研究・知財戦略機構 学内フォーマット集
【MIMS】杉原厚吉特任教授、台湾・故宮博物院特別展『うつつとまぼろしの間で』の関連行事で訪台
2018年11月12日
明治大学 研究・知財戦略機構
国立故宮博物院(台湾・台北市)
故宮屋外正面に設置された特別展『實幻之間』のパネル
300号室:杉原教授の錯覚研究作品がずらりと並ぶ
陳其南故宮博物院長(左)から感謝状を授与
現地台湾メディアから取材を受けた
27日、故宮博物院での一般講演
講演終了後、来場した数学教師や心理学専攻の人から質問を受ける杉原教授
約150人が来場した国立台湾大学での国際シンポジウム
明治大学先端数理科学インスティテュート(MIMS)所長・杉原厚吉特任教授の錯覚研究作品が展示されている台湾・国立故宮博物院特別展『うつつとまぼろしの間で—故宮所蔵戦国時代から漢代の玉器』(實幻之間-院藏戰國至漢代玉器特展)の関連イベントが10月26日・27日、現地台湾で開催されました。
台北市にある故宮博物院(以下、故宮)は、明・清時代の皇帝らが収集した約69万点の膨大な至宝を収蔵し、世界四大博物館とも称される博物館。今回の特別展は、戦国時代から漢代(475BCE~220CE)を中心に制作された錯視芸術「玉器」214点と、科学的視点から制作された杉原教授の錯視研究作品35点が展示されており、2千年もの隔たりのある錯視芸術作品のそれぞれの視覚効果の一面を、錯覚という視点から観覧できるものとなっています。
杉原教授は今春、展示のオファーを受け、台湾のみならず世界に向けてこれまでの錯覚研究作品の成果を発信することとなりました。
26日、故宮の特別展担当者らの案内の下、杉原教授は本館の特別展会場303号室ならびに自身の錯覚研究作品の展示室300号室を訪れ、会場の様子を確認。300号室では、世界各国から訪れた人が集まる中、この特別展のために制作されたスペシャル動画も鑑賞しました。
≫特別展スペシャル動画はこちら(故宮公式サイト)
午後、故宮・陳其南院長との懇談の席が設けられ、和やかな雰囲気のなか、特別展の開催協力に対し互いに謝意を表しました。
杉原教授は「自身の研究が古代玉器と関わりがあったとは思いがけないことであり、このような権威ある博物院からお話をいただいた時は驚いた。今回のことが、数学の理論を用いて古代玉器の視覚効果を探る契機を与えてくれたように感じる」と喜びを伝えました。院長もこれに応え「今回の特別展のコンセプトは大変面白い。今後もこういった新しい切り口の展示にチャレンジをしていければ」と述べました。
このほか同日には、台湾の国立ラジオ局である國立教育廣播台( National Education Radio)、旺報(WANT DAILY)ほか現地数社のメディア取材を受けました。
翌27日、故宮・文会堂で同院主催の講演会が開催され、杉原教授は「本当のことを知っても直らない不可能立体錯視」(Through the Truth be Known, the Illusion Persists: Optical Illusion of Impossible Objects / 實・幻-雖知其實,其幻莫解:不可能的立體錯覺)をテーマに、動画等を用いて、不可能立体や不可能モーション立体などの研究成果を網羅的かつ分かりやすく解説しました。杉原教授は今回の訪台の前週に「世界錯覚コンテスト2018(Best Illusion of the Year Contest 2018)」で3度目の最優秀賞を受賞しており、今回は数学を応用した錯覚研究をリードする同教授の講義を聴く絶好の機会とあって、170人を超える人が会場につめかけました。熱気にあふれた2時間の講演後半、質疑応答では、「錯覚作品第10世代以降の構想はあるか」「動物の錯覚についての実験は有り得るか」「錯覚に対する光と陰、照明の影響や効果についてはどう考えるか」「先生自身は錯覚が起きるのか」といった研究への強い関心がうかがえる質問を受け、終了後も熱心な来場者からの質問が続きました。
≫講演の映像は故宮Facebookオフィシャルアカウントからご覧になれます(講演・質疑応答)
午後は会場を変え、国立台湾大学・擬態科学兼物理学館で、国際シンポジウム「Betwixt Reality and Illusion: International Symposium on the Exploration and Application of Visual Illusions(實・幻-視覺錯覺之探索與應用)」が開催されました(主催:国立台湾大学生物技術研究センターほか)。杉原教授は基調講演に登壇し「Evolution of Impossible Objects(不可能立体の進化)」をテーマに、錯覚研究の各世代の成果や基本方程式などをもとに解説しました。
続いて、同じく「錯覚・錯視」研究者である国立台湾大学心理学部/研究所の葉素玲教授が「錯視の心理学的側面」をテーマに、また国立交通大学応用芸術研究所所長の陳一平教授が「芸術に見られる視覚効果」について、それぞれ解説しました。
後半のパネルディスカッションは、会場の台湾大学生や一般参加者から寄せられた質問に答える形で進められました。4時間半に及ぶ同シンポジウムは大盛況のうちに幕を閉じ、今後の「錯視・錯覚」研究における学術交流に期待が高まるものとなり、今回の訪台行事を締めくくりました。
なおこの特別展は、2020年2月23日まで開催されています。
≫詳細はこちら(故宮公式サイト)