卒業生の声
岸ゼミ×アレッポ大学が描く、シリアの今:写真で語るシリア
2026年01月13日
明治大学 国際日本学部
岸ゼミでは、2025年度4月より、シリアにあるアレッポ大学の学生と、インターネットを通じた国際交流を開始しました。 交流を重ねる中で私たちが強く感じたのは、「シリア」という国が、日本で報じられてきたイメージだけでは決して語り尽くせないということです。
内戦や難民といったネガティブな側面は、確かにシリアの一部の現実です。しかしその一方で、ニュースではなかなか伝えられない、穏やかな日常や、未来に希望を抱きながら生きる若者たちの姿が確かに存在しています。「内戦や難民だけではない、“シリアのリアル”を伝えたい」そうした思いから、岸ゼミの学生とアレッポ大学の学生による共同プロジェクトが始まりました。
以下、本プロジェクトに取り組んだ岸ゼミ6期生 丸橋恵那さん、南井里穂さんからの報告です。
■ニュースの向こう側へ
「シリア」と聞いて、内戦や難民といったニュース映像を思い浮かべる方は少なくないでしょう。 2011年から2024年まで続いた内戦は、日本でも繰り返し報道され、シリアに対するイメージを強く形作ってきました。しかし、私たちがメディアを通して知っているのは、シリアの日常のごく一部にすぎません。
私たちは2024年、カナダのトロントとバンクーバーにそれぞれ留学し、現地で数名のシリア出身の学生と出会いました。慣れない環境の中でも、笑顔を絶やさず英語学習に励む彼女たちの姿はとても前向きで、私たちが抱いていたシリアへのイメージを大きく揺さぶるものでした。この出会いこそが、本研究の出発点です。
私たちは、「内戦や難民といった側面だけでなく、報道ではこぼれ落ちてしまう“シリアのリアル”を伝えること」を研究の目的に掲げました。そして、内戦中には激戦地ともなったシリア北部の都市にあるアレッポ大学の学生とオンラインで協働し、「シリア・フォトボイスプロジェクト」を実施しました。
このプロジェクトには、日本語を学び、アートに関心をもつアレッポ大学の学生4名(ガザルさん、ゼンさん、ファティマさん、ヤシロさん)が有志として参加してくれました。
▶︎写真:オンライン交流の様子
■フォトボイスという表現方法
私たちが採用したのは、「フォトボイス」という手法です。写真は身近な表現であると同時に、撮影者が何に心を動かされ、どこに意味を見いだしたのかが、直感的に伝わるメディアです。当事者自身の視点を通して経験を共有できる点において、フォトボイスは非常に有効だと考えました。
参加学生には、日常生活の中で「心が動いた瞬間」を自由に撮影し、その時の思いを短い文章にまとめてもらいました。私たちが特に大切にしたのは、「こういう写真を撮ってほしい」といった指示を一切出さないことです。構図もテーマもすべて彼女たちに委ねることで、シリアで暮らす若者の“ありのままの視線”をそのまま受け取ることを目指しました。
また、参加学生から「日本語で自分たちの気持ちを表現してみたい」という希望が寄せられたため、今回のフォトボイスはすべて日本語で制作されています。日本の読者にとって、より身近に感じられる工夫の一つです。
彼女たちから届いたフォトボイスは、「戦争の影」だけを映したものではありませんでした。そこにあったのは、家族や友人と過ごす時間、学生としての喜びや悩みといった、ごく自然な日常です。
友人とカフェでおしゃべりを楽しむ姿、誕生日を祝い合う様子、自分の趣味に没頭する時間。それらは、日本の大学生と何ら変わらない光景でした。ニュース記事だけでは知ることのできない、シリアの若者たちのリアルな生活が、写真の中に息づいていました。
さらに印象的だったのは、内戦終結後のシリアが、私たちの想像するような暗さや絶望ではなく、希望に満ちていることです。家族や友人と共に過ごせる喜び、そして「もう一度みんなでシリアをつくっていこう」という強い思いが、写真と言葉から伝わってきました。
▶︎写真:彼女館から届いたフォトボイス(一部)
■Diversity Festaでの展示を通して
これらのフォトボイスは、2025年11月30日に明治大学国際日本学部で開催されたDiversity festaにて展示をしました。
会場では、多くの学生が自然と足を止め、写真と言葉を通してアレッポ大学の学生たちの日常や思いに触れていました。展示を見た学生からは、「いつかシリアに行ってみたいと思った」という声が数多く寄せられました。穏やかな日常や美しい自然、人々の前向きな姿勢が伝わったことが、関心につながったのです。また、「遠い国」だと思っていたシリアに、日本文化に関心を持ち、日本語を学ぶ同世代の学生がいると知ったことも、大きな驚きだったという感想がありました。
これまで多くの日本の学生にとって、シリアは「内戦があり、危険で遠い国」というイメージが強かったかもしれません。しかし、フォトボイスが映し出したのは、希望と喜びに満ち、私たちと変わらない日常を生きる若者たちの姿でした。心理的にも物理的にも遠かった国が、「身近で、行ってみたい場所」へと変わっていったのです。
本企画を通じて、私たちは、普段接しているメディア情報からは見えにくいシリアの人々の前向きさや、本来の美しさに触れることができました。そして、それらを伝える手段として、写真という身近な表現が持つ力の大きさを、改めて実感しています。
この取り組みが、保護者の皆さま、高校生、そして大学生にとって、世界を見る視野を少し広げるきっかけとなれば幸いです。
▶︎写真:Diversity Festaでの展示とプロジェクトに参加した丸橋恵那・南井里穂さん
