生命の基本単位である細胞は10—11ℓという、とても小さい体積を持っています。この細胞の中に遺伝情報を持ったDNAをはじめ、RNAやタンパク質といった特定の役割を持つ生体分子が何千、何万種類とひしめいています。これら膨大な種類の生体分子は、細胞という狭い世界で混雑しているにも関わらず、各細胞内小器官や細胞表面など、目的の箇所にきちんと到達し、的確に標的分子への結合や化学反応といった役割を果たします。その結果として細胞が運動したり、増殖したり、病気と闘ったりと、生物らしい振る舞いを見せるのです。このようなダイナミックで神秘的な生命活動を本当に理解するためには、数十億年という長い歴史をかけて生命が築きあげてきた生体分子同士のつながり、つまり“ネットワーク”を数理の力で解析し、目に見える形にしなければなりません。