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数理のチカラ vol.1

再生可能エネルギーを生かすスマートグリッド

明治大学 総合数理学部 ネットワークデザイン学科 森 啓之



太陽光や風力などの再生可能エネルギーを使って電気を作る。この方法は最近日本でも注目されていますが、作った電気が消費者にきちんと届くように制御するためには、複雑で大規模な電力網が必要です。この新しい電力網、スマートグリッドを支えているのが、数理科学を活かした「予測力」。数理の力が、電気の未来を変えていきます。

福島で起きた原子力発電所の事故以来、エネルギー問題への関心はますます高まっています。中でも注目を集めているのが、太陽光や風力などの「再生可能エネルギー」ですが、これには曇りや雨の日、風がない日などは発電量が少なくなるというデメリットもあります。天候によって変動する電力を、必要な人のところに必要なだけ、安定して届けられるようにするためにはどうしたらよいのか。ここで活躍するのが、新しい電力網「スマートグリッド」です。



発電から消費の現場までを高度なネットワークで結び、天候などの不確定要素も計算に入れながら、電力供給が常に最適な状態であるように制御する電力網。この力で再生可能エネルギーをより使いやすいものに変えていけば、何で作った電気を使うか、私たち一人一人が選べる時代がやって来るかもしれません。自宅での太陽光発電や省エネ、節電などを通して、電力作りに参加することも容易になるでしょう。そうやって生まれた、または余った電力を各所に安定供給できるスマートグリッドは、みんながエネルギー問題に参加する社会を構築する上でも、とても有効なツールなのです。



ではこのスマートグリッドに、数理科学はどう関わっているのでしょうか。代表的な例が「予測」です。再生可能エネルギーによる電力を安定供給するためには、日によって発電量がどのくらい変動するかをあらかじめ知っておく必要がありますが、これを膨大なデータをもとに速く精確に予測し、最適な供給量を導き出す力を持つのが数理科学なのです。また、この目的を達成するにふさわしい計算法を決定し、人工知能などのインテリジェントシステムを構築することも役割の一つ。電力というと工学系のイメージがありますが、エネルギー問題は現実のデータをもとにした緻密な計算なしでは解決できません。電気の未来を考えるとき、もはや数理科学の力は必要不可欠。制御が簡単で使いやすい電力網の実現を、そして消費者の立場に立った電力サービスの実現を。より良い未来を、数理の力が形にしていきます。
(了)

数理のチカラ : ネットワークデザイン学科

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