今から約20年前のことですが、司法制度改革審議会は、法曹需要の増大に対処するため法曹人口を大幅に拡大することを提言しました。しかし、単に司法試験の合格最低点を下げて合格者の数を増やすだけでは解決になりません。そこで、質を維持しつつ、数を増やすために、法学教育・司法試験・司法修習を有機的に連携させた「プロセス」としての法曹養成制度が構想されました。こうして法科大学院制度が2004年にスタートしました。
このような社会的使命の一翼を担うべく、明治大学も法務研究科(法科大学院)を設置しました。多くの修了生を送り出し、過去17回の司法試験の累計合格者は926名に達しています。この数は全国7位です。法曹の道に進まなかった修了生もここで学んだことを糧にして官庁や企業の法務部門等で大いに活躍していることも強調しておきたいと思います。
歴史をさかのぼると、明治大学は1881年に創設された明治法律学校に起源を有します。本法務研究科は、その建学の精神である「権利自由・独立自治」を現代的に解釈し、「『個』を大切にし、人権を尊重する法曹」を目指すべき人材像として掲げています。「個」とは、だれ一人として同じものはない存在であり、「個」を大切にするとは、周りとは異なる考え方を認め、守り、発展させ、個がつながる全体に対して責任を果たすことです。このことは、環境の激変に対して社会秩序を強靭なものとして保ち続けるために、社会の枢要な構成員たる法曹が身につけておかなくてはならない大切な資質であると私たちは考えています。