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国際日本学部

【岸ゼミ】明治大学×イスタンブール大学:ABRによる学校教育経験の探究

2026年01月08日
明治大学 国際日本学部

ABR実践の様子ABR実践の様子

 明治大学の南條 絢音さん、イスタンブール大学のベイザさんとシャミールさんは、国際的な共同学習の一環として、アートベース・リサーチ(Arts-Based Research:ABR)の実践を行いました。この活動には両大学から合わせて11名の学生が参加し、日本とトルコそれぞれの学校教育の経験を題材に探究を深めました。
 参加者は、小学校・中学校・高校・大学という教育の歩みを振り返りながら、教師との関係、評価に対する意識、宗教とのかかわり、他者との関わり方などを、一人ひとりの視点から語り合いました。ここで大切にされたのは、教育制度や設備の比較ではなく、個人の経験を出発点とする対話です。
 語り合いを通じて、参加者は自身の経験がどのようにキャリア形成や価値観の構築につながっているのかを共有し合い、国や文化を超えて共通する問いや異なる視点を見出すことができました。
 この実践は、学生同士による国際共同研究のひとつとして、異文化間における教育や文化の探究においてABRの新しい可能性を示しました。さらに、教育という営みを、より文化的・社会的・歴史的・政治的な文脈から捉える契機ともなりました。

▶︎▶︎▶︎▶当日の実践の様子はこちら(映像)

以下、本研究の実施者からの報告です。

◾️南條 絢音さん(岸ゼミ4年生)
本プロジェクトは、私とイスタンブール大学の学生パートナーが、互いの学校教育経験を共有したことをきっかけに生まれました。特に印象に残ったのは、「学校の規則」に対する共通の息苦しさです。軍隊のように画一的な行動を求められる環境に対し、私たちは似た感覚を抱いていることに気づきました。
一方で、その「厳しさ」の中身は大きく異なっていました。私が通っていた日本の中学校では、髪の長さやスカート丈、靴の色といった外見的な規律が重視されていました。対して、彼女が語るトルコの高校では、常に警備員が配置され、外出は禁止されており、金曜日の礼拝時のみ、しかも男性に限って外出が許されるという状況でした。同じ「息苦しさ」という感情でも、その背景には文化的・宗教的要因の違いがあることを実感しました。
こうした共通点と相違点、そしてそれらが現在の自分に与えている影響を探究したいと考え、本プロジェクトを企画しました。蝶をモチーフに、言葉・形・色を用いて各教育段階の経験を表現することで、過去の体験をつなぎ合わせ、「今の自分」がどのように形成されてきたのかを可視化できるのではないかと考えました。教育が個人に与える影響を、言語だけでは捉えきれない側面も含め、アートという手法で探究することを目指しました。
単に教育制度の仕組みを比較するだけであれば、インターネットやAIを用いた調査でも可能です。しかし本プロジェクトの意義は、ビジュアルアートを通じて個人の内面的な経験を探究し、それを相互に比較することで、教育を社会的・文化的・構造的な観点から実感として捉え直す点にあると考えています。

◾️ベイザさん(教育学部4年生)※訳:南條 絢音さん
 This study employed a butterfly figure to represent the four stages of schooling—elementary, middle, high school, and university—through colors or words chosen by students. Participants were free to express their feelings symbolically, allowing personal reflection on their educational journeys.
 本研究では、蝶の図を用いて、小学校・中学校・高校・大学という4つの学校段階を表し、参加者が選んだ色や言葉で示しました。参加者は自らの教育経験を象徴的に表現することができ、個人的な学びの歩みを振り返る機会となりました。
 Findings revealed recurring patterns across countries, yet also notable cultural contrasts. Turkish participants often associated primary school with pink tones, symbolizing purity and childhood innocence. In contrast, Japanese participants described primary school as a stricter, more disciplined stage shaped by continuous homework, despite its potential for playfulness.
 調査の結果、国を超えて共通するパターンが見られる一方で、文化的な対比も明らかになりました。トルコの参加者は、小学校を純粋さや子ども時代の無垢さを象徴するピンク系の色と結びつけることが多かったです。それに対し、日本の参加者は、小学校を遊びの要素もありながら、宿題が絶えず課される厳格で規律的な時期として描写していました。
 In later stages of schooling, both similarities and differences emerged. While students from Turkey and Japan—coming from distinct cultural backgrounds—sometimes expressed overlapping emotions, they also reflected diverging perspectives rooted in cultural or school-specific practices. For instance, for some students, middle school was expressed with darker colors, such as black, symbolizing a more exhausting and challenging period.
 後期の学校段階では、共通点と相違点がともに浮かび上がりました。文化的背景の異なるトルコと日本の学生たちは、時に重なり合う感情を表す一方で、文化や学校固有の慣習に根差した異なる視点を反映することもありました。例えば、一部の学生は、中学校を「より疲弊し、困難な時期」として、黒などの濃い色で表現していました。
 This study revealed that, despite coming from different cities and cultural contexts, many participants shared common emotional patterns in their educational journeys, while others reflected differences shaped by their national or institutional culture. However, since the study involved only 11 participants, it is expected that a larger group would provide deeper and more varied insights.
 本研究は、異なる都市や文化的背景を持ちながらも、多くの参加者が教育経験に共通する感情パターンを共有していることを示すとともに、国や制度文化に影響された違いも映し出しました。しかし、今回の調査は参加者が11名に限られていたため、より大規模な調査を行えば、さらに深く多様な知見が得られると考えられます。