Go Forward

法学部

法学部講演会を実施いたしました!

2022年01月08日
明治大学

 2021年12月19日(日)に,法律事務所ヒロナカ代表弁護士の弘中惇一郎氏及び大阪大学社会技術共創研究センター招聘教員の工藤郁子氏をお招きし,明治大学法学部生のための講演会を実施いたしました。

 第1部の工藤郁子氏には,「デジタル・IT社会での,行政・公務の課題とこれから」と題して,ご講演いただきました。
 初めに工藤氏の現在のお仕事である,大阪大学での新しい科学技術開発におけるE L S I(Ethical, Legal and Social Issues; 倫理的・法的・社会的課題)の研究や,世界経済フォーラム第四次産業革命日本センターでの取り組みにおける面白さ・難しさをお話いただきました。
 次いで,現在デジタル社会の行政や公務が抱える課題と展望について,企業よりも多様なニーズや「受益者」を抱える行政・公務は,さらに包摂性と厳格さを持って「受益者」の課題に寄り添うことが必要であることを指摘されました。
 この行政・公務が抱える課題を乗り越えるには,課題を抽象化し,共通点のある/しかし具体的には異なる課題も一挙に対処できる打ち手を考えてから具体的に実装する必要があり,そのためには分野や国境を超えて,広く全体を括りうる切り口を探ることが大切だとお話しいただきました。
 学生からの質疑応答のうち,「デジタル化を進めていく上で見落としがちなことや気をつけなければならないこと,また,デジタル格差を無くしながら今後デジタル化を進めていくにはどのようにしたら良いか」との質問に対しては,「近年の流行語であるDX(デジタル・トランスフォーメーション)の中核は,実はデジタル化ではなく,トランスフォーメーション(変革)にある。留意すべきは,変革の方向性が『ユーザー中心』にあること。供給者の視点からではなく受益者の視点から,行政や規制を再編する必要がある。しかし,変化は苦痛で怖いものだ。そのため,公務員側も含めて抵抗感が大きな障壁となることが多い。デジタル化を進める側は,ユーザーの「喜び」や「痛み」に真摯に向き合っていく努力が必要」とお答えいただき,最後には法学部生へのメッセージもいただきました。

 第2部の弘中惇一郎氏には,「刑事弁護の実務と刑事裁判の現代的問題」と題してご講演いただきました。
 初めに,憲法での刑事弁護の保障に関する条文をご説明いただいた後,弘中弁護士が弁護を担当された「川崎暴走族事件」について,刑事弁護活動のリアルな様子を時系列に沿って,なかなか見ることの出来ない,起訴状などを提示されながらお話をいただきました。
 次いで弘中弁護士の長きにわたる弁護活動を通じてみる検察側の諸問題として,人質司法や調書偏重主義,検察側の不十分な証拠表示,そしてメディアリークによる捜査官に有利な世論形成という問題点を指摘されました。
 質疑応答において「弁護士に必要な能力・資質は何でしょうか。」という問いに対し,「予断や偏見を持たず,依頼者の権利などの重要な点を見据える力」とお答えいただきました。また「今後の弁護士は外国語を扱う能力,デジタル技術に関する知識も重要である。」とアドバイスをいただきました。
 講演会を通じ,弘中弁護士の刑事弁護への熱い情熱を感じ,参加者にとって貴重な体験となりました。

【参加者の感想】
・実際になされた警察・検察の問題行動,さらに最先端の技術と国際的な問題関心のあり方など,他ではなかなか聞けないお話を聞くことができ,大変刺激的でした。
・もう少し講演していただきたいほど,勉強になるお話が沢山あり,同時に興味深かったです。
・弘中先生の信念や熱意が伝わったとともに,いま自分が学んでいる知識が役立っている具体的な様子が知れました。以して 自身の将来を想像でき またそこへのやる気を得られました。
・これから社会に出て社会をよりいい物にしようとする中で「第四次産業革命が起きている中でも法律が重要視されていること」,「勉強だけでなく,ユーザー側の視点を考えること」など考える軸のヒントが貰えたと思いました。ありがとうございました!

【講演者プロフィール】
法律事務所ヒロナカ代表弁護士 弘中惇一郎氏
霞ヶ関総合法律事務所/ミネルバ法律事務所/法律事務所ヒロナカを開設。
数多くの薬害事件や,マクリーン事件,厚労省の村木局長事件などで弁護を担当。
主要な出版物は,『生涯弁護人 事件ファイル』,『無罪請負人 刑事弁護とは何か?』,『薬害エイズ事件の真実』など。

大阪大学社会技術共創研究センター招聘教員 工藤郁子氏
世界経済フォーラム第四次産業革命日本センター プロジェクト戦略責任者
東京大学未来ビジョン研究センター 客員研究員
一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)有識者会員等も務める。
専門は情報法政策。
共著に,『AIと憲法』,『ロボット・AIと法』など。


【本講演会について】
 本講演会は,新型コロナウイルスの影響から色々な活動に制限があるなかで,明治大学法学部での思い出に残る経験を提供するため,感染対策のうえ実施いたしました。
 この講演会が,参加した学生の記憶に残り,知的好奇心や学習意欲を高めるような経験の機会となりましたら幸いです。