Go Forward

国際日本学部

南カリフォルニア大学とのABR共同実践:フォーラムシアターを通した異文化体験の探究

2025年09月19日
明治大学

写真1:当日の写真写真1:当日の写真

写真2:国際学会での発表の様子写真2:国際学会での発表の様子

2025年5月29日、本学国際日本学部に南カリフォルニア大学の学生15名が来校し、岸ゼミ4年生とともに、アートを活用した共同研究(アートベース・リサーチ:ABR)を実施しました。今回の企画・ファシリテーターを務めた4年生の南條・佐藤・徳永を中心に取り組み、その中の南條さんからの報告をご紹介します。

◾️報告:岸ゼミ4年生 南條 絢音さん
今年度の実践は「フォーラムシアター」にしました。これはブラジルの演劇家アウグスト・ボアールの手法を取り入れ、身近な出来事を批判的に見つめ直し、よりよい未来を探る演劇ワークショップです。テーマは「日常で感じた“もやもや”」。日本とアメリカの学生の混成グループに分かれ、自分の体験を語り合い、その中から一つのエピソードを選んで脚本を作りました。初めて脚本づくりに挑戦する学生も多かったので、生成AIを活用しながら進めました。
上演では観客も議論に参加し、テーマについて多角的な意見が出されました。特に異文化葛藤を題材にしたエピソードでは、観客が舞台に立ち「こうしたらどうだろう?」と代わりに演じる場面もありました。異なる文化的背景を持つ学生が交わるからこそ生まれる、新しい視点や問いの広がりを実感しました。
さらに、この実践の成果を韓国で開催された国際学会 International Conference for Media in Education(ICoME 2025) で「Performing Across Cultures: Collaborative Arts-Based Research
with Japanese and United States University Students」というタイトルで発表しました。これまでワークショップをつくる経験はありましたが、その成果を学術的に発表するのは初めてで大きな挑戦でした。緊張もありましたが、データに基づいて実践を深く考察できたことは大きな自信になりました。今後も実践と研究を両立させて挑戦していきたいです。

◾️報告:南カリフォルニア大学・Mariana Hernandezさん
最初はどんな雰囲気になるのか分からず少し不安もありましたが、実際に始まってみると、表面的な自己紹介を超えた、意味のある相互交流へと広がっていきました。話題は文化の違いにとどまらず、私たち自身の経験や視点、日常生活にまで及びました。
特に印象に残ったのは、国際日本学部の学生たちが本当に誠実な関心をもって、開かれた姿勢と深い敬意をもって対話に臨んでくれたことです。私は単なる「訪問者」としてではなく、独自の文化的背景を持ち、それについて学ぶに値する存在として受け止めてもらえたと感じました。そのやりとりは、踏み込みすぎて不快になることもなく、逆に距離がありすぎることもなく、ちょうどよいバランスで好奇心と配慮がありました。そのような交流はとても貴重で、稀有なものだと実感しました。
この経験を通して、私は自分自身にとって大切な価値観に気づきました。それは「意図性をもったコミュニケーション」を大事にすることです。相手が謙虚に関心を示し、思いやりをもって問いかけ、無理に決めつけずにつながる余白をつくってくれることが、どれほどありがたいことかを改めて感じました。東京での時間、そして特にこの交流の中で、文化的な所作や言葉にならないコミュニケーションの層、そして相互の敬意が言語や背景を超えて人と人を結びつける力を強く意識するようになりました。これからロサンゼルスに戻っても、また新しい場所を訪れるときも、この学びを大切にしていきたいと思います。
意味のある異文化交流に必要なのは、大げさな行為や深い知識ではなく、その場に「存在すること」、心をひらくこと、そして境界を尊重する姿勢です。文化を学ぶとは、単に知識や伝統を知ることではなく、他者との関わり方や思いやりを持って耳を傾けることそのものなのだと理解できました。相手が自分の良さを見せてくれるように、私自身も自分の中の良さを表現したい。観光客として周囲の人がどのように関わっているかを見ながら、私も自分を磨き、よりよい自分を示せるよう努力したいと思いました。

南カリフォルニア大学のMiya先生をはじめ、学生たちとのABR共同実践は今年で2年目。1年目はビジュアルアート、2年目は演劇手法を取り入れました。こうした実践を通して、学生たちは文化や社会に対する新たな問いを生み、未完の未来を共に想像し、解決に向けた可能性を探る貴重な機会となっています。