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グローバル・ガバナンス研究科長 博士(法学) 木村 俊介

木村 俊介 研究科長

 本研究科の名称である「グローバル」・「ガバナンス」とは具体的にどのような分野をカバーする研究科なのか、しばしば尋ねられるところです。旧来の公共政策に係る研究は、行政組織の階統制に着眼するものが中心であったのに対し、1980年代から、政策過程を行政組織・非政府組織のパートナーシップの視点から捉え直し、ガバナンス論(あるいはネットワーク論)として基礎を築いてきました。
一方、今日の世界情勢に目を転じてみると、グローバリゼーションは経済発展な豊かさをもたらす一方で、生き残りをかけた競争的な過程において不均等な発展ももたらし、戦争、パンデミック、気候変動、難民問題等の一国だけでは解決できないポリクライシス(複合危機)が顕在化しています。これは国家の統治能力の相対的な低下を意味しており、これらの課題を解決するためには、各国政府、国際機関、NGO、民間企業、市民社会等のアクタ一間の協調による社会運営(すなわちガバナンス)が求められています。 

 本研究科は、このようなグローバルなイシューの解決に貢献出来る高度な公共政策のプロフェッショナルを育成するニーズに対応し、研究者としての能力養成はもとより、政策立案者・遂行者、国際機関・国際NGOの専門家など、国際社会の多様な場においても課題解決と新たな価値の創造に貢献し得る人材を育成することを目的とし、英語による博士後期課程(ドクター・コース)を提供しています。

 このような趣旨で設立された本研究科は、以下の3点を教育の柱としています。

 第1に、学際的なアプローチです。本研究科は、「公共政策」、「国際開発政策」、「地域マネジメント」の3つのプログラムで構成されており、具体的には、政府間関係、行政改革、財政政策、政府職員の能力開発、腐敗防止、危機管理、電子政府、市民参加、準国家機関(sub-national government)の育成、開発経済協力、地域開発、気候変動対策、貧困削減など、世界が直面している重要かつ喫緊のテーマを取り扱っています。これら3つのプログラムを通じ,本研究科は既存の専門分野を横断的に関連づけていく学際的なアプローチをとっています。

 第2に、実践的な問題解決です。本研究科は、博士後期課程として、理論と分析に基づく研究能力を有する者を養成するものですが、さらに、実務家出身の教員を数多く配置し、研究能力を活用して現実の問題を解決できる実務家を育てることも重視しています。この点が従来の博士後期課程とは異なる点であり、研究者のみならず、政府、国際機関、民間企業、及び非営利セクター等で活動する高度なプロフェッショナルの育成を目指しています。

 第3に、多様性の重視です。地球規模で急速に進行するデジタル社会の進展は、新たな価値創出の機会として捉えることができます。本研究科は、英語による博士後期課程としてあまねく諸外国の学生を受け入れ多様性を保持している点に特徴があり、教授陣と学生は討議を重ねながら新たな価値観の発見や展開を図ることとしています。

2014年度に創設された本研究科は、本年度で10年目を迎え、変貌する現代社会の政策のイノベーションに挑戦する皆さんを歓迎します。本研究科においてグローバルな政策立案を共に研究していきましょう。

明治大学大学院
グローバル・ガバナンス研究科