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研究・知財戦略機構

【MIMS】山本誉士特任准教授参加の国際共同研究、生物多様性保全に重要な海域を全球的に解明

2021年03月25日
明治大学 研究・知財戦略機構

データロガーを取り付けた海鳥データロガーを取り付けた海鳥

海鳥類の生息密度の解析結果海鳥類の生息密度の解析結果

山本誉士MIMS特任准教授山本誉士MIMS特任准教授

先端数理科学インスティテュート(MIMS)の山本誉士 研究・知財戦略機構特任准教授が参加した国際共同研究により、このたび、アホウドリ類やミズナギドリ類といった、絶滅が危惧される多くの海鳥種の保全を戦略的に推進するために重要となる海域が、全球的かつ定量的に明らかとなりました。

近年、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)についての社会的関心が高まっていますが、生態系サービスを維持するための生物多様性保全は、その重要な一翼を担っています。そうした中、海鳥類は約28%が絶滅危惧種、10%が準絶滅危惧種であり、特にアホウドリ類およびミズナギドリ類の多くの種では、約半数が絶滅のリスクに晒されています。しかしながら、彼らが生活の大半を過ごす海では、プラスチック等による海洋汚染,乱獲や気候変動に伴う餌生物の枯渇など、いくつもの脅威が存在しています。そこで、これら海鳥類の保全を戦略的に推進するために、彼らにとって重要な海域を明らかにする必要があります。

本研究では海鳥類に小型のデータロガー (注1)を取り付けて海上での移動情報を取得し、17カ国の国際共同研究 (注2)によってデータを集約・解析することで、海鳥類にとって重要な海域を全球的かつ定量的に推定しました。得られたデータを解析した結果、ほとんどの海鳥種は複数の国の管理水域をまたがって利用しており、特に1年の約39%の時間を公海で過ごしていることが明らかになりました。
地球上の全ての海域を保護区にすることは不可能ですが、本研究で示したように、海鳥種が集中して生息する海域を定量的に特定することで、より効果的かつ効率的な保全が可能になることが期待されます。また、海鳥類をはじめ、政治的境界を越えて移動する動物種の保全においては、例えば公海における資源管理を担う地域漁業管理機関(RFMOs:Regional Fisheries Management Organizations)など、より積極的な国際協力体制が重要であることを提言しました。

論文タイトル
Global political responsibility for the conservation of albatrosses and large petrels
発表雑誌
Science Advances, 2021; Vol.7, no.10, eabd7225
https://advances.sciencemag.org/content/7/10/eabd7225

※この成果はアメリカ科学振興協会からもプレスリリースされています。
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2021-03/aaft-tdr030121.php

【本研究の意義と今後の展望について(山本誉士特任准教授)】
本研究において私は、フィールドワークと小型データロガーによる日本国内に生息する海鳥の移動情報の取得、およびデータの解析・提供などを担当しました。

持続可能な開発目標(SDGs)ターゲット14「海の豊かさを守ろう」においては、生物多様性保全を推進するため、海域の10%を海洋保護区として選定する目標が掲げられています。しかし、景観的特徴の乏しい外洋域においては、一体どこが生物にとって重要なのかを把握することは特に困難です。海鳥類は海洋の広範囲を利用することに加え、動物プランクトンから魚類まで多様な海洋生物を採食します。また、一部の海鳥種はマグロなどの大型魚やイルカなどの鯨類が、海面表層に追い上げた魚を見つけて捕食することも知られています。そのため、海鳥類が集中して利用する場所には潜在的に多くの海洋生物が存在しており、海洋において栄養段階間のエネルギー流が大きい(生物多様性が高い)場所の指標になると考えられています。

海鳥自身も多くの種で絶滅が危惧されており、彼らにとって重要な海域を特定することによって、戦略的に漁業活動等との軋轢の緩和することが可能になります。さらに、近年は再生可能エネルギーのひとつである洋上風力発電の建設が増えつつありますが、一方で洋上を移動する海鳥類への影響が懸念されています。この点においても同様に、海鳥類の空間利用を捉えることによって影響の評価が可能となり、ターゲット7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」のさらなる発展に繋がるでしょう。
一方、海鳥類は陸上に形成された繁殖地で集団営巣するため、繁殖地で排出される糞尿などは、陸域および沿岸海域における栄養塩の主要な供給源となっています。そのため、海鳥類を守ることは生態系における物質循環の観点からも重要であり、ターゲット15「陸の豊かさも守ろう」とも関連します。

データロガーを用いて動物の行動を計測することで、動物目線で彼らにとって重要な環境およびその変化の影響を捉えることができるようになってきました。本研究では海洋の重要海域を推定しましたが、この手法を応用・発展させれば、今後は地域社会における様々な自然環境に関する課題にも取り組むことができるため、SDGsターゲット11「住み続けられるまちづくりを」やターゲット12「つくる責任 つかう責任」にも貢献していきたいと考えています。
人と自然が共生していく上で、数理科学的なエビデンス(データ)に基づく意思決定の必要性は、今後ますます高まっていくでしょう。

▼外務省 JAPAN SDGs Action Platform
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/index.html


注1)小型データロガー
動物に取り付けて位置や体の動きなどを計測する記録計(例:GPS)。データロガーを用いて動物の行動を調べる研究手法は「バイオロギング」と呼ばれ、近年では野生動物の研究で多く用いられている。
(日本バイオロギング研究会HP: http://japan-biologgingsci.org/home/

注2)17カ国の国際共同研究
日本,ポルトガル,スペイン,イギリス(モーリシャス共和国・セーシェル共和国を含む),アメリカ,カナダ,フランス,オーストラリア,ニュージーランド,アルゼンチン,チリ,南アフリカ共和国,台湾,オランダ,チュニジア,マルタ共和国,カーボベルデ共和国の研究者による共同研究。
 

本研究の紹介動画