツ配信の拡充および設備面での整備,デジタル教材の編集や字幕等補助データ作成のための環境支援も行う(施策⑤)。さらに,アクティブラーニングにおけるIT活用支援体制の充実化を図っていく(施策④,⑥)。
 これにより,学生に多様な学びの場を提供することを支援していく。

(5)  先端的なITを活用した実習等の支援 

 AI,ビッグデータ,IoT,ロボティクス等の先端技術の高度化を踏まえ,実習等に利用可能な情報環境を整備する必要がある。
 これに対し,情報関係科目の見直し等を視野に入れ検討を行う。また,先端的なITの活用支援として,全学的に利用可能なデジタルファブリケーション等のラボ施設の整備を検討する。
 これにより,文理問わず学生に先端技術を応用した実習(プロジェクトベースドラーニング等)を促進することが可能となる(施策⑦)。


5.  研究系

(1)  研究に関わる戦略決定への支援

 本学の研究業績の管理は,「教員データベース」で行われている。また,研究業績の解析は学外システムである「Scopus(Elsevier社)」,「Pure(Elsevier社)」等が利用されている。
 本学情報化戦略においては,研究に関する意思決定機関の方針に基づいた研究業績管理の枠組みを策定し,研究に関わる戦略決定に必要となる情報を集積していく(施策①)。

(2)  研究費に関わる業務改革・改善,および申請業務負担低減への支援

 科学研究費補助金の管理に関する業務は,外部システムによって処理されている。その他の研究費についての業務は財務システムの研究費サブシステムとして処理されている。
 今後は,業務処理フローの見直しを行い,経費処理・申請処理を連動させていく(施策②,③)。
 これにより,申請者(教員)と業務を行う職員双方の業務負担の低減を実現していく。

(3)  インフラとしてのシステムに関わるリソースの柔軟性の向上

 高速計算・特殊計算を行う大規模計算環境は,本学の研究を支える重要な情報インフラであり,スカラー計算機,PCクラスター等のハードウェアおよびこれらの上で稼働するソフトウェアに関わる費用は,年々増加する傾向にある。
 近年,高度な機能がクラウドサービス等でより安価に提供される場合もあることから,これまでの整備方針を見直していく。オンデマンド方式でのリソース利用を可能とする仕組みの構築や稼働させるソフトウェアの必要に応じた入れ替え等,研究用情報システムリソース全体の柔軟性を向上させる(施策④)。
 これにより,システムの費用を抑制しながらも,研究活動を継続的に支援していく。

(4)  オープンアクセス方針に基づく学術情報の流通促進

 機関リポジトリおよび研究業績管理システムは,それぞれが独立したシステムとして稼働しており,連携していない。
 このため,学内情報の仕様統一や組織間連携を推進し,システム実装に向けた環境整備を行っていく(施策⑤)。また,紙媒体で保管されている研究業績データの電子化を促進する。
 これにより,研究業績管理から公開までをシームレスに行うことが可能となり,学術情報の流通を促進していく。


6.  法人系

(1)  業務プロセス改革・改善による定型業務のトータルコスト低減

 本学の各部門では,定型(ルーティン)業務処理に多くの時間を要しており,システム化すべき事務処理が残されている。
 今後,制度会計,管理会計,財務・資産管理業務(施策③),人事管理業務(施策④),大学支援系等業務(施策⑤)において,システム強化を進める。また,申請・決裁業務(施策①),経費処理業務(施策②)等のシステム整備により,申請書類等のデジタル化,ペーパレス化を促進する。
 これによりITをさらに活用し,業務の一層の効率化とスピードアップを図り,トータルコストの低減を進めていく。

(2)  計画・管理業務の意思決定良質化とスピードアップの支援

 ルーティン業務のシステム化により,教職員が計画・管理業務により注力できるようにするとともに,計画・管理において適切かつ迅速な意思決定をする必要がある。
 システム整備にあたり,情報提供,分析機能を強化する(施策③,④,⑤)。申請・決裁業務フロー(施策①)では,過去の申請・決裁情報の参照機能を提供する。データ活用環境(法人IR)の整備・強化では,多次元的な集計・分析が可能な機能を提供する(施策⑥)。遠隔システムを用いたキャンパス間会議環境を整備する(施策⑦)。
 これにより,データに基づいた計画・管理業務を推進するとともに,意思決定のスピードアップと働き方改革を推進していく。

(3)  エビデンスベースドマネジメント実現のための法人経営の可視化支援

 法人の経営管理においても,経営全体の可視化によるエビデンスベースドマネジメント(データ・証拠に基づく意思決定・管理)が社会から求められている。
 法人業務系のシステム整備において,情報提供,分析機能を強化する(施策③,④,⑤)とともに,データ活用環境(法人IR)を整備・強化し,多次元的な集計・分析が可能となる機能を提供する(施策⑥)。
 これにより,法人の経営戦略立案・策定に寄与していく。


7.  ビジョン全体像

 本章では,情報化のあるべき機能・役割を,利活用層(教育系,研究系,法人系)・基盤層(基盤系,コミュニケーション系)・マネジメントの体系の中でビジョンとして示した。
 マネジメントは,本情報化ビジョンを確実に遂行・実現していくためのベースとなる。利用部門とIT部門の連携体制や,IT人材の育成を図ることにより,ITガバナンスをより強化・実効化させ,最終的に情報化のミッション「長期ビジョン・グランドデザイン・中期計画の実現を支援」を遂行していく。
 基盤系,コミュニケーション系は,利活用層を支える機能を提供する。柔軟なネットワーク環境,迅速なサービス導入,セキュリティリスク対策の強化を進める。特に,重要な方針として,「大学資産としての情報蓄積」および,データ共有・システム間連携を含めた「システム全体の最適化」を目指していく。
 教育系・研究系・法人系は,法人・大学の運営そのものの領域である。教育系においては,ITを活用した多様な学びと教育の支援,教学マネジメントや教育の質保証での情報支援等を進める。研究系においては,研究環境としての情報インフラの提供,研究管理での情報支援等を図っていく。また法人系においては,法人運営にかかわる各種業務について,ITにより,業務プロセス改革・改善,意思決定良質化とスピードアップ,エビデンスベースドマネジメント等に寄与していく。これらの領域において,重要な方針は,「情報資産の利活用」および「業務とITの連動」である。