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国際日本学部

国際日本学実践科目の履修生が三菱電機株式会社本社を訪問しました

2024年12月17日
明治大学

2024年度秋学期の「国際日本学実践科目D」では、東京都心にある企業本社を訪問しレクチャーを受ける学外実習を4回、設けていますが、その2回目は、東京丸の内に本社を構える三菱電機株式会社でした。12月3日の午前、同社の経済安全保障統括室を訪ね、執行役員で同室室長の伊藤隆さんよりお話を伺い質疑を行いました。
伊藤さんは、半導体のマーケティングや営業を担当し、日本経団連事務局にも出向経験をお持ちの方です。その幅広い経験をもとに、現在、グローバル企業にとって喫緊の課題である経済安全保障の統括にあたられています。
三菱電機は1921年創業、三菱グループの中核企業として発展を遂げ、2023年度の連結売上高は5.3兆円(海外売上が全体の半分を占め、その内訳は北米26%、欧州27%、アジア24%、中国20%など)、国内外に約14万9千人の従業員を抱える総合電機メーカーです。
国内の開発・マザー工場を軸に、現地生産を組み合わせたサプライチェーンをグローバルに構築しており、中国経済圏と米国経済圏で同時に事業を展開、今後は米中両経済圏でのオープンイノベーション、内外企業との共同開発を加速させていくという経営戦略を打ち出していることから、両経済圏での活動が交じり合うことに伴う経済安全保障上の対応が必要になっているとのことです。
伊藤さんからはまず参加した履修生に対して、「企業の目的は何か」「目的達成を阻害する要因は何か」などの問いが示されました。これは、企業の事業活動に加わる者が押さえておかなければならない最も基本的な事柄です。伊藤さんからは、企業がGoing Concernとして市場に価値を提供し続け、継続を前提に資産や負債を管理、継続性に困難が想定されるリスクと対応策を開示する役割があることを教えていただきました。
三菱電機の定義するリスクマネジメントとは、企業や組織が直面する様々なリスクを発見して評価し、管理するプロセスです。具体的には、組織の目標達成に影響を与えるリスクの影響を最小化するためにリスクの特定とともに、リスクの評価を発生する頻度・確率とリスクによって受ける影響、対策の可能性を踏まえて、リスク制御の重点化を図り制御に必要なリソースの配分を行うということです。
特に今日における国際秩序情勢の変化に伴い、企業として経済安全保障のための管理が喫緊の課題となっており、サプライチェーン国内・域内回帰(同志国レジーム)とともに、価値観の異なる国への技術移転管理、輸出管理・流出管理の厳格化が求められていることを踏まえ、企業が取り組むべきリスクマネジメント領域を「データ」「インフォメーション」「インテリジェンス」と規定し、「テクノロジーと情報管理」(取引管理、サイバーセキュリティ、経済諜報活動、データ越境制限等制度制約)、及び「サプライチェーンマネジメント」(供給途絶リスク、強制労働、カーボンニュートラル、通商政策、産業補助金)の二つに集約しているという方針を教えていただきました。
伊藤さんは、いわゆるアウトリーチ活動にも熱心に取り組まれており、国際会議のパネル登壇やテレビ・ラジオの番組出演、様々な組織での講演などを通じて多様な人的ネットワークを構築することで多様な情報を収集、それらに基づいて高度な解析、必要な対策の検討を行っておられるとのことでした。
グローバルに事業を展開する企業では、こうした体制が社内になければ、独自の高度なリスクマネージメントは不可能であることを教えていただき、履修生は大いに刺激を受けました。
 (兼任講師:井上洋)