▶︎フォトボイス作品は、岸ゼミウェブページから閲覧できます。
http://m-kishi.com/seminar/outputs/web-news/
内戦や難民といったネガティブな側面は、確かにシリアの一部の現実です。しかしその一方で、ニュースではなかなか伝えられない、穏やかな日常や、未来に希望を抱きながら生きる若者たちの姿が確かに存在しています。「内戦や難民だけではない、“シリアのリアル”を伝えたい」そうした思いから、岸ゼミの学生とアレッポ大学の学生による共同プロジェクトが始まりました。
以下、本プロジェクトに取り組んだ岸ゼミ6期生 丸橋恵那さん、南井里穂さんからの報告です。
■ニュースの向こう側へ
「シリア」と聞いて、内戦や難民といったニュース映像を思い浮かべる方は少なくないでしょう。 2011年から2024年まで続いた内戦は、日本でも繰り返し報道され、シリアに対するイメージを強く形作ってきました。しかし、私たちがメディアを通して知っているのは、シリアの日常のごく一部にすぎません。
私たちは2024年、カナダのトロントとバンクーバーにそれぞれ留学し、現地で数名のシリア出身の学生と出会いました。慣れない環境の中でも、笑顔を絶やさず英語学習に励む彼女たちの姿はとても前向きで、私たちが抱いていたシリアへのイメージを大きく揺さぶるものでした。この出会いこそが、本研究の出発点です。
私たちは、「内戦や難民といった側面だけでなく、報道ではこぼれ落ちてしまう“シリアのリアル”を伝えること」を研究の目的に掲げました。そして、内戦中には激戦地ともなったシリア北部の都市にあるアレッポ大学の学生とオンラインで協働し、「シリア・フォトボイスプロジェクト」を実施しました。
このプロジェクトには、日本語を学び、アートに関心をもつアレッポ大学の学生4名(ガザルさん、ゼンさん、ファティマさん、ヤシロさん)が有志として参加してくれました。
▶︎写真:オンライン交流の様子
■フォトボイスという表現方法
私たちが採用したのは、「フォトボイス」という手法です。写真は身近な表現であると同時に、撮影者が何に心を動かされ、どこに意味を見いだしたのかが、直感的に伝わるメディアです。当事者自身の視点を通して経験を共有できる点において、フォトボイスは非常に有効だと考えました。
参加学生には、日常生活の中で「心が動いた瞬間」を自由に撮影し、その時の思いを短い文章にまとめてもらいました。私たちが特に大切にしたのは、「こういう写真を撮ってほしい」といった指示を一切出さないことです。構図もテーマもすべて彼女たちに委ねることで、シリアで暮らす若者の“ありのままの視線”をそのまま受け取ることを目指しました。
また、参加学生から「日本語で自分たちの気持ちを表現してみたい」という希望が寄せられたため、今回のフォトボイスはすべて日本語で制作されています。日本の読者にとって、より身近に感じられる工夫の一つです。
彼女たちから届いたフォトボイスは、「戦争の影」だけを映したものではありませんでした。そこにあったのは、家族や友人と過ごす時間、学生としての喜びや悩みといった、ごく自然な日常です。
友人とカフェでおしゃべりを楽しむ姿、誕生日を祝い合う様子、自分の趣味に没頭する時間。それらは、日本の大学生と何ら変わらない光景でした。ニュース記事だけでは知ることのできない、シリアの若者たちのリアルな生活が、写真の中に息づいていました。
さらに印象的だったのは、内戦終結後のシリアが、私たちの想像するような暗さや絶望ではなく、希望に満ちていることです。家族や友人と共に過ごせる喜び、そして「もう一度みんなでシリアをつくっていこう」という強い思いが、写真と言葉から伝わってきました。
▶︎写真:彼女館から届いたフォトボイス(一部)
■Diversity Festaでの展示を通して
これらのフォトボイスは、2025年11月30日に明治大学国際日本学部で開催されたDiversity festaにて展示をしました。
会場では、多くの学生が自然と足を止め、写真と言葉を通してアレッポ大学の学生たちの日常や思いに触れていました。展示を見た学生からは、「いつかシリアに行ってみたいと思った」という声が数多く寄せられました。穏やかな日常や美しい自然、人々の前向きな姿勢が伝わったことが、関心につながったのです。また、「遠い国」だと思っていたシリアに、日本文化に関心を持ち、日本語を学ぶ同世代の学生がいると知ったことも、大きな驚きだったという感想がありました。
これまで多くの日本の学生にとって、シリアは「内戦があり、危険で遠い国」というイメージが強かったかもしれません。しかし、フォトボイスが映し出したのは、希望と喜びに満ち、私たちと変わらない日常を生きる若者たちの姿でした。心理的にも物理的にも遠かった国が、「身近で、行ってみたい場所」へと変わっていったのです。
本企画を通じて、私たちは、普段接しているメディア情報からは見えにくいシリアの人々の前向きさや、本来の美しさに触れることができました。そして、それらを伝える手段として、写真という身近な表現が持つ力の大きさを、改めて実感しています。
この取り組みが、保護者の皆さま、高校生、そして大学生にとって、世界を見る視野を少し広げるきっかけとなれば幸いです。
▶︎写真:Diversity Festaでの展示とプロジェクトに参加した丸橋恵那・南井里穂さん
▶︎フォトボイス作品は、岸ゼミウェブページから閲覧できます。
http://m-kishi.com/seminar/outputs/web-news/








