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本学の学費に対する考え方についての学長メッセージ

 2020年5月19日

明治大学長 大六野 耕作
 
本学の学費に対する考え方についての学長メッセージ

 新型コロナウイルス感染症は本年1月末頃から全世界に拡大し, WHOによれば,その感染者は約460万人,死者は約31万人(5月18日現在)に及んでいます。対応できるワクチンや治療薬が未だ存在しないことから,感染症終息への確実な見通しもたっていません。一部の国・地域において感染者数の大幅な減少が見られてはいますが,約5,000万人が命を落としたといわれる100年前のスペイン風邪のように,第2波,第3波の大規模な流行が訪れる可能性も否定はできません。

 こうした中で,わが国でも4月に全国を対象にした「緊急事態宣言」が発出され,これに伴う自粛要請によって,本学も,学生・教職員の入構制限,学年暦の変更,授業形態の変更(対面授業からオンライン授業へ)などを余儀なくされています。また,経済活動の停滞は日増しにその深刻度を増しており,家計支持者の失業,収入減あるいは学生アルバイトの機会喪失等が,学生の修学に暗い影を落としています。

 このことから,本学は,「新型コロナウイルスの感染拡大による退学者を出さない」ことを目標に掲げ,1)オンライン授業を受講する環境を経済的理由で準備できない学生を対象としたPC及びWi-Fiルータ(通信料を含む)の無償貸与,2)経済困窮者を対象とした5億円規模の「緊急学生支援金」の給付,3)大学の拠出金と校友・教職員の寄付等を原資とする「明治大学学生・教育活動緊急支援資金」(通称:学生緊急支援ファンド,SERF: Student Emergency Relief Fund)の創設,4)春学期学費の延納期限の一律9月19日までの延長等,教育機関として当面なしうる限りの学生支援を決定してまいりました。

 しかし,今回,学生のみなさんの一部から,1)授業開始時期が1ヶ月ほど遅れたこと,2)授業実施形態が対面からオンラインに変更になったこと,3) 入構制限により図書館,体育館,教室,研究室等,通常ならば学生の使用に供せられる施設が使用できず,また実験実習等,学内外での教育活動が行えないことなどを理由として,学費の一部減額を求める声が挙がっています。そこで,大学の学費の性質と,本学の学費に関する考え方をご説明いたしたいと思います。

 本学では,学生の在学の対価として徴収している費用を総称して学費と呼んでいます。学費は,授業料,教育充実料,実験実習料(理系学部),実習料(文系学部),専攻指導料(文学部のみ)等から構成され,入学時に別途納入していただいている入学金とともに,在学期間中における支払総額と各年度における支払額を明示しています。この学費は,入学から卒業までの4年間(大学院の場合は,2年もしくは3年)で学位を授与するための教育に必要な費用の総額として設定されています。したがって,各年の学費はこの費用総額を年数で等分したものであることから,たとえ,今回のような「緊急事態」によって授業の方法や開始時期が変更になったとしても,本来的に減額できる性格のものではありません。

授業料・専攻指導料(専攻指導料は文学部のみ)
 授業の開始が遅れ,また,授業形態が対面からオンラインに変更になったことは事実です。しかし,誰も想定できなかった「緊急事態」の中では,学生・教職員の健康と安全を守りながら教育を継続する方策としては,オンライン授業以外の選択はなかったと考えています。
 大学は唯一実行可能な選択肢であったオンライン授業の質向上のために,技術上・教授法上の努力を日々続けております。さらに,多くの教員は,「Zoom会議システム」(以下,「Zoom」)等Web上のシステムを利用して情報交換を行ってオンライン授業の質向上に日々努め,また,授業以外の時間に学生の相談に乗る仕組みも導入しています。授業も通常と同じ授業時間数を確保し,8月の授業終了後の4週間(緊急事態宣言の解除・緩和があった場合)の補講期間を,対面もしくは,対面とオンラインを組み合わせた実施に充てることを予定しております。これによって,シラバスに記載された授業の到達目標を達成するよう努力しているところです。職員もその多くが「緊急事態宣言」下の在宅勤務を余儀なくされており,出勤者がほぼ半減する中で毎年行わなければならない通常業務に加えて,今回の新型コロナウイルス感染症対策にかかわる学生・教員の支援業務に必死に取り組んでいるところです。
 例年以上の準備及び業務を必要とする、このような授業及びその支援を現在の状況の中で行うことが可能なのは、例年通りの授業料・専攻指導料を納入していただいているからに他なりません。

