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国際日本学部

世界のマンガをめぐる国際シンポジウム 「グローバル時代の世界のマンガ:アメリカ・タイ・アフリカ」を開催しました

2025年12月12日
明治大学 中野教務事務室

11月30日(日)、国際日本学部の学生主体のイベントGJSDAYの一環として、藤本由香里教授のゼミ主催で、世界のマンガをめぐる国際シンポジウム「グローバル時代の世界のマンガ:アメリカ・タイ・アフリカ」を開催した。


貴重な機会に集まった会場の聴衆

現在、明治大学国際日本学部・藤本由香里研究室には、ニューヨーク市立大学から、CJ鈴木先生、タイのチュラロンコン大学からアサダーユット・チューシー先生が客員研究員として来日している。お二人ともマンガ研究者で、また、藤本ゼミ2期生で、2021年秋からJETRO(日本貿易振興機構)の駐在員として南アフリカ・ヨハネスブルグに赴任していた堀内千浪氏も今年帰国。これを機に、藤本由香里教授の司会・コーディネートで、国際シンポジウムを開催した。


司会を務めた藤本教授

ニューヨーク市立大学・CJ鈴木准教授の演題は「変化する北米コミックス——多様性を読み解く力」。現在のアメリカでは、スーパーヒーローで知られる従来のアメコミに加えてグラフィックノベルが存在感を増してきており、さまざまな社会的マイノリティや、社会問題に焦点をあてた作品が増えてきている。一方で、近年、こうした作品に対する保守派からの攻撃も盛んになってきており、図書館での閲覧禁止を求める勢力と、図書館員の抵抗のせめぎあいが激しくなってきている、という報告があった。


講演を行うCJ鈴木氏

チュラロンコン大学(タイ)のアサダーユット・チューシー助教授の演題は、「タイにおけるカートゥーン——歴史から現在まで」。19世紀までさかのぼるタイのカートゥーンの歴史が、第二次世界大戦までの初期、戦後から1966年までの黄金期、ちょうど日本マンガが入った頃からの銀の時代(1967~76)……と順を追って語られ、不況によって小型化した1バーツコミックスが誕生し、ホラーマンガが主になっていく過程、ギャグマンガの隆盛、テレビ番組での批判によるBLの受難など、興味深い事象が次々と取り上げられた。現在のタイでは、書店の減少により、紙のマンガは予約販売が目立ってきているという。


本学の客員研究員でもあるアサダーユット・チューシー助教授

藤本ゼミ2期生であるJETROの堀内千浪氏の演題は、「アフリカにおける日本のマンガ・アニメ——南アフリカを中心に」。最初に、アフリカの概要が示され、加えてアフリカ各国の経済規模をアジアの国々と比較しながら、アフリカ有数の経済大国である南アフリカについて説明があった。また、南アフリカで毎年開かれている「コミコン・アフリカ」の写真や、南アフリカでどのような日本マンガが売れているかの資料、その市場規模も示された。英語のマンガは輸入によるため高価(2000~2500円)で、販売冊数は多くはないが、若い人口が多く、将来的なポテンシャルは大きいという。


国際日本学部のOGで、JETROでご活躍の堀内氏

今回は、アメリカ・タイ両国のマンガ研究者による、期待を上回る素晴らしい発表に加えて、めったに聞くことができないアフリカのマンガ市場に関する報告がなされ、貴重な機会となった。また会場には、驚くほどさまざまなマンガのプロの研究者や関係者が訪れ、ふつうは一堂に会することがないマンガ関係者の相互交流の場としても実りの大きいイベントであった。