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国際日本学部

最先端の企業経営を学ぶために学生が企業を訪問しました(その2)

2023年01月10日
明治大学 国際日本学部

国際日本学部で開講している教養講座では秋学期において、学生が最先端の企業経営を実感できるよう、実際に企業の本社などを訪問し、テーマに即して担当の役員、社員から説明を受けるプログラムを実施しています。
本学期、3社予定しているうち、2社目の東日本旅客鉄道(本社:東京・代々木)については、さる12月16日、訪問しましたので、その模様を紹介します。
周知の通り同社は、1987年の日本国有鉄道の分割民営化により発足した企業です。既に上場を果たし純民間企業として独自の経営を行っていますが、新型コロナウイルス感染拡大による行動制限により、乗客数が減少し、二期連続の赤字決算となっています。
そうしたなかで訪問した本社では、常務執行役員で国際事業本部長である最明仁さんにご対応いただきました。
最明さんからは主に、(1)国鉄民営化の意義、鉄道以外の事業多角化、(2)諸外国への鉄道売り込みなどについてお話しいただくとともに、学生が主体となって質疑応答を行いました。
まず国鉄改革については、①安全の確保、②サービスの充実(お客様第一の考え方)、③仕組み改革(自社で鉄道の資産を保有、効率的に活用し利益を上げる)、④職員の意識改革の四点にあることを教えていただきました。民営化の結果、事故は国鉄時代の三分の一に減少、職員一人当たりの売上げが約2倍になるという生産性の向上、運賃引き上げの抑制(これまでは消費税増税時のみ)が図られたとのことでした。
同社では2018年にグループビジョン「変革2027」を策定しており、「ヒトを起点とした価値・サービスの創造」という理念のもとで、高齢化や人口減少、人々の価値観の変化・多様化、AI、IoTといった技術開発、生活環境の変化といった構造変化に対応しようとしています。そのための経営の多角化により鉄道と鉄道以外の売上げを50:50にすることを目標としているとことでした。その一環として、新宿、渋谷、池袋の駅周辺の再開発や田町・高輪ゲートウェイの一体開発を進めていく計画を進めています。
また国際事業展開については、アジア中心で取り組んでおり、既にインドで高速鉄道の建設を受注したほか、タイの都市鉄道パープルラインへの新型車輌供給、車輌・地上設備のメンテナンス、インドネシアへの中古車輌輸出、メンテナンス技術の移転などを実施しているとのことでした。そのためにグループ全体で国際事業展開を担う人材の育成を進めていることを紹介いただきました。
当日参加した学生は、訪問の翌週の授業で振り返りのグループディスカッションを行いました。その結果、東日本旅客鉄道の事業多角化が予想以上に進んでいること、国際的な事業展開は技術の移転や人材育成をセットとし現地での雇用創出も重視している点で、近年、同じく鉄道事業の輸出を加速させている中国のやり方とは異なること、駅のショッピングモールやエキナカ事業の充実により鉄道を利用する人々を増やす経営戦略は合理的であること、IT、AI、IoTの進歩を踏まえたsuicaやビューカード、JRポイントの連繋サービスの充実で利益を上げ得ること、主要駅周辺の再開発が「町の一部としての駅」を実現させることなどについて理解を深めたという意見が出されました。

国際日本学部兼任講師 井上洋