Master of Public Policy, MPP

公共政策のプロフェッショナルを育成するガバナンス研究科

【公共政策大学院】研究科長あいさつ

自らの足元から共に創る社会へ、ともに探求する場として

~ガバナンス研究科設立20年を経て、次へ~

公共政策大学院ガバナンス研究科長 長畑誠 公共政策大学院ガバナンス研究科長 長畑誠

 

2020年に世界を襲った新型コロナ感染症パンデミックのなかで、私たちの多くは、「この未曽有の危機を乗り越えれば、元の暮らしが待っている」と考え、様々な困難に挑んでいたと思います。しかしながら現在(2025年春)、世界は、日本は、どうなっているでしょう。ウクライナで、パレスチナで、それ以外の各地で続く戦争や紛争は多くの人々の暮らしを破壊し、続発する自然災害は世界中の貧困層をさらに大変な状況に陥らせ、世界で最も脆弱な国々の半数が最も豊かな国々との所得格差の拡大に直面しています(国連SDGsレポート2024)。
そして日本。少子高齢化は若者の晩婚・非婚化傾向でさらに加速し、数少ない若者たちは大都市を目指して地方の過疎化・限界集落化が進み、物流・運輸・建設業の2024年問題に象徴される人手不足が経済成長の足かせとなり、国際的な原材料価格上昇や円安による物価高は庶民の暮らしを直撃しています。政治の世界では、無党派層(支持する政党なし)が常に30%以上を占め、特に50代以下では40%を超えており(2025年3月NHK世論調査)、若い世代の政治不信が深まっていると言えます。
けれども、私たちの足元、地域社会に視点を移すと、違う風景が見えてきます。地域の高齢者たち自身が、互いに助け合い、見守りや配食、買い物支援活動を行っています。若者たちが過疎の進む地方へ移住し、地域にあるものを活用して魅力的な商品開発をし、村落ツーリズムに取り組んでいます。様々な課題を抱える当事者たちによるNPO等もコロナ禍を乗り越えて活発に活動しています。そして地方議会や首長に挑戦する女性が増え、2023年4月統一地方選挙では過去最多の女性当選者数となりました。
私たち明治大学専門職大学院ガバナンス研究科は、2000年施行の地方分権一括法の制定を背景に2004年に設立されました。授与される学位は「公共政策修士(専門職)」ですが、研究科の名称は「ガバナンス」です。これは、公共課題の解決は政府・自治体(ガバメント)だけの責任ではなく、そこに関わるすべての当事者・関係者が協働してあたることが必要で、研究科はそうした地域社会の「ガバナンス」を共に考え、創り出す場となりたい、という思いからです。
設立20周年を経て修了生は1000人を超え、自治体の職員や議員、首長として、民間企業の一員として、NPOや地域社会のメンバーとして、さらにはアジア各国の幹部公務員として、地域社会のより良い「ガバナンス」を目指して活躍されています。先の見えない混迷の時代において、自分たちの足元から共に新しい社会を探求し、創造していく。そんな学びあいの場へ、多くの方々にご参加いただけることを願っています。