今、金融工学は大きな曲がり角にあります。債務者の財務状態の悪化で債権の回収ができなくなる信用リスクが連鎖的に拡大することをいかに食い止めるか、取引相手が見つからず適正な価格で売買できない流動性リスクをいかに解決するかが大きな課題になっています。また現在の金融市場では、自動プログラムによってミリ(1,000分の1)秒単位で売買を繰り返す高頻度取引が行われていますが、このような仕組みは社会にとって本当に有益なのでしょうか。健全な経済発展につながる、公平で効率的な金融市場を築くために、金融制度や規制などのルールづくりに関しても、金融工学の専門家が数理科学的な研究に基づく提言をしていくべきだと思います。