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研究科長あいさつ

世界地図を描ける力を身体化しましょう

商学研究科長  博士(商学) 藤井 秀登



 商学は、ビジネスとの接点を重んじる学問領域の一つです。商学が実用的な学問といわれる所以です。実用性を重視するビジネスにおいて、VUCAという言葉を近年よく耳にするようになりました。VUCAとは、変動性、不確実性、複雑性、曖昧性の4つの英単語の頭文字をもとにした造語で、予測困難な状況を意味します。ビジネスを取り巻く社会環境の構造がVUCA化しているため、従来と同じ手法を適用しても、仕事が必ずしも円滑に進むとは限らない事態になってきているのです。商学がビジネスと関係をもつ点を考慮すると、商学も新たな課題に立ち向かわなくてはなりません。
 明治大学大学院商学研究科は、経済、商業、経営、会計、金融・証券、保険、交通、および貿易の8系列から構成され、商学に関連する領域を網羅しています。新たな課題に対峙できる柔軟な仕組みも履修制度に組み込んでいます。商学研究科では、高度専門職業人としてビジネス界で活躍できる力を、また自立した専門研究者として国内外で活躍できる力を養成するカリキュラムをそれぞれに配置し、指導教員による研究指導を通じて培われます。
 医術と医学が重複しているように、技術としての商術、学問としての商学も二重構造になっているとしましょう。実用性に富んだ商術と体系性を備えた商学との二重性ともいえます。とはいえ、大学院は研究の場ですので、たとえ商術であっても、商学と同じく世界地図を自力で描ける力能の育成が大学院生には求められます。ここで世界地図とは、現実のビジネスを五感覚器官で認識して、私たちが頭の中につくりだす観念的な世界を意味しています。ただし、同じ対象をみても、各人によって、その見え方や捉え方が異なります。このため世界地図に誤差が生じることになります。羅針盤の役割を果たす世界地図には正確さが欠かせません。ここに、商学研究科の8系列における、研究指導の意義があります。本格的なビジネスを経験したか否かにかかわりなく、商学研究科の大学院生には、体系性に優れた世界地図を精緻に書けるような研究指導が大学院生の問題意識に応じて実施されます。少人数による指導体制に商学研究科の特長があります。
 大学院は教育と研究の場であるため、大学院生には研究指導を受けるだけでなく、能動的に自らの研究テーマを追求する姿勢が必須となります。商学研究科の大学院生は、指導教員と相談の上で、自系列以外の科目も履修できます。必要に応じて、明治大学大学院の研究科間共通科目や他研究科の科目履修、および協定している他大学大学院との単位互換制度も活用できます。また大学院生が研究に専念できるように、TA(ティーチング・アシスタント)やRA(リサーチ・アシスタント)、助手のような経済的な支援を受けられる体制も用意してあります。留学生には、日本語論文作成サポートも設置されています。自らの問題意識に自らの力で結論を出せるような環境は整えられています。意欲ある多くの皆さんが、商学研究科に進学され、世界地図を完成できることを願っております。
 

明治大学大学院