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国際日本学部

難民の子どもの居場所づくりプロジェクト【岸ゼミ】

2023年07月24日
明治大学 国際日本学部

 岸ゼミでは、ゼミ生がそれぞれ自分たちの興味関心、問題意識に基づいてアートベース・リサーチのプロジェクト活動に取り組んでいます。そのひとつが、外国人児童生徒の居場所づくりに関するものです。本プロジェクトリーダーのラーマさん自身は、自身の経験から、外国人児童生徒は初等教育、中等教育で孤立しがちであることに問題意識を抱えていました。そこで、外国人児童生徒が社会や人とつながる機会をつくりたいと、ゼミの学生だけでなく、学部1−2年生の有志を集めて、外国人児童生徒の居場所作りのプロジェクト活動をはじめました。2023年6月24日(土)から、定期的に活動を実施しています。以下、本プロジェクトの活動報告第一弾です。

ラーマ (岸ゼミ 4年生)
 日本では違いを持っていることによって、原体験から考えて生きづらさを感じる人が多いと思います。例えば、グループに馴染めなかったり、孤立してしまったり、文化の違いによる衝突、差別、ステレオタイプ、日本語の壁などが挙げられると思います。特に、学校教育の段階では原体験からみてもたくさんの壁にあたってしまうと思います。本プロジェクトでは難民の子どもたちを対象にし、その経験をして自信がなくなってしまったり、自分らしさを出すことが悪いことだと感じたり、将来の夢が持てなくなったりなどの現状に少しでも寄り添いたい、改善したいと思い、本プロジェクトを立ち上げました。加えて、「助けてあげる」と言う目線ではなく、一緒に考えて子どもたちと学び合う環境を作っていきたいです。

ゼミのプロジェクトとして実施した活動ですが、ゼミ以外の学生にも参加してもらえ、とても充実した活動となりました。活動内容は、ゼミで取り組んできた活動を、小学生や日本語が得意でない子どもも参加できるようにアレンジしました。また、人と関わることが苦手な子どももいるので、誰もが参加しやすい場のデザインにも心がけました。

参加児童の中には、将来への見通しがつかない、情報が届いていないため夢を持ちづらい子どもがいます。しかし、大学という場に身をおいて、実際に大学生と関わり、話し、一緒に、キャンパスを歩き、さまざまな施設を体験することで、大学に関心を持ち、大学にいくために、学校の勉強を頑張ろうと言ってくれた子もいました。

第一弾の企画では、ビジュアルアートを取り入れた企画でした。自分らしさを出せるように、表現することを怖がらないように、また仲良くなることを目的にしました。そこで、アートセラピーの考えを含めたビジュアルアートの実践を行いました。左右の手形を書いて「大切にしたいもの」「手放したいもの」をそれぞれ描きました。そして、それをもとに他の人に話したり、質問したりしてもらうことで、自分の気持ちを少しずつ表現していきました。この企画は、私の同期の渡辺栞さんが開発したもので、地域や学校でも実践されていました。それを一部、外国人児童生徒がやりやすいように工夫しました。どの子も自分を自分なりに表現し、そこからお互いに関心をもてる良い機会となりました。


鶴間 茜(岸ゼミ3年生)
今回は難民の子供たちとアートを使って、活動をしました。私も、このアート企画を経験したことがあり、個人的にとても良い経験ができました。その大きな理由が、自己理解と他者理解を促進できる点です。とはいうものの、子どもを相手にワークショップをするのに、正直にいうと不安もありました。私は、普段、小さな子供と関わる機会がほとんどありません。また外国人児童生徒にも、難民の子どもとも接したことがありません。そのため、この機会で、子どもたちと、しっかりと向き合っていけるかとても不安でした。

活動は、小さなグループ単位で行いました。私は、同じグループになった子と会話をしながら少しずつ活動をしました。最初は、一緒に活動した子どもは、どうすればいいか戸惑った様子でしたが、一緒に話していくうちに、だんだんと自分の考えを絵にすることができました。そして、それをきっかけとして、自分からその絵の意味を説明してくれました。
 私にとってとても印象的だったことが、手放したいものの表現に「戦争」が出てきたことです。まさか、子どもから「戦争」という言葉が出てくるとは思いませんでした。それを聞いた時、どのように反応していいのか、どこまでそれについて踏み込んで聞いていいのか戸惑ってしまいました。彼らが「戦争」について話す機会があったにもかかわらず、きっちり話を聞いてあげれなかったことを悔やんでいます。次の機会には、しっかり子どもたちの言葉や行動を受け止めれるようになりたいと思いました。そのためにも、私自身、彼らの背景や文化についても知って行こうと思いました。


大尾 彩花(岸ゼミ3年生)
第一弾の企画では、アートを使った活動とインプロ(即興演劇)そして、キャンパスツアーを行いました。私の役割は、全体の司会進行です。子どもたちみんなが楽しめているか、活動に参加できているかを気にしながら進めていきました。私は普段、子供と関わる機会がほとんどありません。そのため、子ども相手のワークショップをうまくできるのかとても不安がありました。当日は子どもの様子をしっかりみながら、どうすれば楽しんでもらえるか、状況的に、即興的に考え、試行錯誤しながら進めた1日となりました。

活動では、子どもたちが説明の意図をつかめず混乱している状況もありました。子どもに合わせた話し方、伝え方にも慣れていこうと思いました。また、学習環境のデザインもとても重要だということに気づきました。ゼミでは学習環境デザインについても学んでいますが、実際の現場でそれがどれほど重要かについて実感しました。子どもたちがワクワクするように、そして参加しやすいように、どのように場を作っていけばよいのか。最初に岸先生にヒントをもらうと、私自身もこうしたほうがいいかも!とたくさんアイデアを出し、場づくりができました。このように、子どもたちが積極的に活動し、楽しむことができる場をみんなで作れて自信になりました。

一方で、その場所を使う子どもが一部だったことが気になりました。一部の子どもがその場所を占領すると、ほかの子たちが参加できなくなります。そのため、全員が楽しめるように、誰かが孤立したり退屈しないようにする働きかけが必要だということがわかりました。

大切なことは、状況をしっかり見て、聞いて、感じて、活動や子どもたちの様子に応じて場を作り、作り変えていくことです。飽きてしまわないように、孤立させないように状況をみて作り変えたり、活動内容に合わせて構成してみたりなど工夫を考えていきたいと思います。