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総合数理学部リポート

世の中の複雑な現象を解明し、応用する。現象数理学科で学ぶ4年間。

 明治大学付属明治高等学校の3年生が総合数理学部を訪問。現象数理学科の見学会を行いました。

 現象数理学科では、4年間の学びの流れをたどるツアーを構成。カリキュラムの体系に沿って、2年生の実験を模擬体験。その後、3年生の講義を見学し、3~4年次に所属する研究室を訪問して、成長の過程と学科の専門分野の広がりを紹介しました。また、現象数理学研究の推進を担い、文部科学省の「共同利用・共同研究拠点」の一つとして認定されている明治大学付属研究機関「先端数理科学インスティテュート(MIMS)も見学しました。
模擬体験「現象数理学実験」



はじめに2年生科目の「現象数理学実験」を模擬体験しました。今回は2人一組になって、硫酸亜鉛水溶液に電極をセットし、還元反応によって現れる亜鉛が樹のような形になることや、電圧の違いによっても形状が変わることなどを確かめました。

担当の末松信彦先生は自己組織化の研究が専門。ミドリムシの集団秩序から、自然界の秩序パターンの発見と解析に取り組んでいる。

 授業の狙いは、実験を行い、得られたデータを解析して、レポートにまとめ、理論と実験の両面から現象を理解することにあります。数理的なアプローチは、こうした複雑な物理・化学現象の理解に欠かせません。
講義見学



 次に見学したのは3年生科目の「現象数理A」。当日は「拡散」について講義が行われていました。固まっていた粒子が、徐々に一様な分布になっていく「拡散」とはどういうことか。そのプロセスを微分方程式で表し、解明する方法を学びます。

担当の上山大信先生は生物・非生物に見られる複雑な模様、形がどのような仕組みで自動的にできあがるのか、そのパターン形成機構の解明を目指している。

微分方程式は自然科学、工学、医学、経済学など社会科学の分野にも広く応用され、近年はコンピューター・シミュレーションの普及によって、適用範囲がますます広がっています。

可視化実験室を訪問



 続いて可視化実験室を訪問。今回は、大学先端数理科学研究科の大学院生が、研究の一環として行っている、砂を使った実験を紹介しました。砂は振動させると流れ出し、模様や起伏をつくりますが、その仕組みは実はまだよく分かっていません。それを数学と物理で解明することがテーマです。興味があれば学部生でも流れをつくるメカニズムを数式で表す研究に参加できます。

中村先生の専門は統計学とデータ同化。世の中にあふれる大量のデータを分析し、新しい情報を見つけたり、未来を予測したりする方法を考えている。

 その後、中村和幸先生が、1993年に北海道奥尻町沖で発生した地震による津波をシミュレーションした映像を紹介しました。専用メガネをかけることで立体視でき、波が伝わっていく様子や水深が浅い日本海の中心部で波が遅くなることが、より理解しやすくなっています。砂の実験も津波の映像も、ある現象を数学で解析し、それを可視化する試みの一つです。
金融情報端末室を訪問



 次に訪れたのは、金融情報端末室。複数のモニターに数字やグラフが並んでいます。ここでは乾孝治先生による解説を聞きました。先生の専門は金融工学。金融機関や投資家が、より効率よく安全に運用する方法やリスク管理の研究をしています。金融工学にも微積分や線形代数、確率・統計、最適化などの数理・工学ツールが活用されています。

研究室では、株式や為替の膨大なデータを自由に使えるため、アイデア次第でいろいろなことが試せる面白さがある。

 金融工学の研究は、実際の金融と密接な関わりがあり、社会に影響力があることが醍醐味です。

先端数理科学インスティテュート(MIMS)



 最後に文部科学省の共同利用・共同研究拠点に認定された「先端数理科学インスティテュート(MIMS)」※で、所長である萩原一郎先生の講演を聞きました。萩原先生は「折り紙工学」と言われる新たなエンジニアリングの権威です。

※「先端数理科学インスティテュート」は大学の枠を越えて研究者が共同で研究を行う体制の整備を目的とした研究拠点。数学・数理科学分野では国内で3例目となり、私大では初の認定を受けた。

折り紙は軽量で強く、展開収縮できる機能を持つ。これを生かし、建築、家具、自動車の車体やエアバッグ、医療、宇宙開発まで、さまざまな応用研究が進んでいる。

 NHKの番組でダンボールの防災ヘルメットを作成した経験や、植物を折り紙で再現する中でヒマワリの種の部分に黄金比が隠れていたこと、また、折り紙工学がソーラーセルや宇宙アンテナといった宇宙での展開物に応用されていることなどが語られました。

現象を数理で理解し、シミュレーションすることで社会の課題解決に貢献する。

 今回、取り上げた金属の還元や砂の動き、波や金融だけでなく、現象数理学科が扱う「現象」は交通渋滞や動植物の模様、心臓の拍動や薬の吸収、流行やブームといった社会現象まで、実に多様です。そして、さまざまな現象を、数学を用いて解明していくのが現象数理学です。

 現象を数式に置き換えた数理モデルを使って、コンピュータでシミュレーションし、社会のさまざまな問題を解決することや、他分野の研究とコラボレーションすることもできます。

 8月18日と19日のオープンキャンパスでは、数学が好きという人はもちろん、数学を世の中の役に立てたいと考える人に、ぜひ現象数理学科の雰囲気を味わってほしいと願っています。