教育充実料
 大学は,学生が所属する学部等のカリキュラムに基づく授業だけではなく,在学期間中における授業以外のサービスも提供しています。教育研究の要となる図書館は,臨時休館の止むなきに至っていますが,それでも,学生のみなさんがオンラインで国内外の図書・雑誌・新聞・各種資料にアクセスできる仕組みを提供しています。しかし,こうしたデジタル・コンテンツの購入には,継続して毎年,莫大な資金を投入しなければなりません。
 加えて今般は,本学の教育活動の情報基盤であるOh-o! Meijiシステムの増強,Zoomをはじめとするオンライン教育ツールの調達(Zoomに関しては,全教員に有料版ライセンスを配付)などに集中的に投資を行い,キャンパスを閉鎖せざるをえない状況においてもオンラインで教育研究活動を継続できる環境を整えております。さらには,学生のみなさんが各キャンパスに戻るまでの間の施設維持管理,教育環境整備改善のため新校舎・新施設の建設にも,教育充実料は支出されています。
 また,大学における重要な学生支援のひとつとして就職活動への支援があります。これについても,5月11日からは,オンラインによる1対1の個別相談(週に300枠程度)を再開し,同じくオンラインによるグループ相談会(1回あたり300名参加可能)も週1回開催しております。また,大学公認のサークル活動についても,遠隔会議システム「Zoom」を用いたオンラインによる新歓活動を5月3日(日)~6日(水)に実施し,延べ1万5千人以上の学生の参加を見ています。もちろん,こうした公認サークルへの助成も例年通り行う予定です。
 さらには,本学から海外に留学する学生への留学助成金の給付(現在も海外の大学で勉学を継続している学生もおります。また,留学できる条件が揃った場合の留学希望者への助成もあります。),海外からの留学生への助成金給付・寮費の助成等,多方面にわたる学生支援を行うためにも教育充実料は使われています。授業開始は遅れましたが,大学の運営自体は停止しているわけではなく,以上のような施設維持管理や,学生に対する助成金等に教育充実料は支出されていますので,減額を実施することはできません。

実験実習料・実習料
 理系学部における実験実習料や文系学部における実習料は,実験実習の実費として徴収しているわけではありません。これは,授業料と同じく4年間の費用総額の等分割という考え方に立って徴収しています。したがって,この場合も授業料と同じく,減額したり返還したりすることができません。
 理系学部においては,オンラインでは実施が難しい実験実習を8月のオンライン授業終了後の補講期間に,「対面もしくは対面とオンラインの組み合わせ」でその一部を実施すると共に,秋学期以降,対面による授業が可能になった時点で本格的な実験実習を行うこととし,このための資金として活用していきたいと考えております。
 文系学部における実習料は,TOEIC, TOEFL, IELTS他,各種外国語の外部試験の受験料助成(外部試験の団体受験や会場試験は現在中止されていますが,次第にオンラインでの受験が可能になりつつあります),あるいは,各学部が学部の理念に基づいて行う独自の教育プロジェクトの費用として使用されています。

 新型コロナウイルス感染症の拡大が,従来の大学のあり方を一変させ,学生のみなさんが大きな不安を抱えておられることはよく理解しております。おそらく,今回の感染症の終息後には,これまでにない規模の社会変動が訪れると考えています。今,明治大学は学生のみなさんの健康と安全の確保を最優先に考えたうえで,あらゆる手段を動員して教育研究を継続しながら,他方で「コロナ以降」にも対応できる創造的な教育研究を生みだすための努力を行っています。学生のみなさんには大変なご不便をおかけしていますが,「次代を切り拓く教育研究」創造の試みに,われわれ教職員と共に参加していただけることを期待しています。

 最後に,アルバート・アインシュタイン(Albert Einstein)の次の一言を、みなさんと共有したいと思います。“Out of clutter, find simplicity. From discord, find harmony. In the middle of difficulty lies opportunity.”( 混乱から単純なものを、不和から調和を探し出そう。困難な状況の中にこそこれを乗り越えるチャンスがある。