「構想力」ないし「想像力」は人間が世界のなかでさまざまな難題に出くわしそれを解くための最も重要な能力です。諸事象を感受する能力も、それらを分析・綜合する能力も「構想力」に依存しています。カントという哲学者はこの「構想力」を「魂の暗闇に隠れたアート」と「モノグラム」〔図案化された文字列〕とも呼びましたが、「文学部」の英語名称はずばりSchool of Arts and Lettersなのです。私たちの魂の暗闇にはどのような「形」と「文字」が描かれているのでしょうか。それは誰かが私たちに送付した「手紙」(レター)でもあります。「文学」もしくは「人文学」はいずれもこのような「形」「文字」「手紙」の判読をめざしています。判読しながら、今度は私たち自身が誰かに向けて、未来の「手紙」を送付するのでしょう。